Mozart Symphonies No.35, No.36, No.38, No.39, No.40 & No.41 / Berliner Philharmoniker cond. by Herbert von Karajan【1971年リリース】

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筆者はクラシック音楽への造詣がほぼ皆無に近い人間だが、若い頃から長年聴き続けているレコードが何枚かある。


その中でも一番よく聴くのが今回取り上げたレコードだ(ただし、現在所有しているのはCDである)。


このレコードは凄い。


何が凄いのかと言うと、とにかくベタなのである。


楽曲がWolfgang Amadeus Mozart〔ヴォルフガング・アマデウスモーツァルト〕、演奏がBerliner Philharmoniker〔ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団〕、そして指揮がHerbert von Karajanヘルベルト・フォン・カラヤン〕である。


どうだろう、ベタ中のベタではないだろうか?


クラシック音楽への造詣がほぼ皆無な筆者ですら、三つとも全部知っている名前だ。


古典派音楽に限らずクラシック音楽全体でも、もっとも知名度の高い音楽家と言えばモーツァルトになるのではないだろうか?


オーケストラと言えばロイヤル・フィルやウィーン・フィルもしばしば耳にするが、ベルリン・フィルが最も耳に馴染みがあるような気がする。


そして指揮者と言えばカラヤンだ。


他に直ぐ思いつく指揮者の名前と言えばフルトヴェングラーバーンスタインの名が上るかもしれないが、筆者の場合、やはりカラヤンである。


このレコードは、カラヤンの指揮、ベルリン・フィルの演奏で、モーツァルトのキャリア後期の交響曲が収録されている。


同じオーストリア出身のモーツァルトカラヤンが時を超えて共演し、(「ザルツブルク出身の」と書くべきなのだろうか?ヨーロッパの歴史は複雑すぎて解らん)その指揮のもと、ベルリン・フィルのやりすぎかなと思うくらい壮大な演奏で聴衆を絶頂に導いてくれる。


交響曲を聴く時の楽しみは、ポピュラー音楽、特にロックではあまり聴くことのないオーボエクラリネット、フルート等の木管楽器を聴けることだ。


その優雅な音色には、しばし時を忘れてうっとりと聴き入ってしまう。


さらに交響曲を聴く時のもう一つの楽しみは、その複雑な曲構成だ。


ポピュラー音楽のヴァース‐コーラス形式を聴きなれた耳には、簡単に先が予測できない交響曲の複雑な曲構成は実に新鮮である。


とにかく、クラシック音楽への造詣がほぼ皆無な筆者だが、そんな筆者でもこのレコードは自信をもってお勧めできる1枚である。

 

JAPAN / ADOLESCENT SEX【1978年リリース】

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筆者がロックを聴き始めた時期はJAPAN〔ジャパン〕が解散した時期と重なる。


このバンドは、とにかく女子からの人気が凄かった。


クラスのロックを聴いていた女子のほぼ全てがJAPANのファンだった。


正確に言うと、ヴォーカルのDavid Sylvianデヴィッド・シルヴィアン〕のファンだった。


まるで少女漫画からそのまま抜け出てきたようなSylvianの容姿は思春期の女子のアイドルとして必要なものが全て揃っていた。


それ故、解散してもなお、女子からのJAPANの人気は衰えることがなく、レコード店でも彼らの在庫は充実していた。


筆者が初めて買ったロックのレコードもJAPANの3rdアルバム「QUIET LIFE」であり、何故それを買ったのかと言えば、知っているバンドであり、当時のレコード店で容易に入手することが出来たからだ。


その後、「QUIET LIFE」から遡って、かなり早いスピードで今回取り上げた1stアルバム「ADOLESCENT SEX」に辿り着いた。


このアルバムを聴いて、ちょっと不思議に感じたのは、とてもじゃないが日本の女子からアイドル視されるような解り易い音ではないということだった。


ブラック・ミュージックを白人流に解釈した捻じれたフェイク・ファンクの上に、顕かにBryan Ferry〔ブライアン・フェリー〕から影響を受けているであろうSylvianのねちっこいヴォーカルが乗るそのサウンドは、女子が熱狂するようなバブルガム・ポップとはかけ離れた音楽性だった。


筆者は男なのでJAPANの、或いは、Sylvianの容姿なんてどうでもよかったが、一筋縄ではいかない彼らの深い音楽性には強烈に魅かれた。


特に一聴して彼だと判るMick Karn〔ミック・カーン〕のうねりまくるフレットレス・ベースには完全にやられてしまい、JAPANのレコードを聴く時はヴォーカルよりもベースを耳で追うようになっていた。


JAPANというバンドの歴史において、評価の高い時期は前期より後期だろう。


JAPANの殆どの曲を書いているSylvian自身も、3rd「QUIET LIFE」以降が自分のミュージシャンとしてのキャリアであり、今回取り上げた1st「ADOLESCENT SEX」と2nd「OBSCURE ALTERNATIVES」を黒歴史のように扱っているふしがある。


確かに、バンドの後期にリリースされた4th「GENTLEMEN TAKE POLAROIDS」と、5th「TIN DRUM」は芸術性の高いアート・ロックであり、それはそれで素晴らしい作品である。


しかし、筆者は、初期の2枚、特に今回取り上げた「ADOLESCENT SEX」で鳴らされている未完成で粗削りなロック・サウンドにも、JAPANというバンドの魅力が間違いなく宿っていると言いたい。

 

IGGY & THE STOOGES / RAW POWER【1973年リリース】

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ロックン・ロールを聴いてみたいという人に筆者が必ずお勧めするアルバムが2枚ある。


1枚はこのブログで過去に取り上げたNEW YORK DOLLSニューヨーク・ドールズ〕の1stアルバム「NEW YORK DOLLS」。


そしてもう1枚は今回取り上げたIGGY & THE STOOGES〔イギー&ザ・ストゥージズ〕の「RAW POWER」だ。


「RAW POWER」はTHE STOOGESのアルバムとしてカウントするなら3rdアルバムにあたるが、IGGY & THE STOOGESと名乗ってからは最初のアルバムである。


MC5〔エム・シィー・ファイヴ〕の「KICK OUT THE JAMS」もそれに匹敵するアルバムなのだが、これはライブ・アルバムなので、ここではスタジオ・アルバムに限定する。


「NEW YORK DOLLS」と「RAW POWER」には共通点がある。


両方とも1973年にリリースされているが、それではない。


両方とも、1曲目が凄いのである。


もう少しつっこんで言うと、1曲目のイントロで鳴るギターが凄いのである。


このイントロのギターだけで、ロックン・ロールの全てが解ってしまう、そんな、とてつもなくカッコ良いギターなのである。


「NEW YORK DOLLS」の方は"Personality Crisis"、「RAW POWER」の方は"Search And Destroy"、この2曲でロックン・ロールの全てが解ってしまうと言い切るのは早計だろうか?


NEW YORK DOLLSもそうだが、THE STOOGESもけして技巧派ではない。


プロのバンドとしては、むしろ演奏が巧くない方のバンドだろう。


ただし、ここがロックン・ロールの面白いところだと思うのだが、巧いということが必ずしもカッコ良いかというと、けしてそうではない。


ロックン・ロールの世界では、技術力はもちろんあるに越したことはないのだが、それが絶対的なアドバンテージにはならない。


IGGY & THE STOOGESというバンド、そして「RAW POWER」というアルバムは、正にそれを体現している存在である。


「NEW YORK DOLLS」を取り上げたときにも同じことを書いたのだが、あえて、ここで再度書きたい。


「RAW POWER」を聴いて、そして、このイントロのギターを聴いてノックアウトされないのであれば、もうロックン・ロールを聴く必要はない。


「ロック」は好きになれるかもしれないが、「ロックン・ロール」に犯されることはない。

 

Kate Bush / THE KICK INSIDE【1978年リリース】

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一番好きなバンドは?と問われたら、速攻でTHE DOGS D'AMOUR〔ザ・ドッグス・ダムール〕と答える。


一番センスが良いと思うバンドは?と問われたら、これも速攻でSMALL FACES〔スモール・フェイセス〕と答える。


一番可愛いと思うバンドは?と問われたら迷うことなくTHE BANGLES〔ザ・バングルス〕と答える。


一番好きな男性ソロ・アーティストは?と問われたら、これはけっこう悩むのだが、結局はDavid Bowieデヴィッド・ボウイ〕と答えている自分が予想できる。


そして、一番好きな女性ソロ・アーティストは?と問われたら、脳で思考する間もなく脊髄で反射的にKate Bushケイト・ブッシュ〕と答える。


そもそも、筆者にとって、男女問わず、ソロ・アーティストの中で最も好きな人がKate Bushなのだ。


Kate Bushのアルバムは全てが傑作だが、あえて一枚選ぶなら1stアルバムの「THE KICK INSIDE」(邦題は「天使と小悪魔」)になる。


このアルバムに収録されている"Wuthering Heights"(邦題は"嵐が丘")を初めて聴いた時の衝撃は今でも忘れられない。


洋楽を聴き始めたのが1980年代前半。


リアルタイムの音楽では飽き足らず、もっと色々な音楽が聴きたいという思いで様々なアーティストの過去のカタログを貪欲に聴き漁っていた時に見つけた宝石。


それが筆者にとってのKate Bushであり、「THE KICK INSIDE」である。


筆者にとって、Kate Bushの音楽はそれまで全く聴いたことない新しい音楽だった。


オペラティックな歌唱、変幻自在な歌声、きっと英国人にしか書けないであろう詩的情緒豊かなメロデイー、高度な音楽的才能に裏付けられた気品溢れるアレンジ、その全てが筆者にとって新しかった。


その音楽はKate Bushの美しい容姿との相乗効果を引き起こし、聴く者を別世界へ連れていってくれる。


1990年代以降は極めて寡作(かさく)なアーティストとなった。


大好きなアーティストなので、願いが叶うなら、もう少し作品を聴かせて欲しい。

 

STONE TEMPLE PILOTS / PURPLE【1994年リリース】

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Amazon Music Unlimitedを契約してから確実にCDを買う機会が減った。


それどころか、CDで持っているアルバムもAmazon Music Unlimitedで聴くようになってきた。


聴きたいCDをCDラックから取り出す必要がなく、聴き終わってからも、そのCDをCDラックに戻す必要がなく、とにかく楽なのである。


今回取り上げたSTONE TEMPLE PILOTS〔ストーン・テンプル・パイロッツ〕の2ndアルバム「PURPLE」もCDで持っているにも関わらず、最近Amazon Music Unlimitedで聴きまくっているアルバムである。


所謂(いわゆる)グランジにカテゴライズされているバンドだが、このバンドにはグランジらしさは殆ど無い。


グランジの語源は「汚れた」という意味の「grungy」からきているらしいが、STONE TEMPLE PILOTS の音楽やイメージにはgrungyな印象はい。


むしろ、煌びやかでセクシーなロックン・ロール・バンドという印象が強い。


特にシンガーのScott Weiland〔スコット・ウェイランド〕はDavid Bowieデヴィッド・ボウイ〕にも通ずる美麗なルックスの持ち主であり、バンドのデビュー当時こそ少々汚い服を着てはいたが、徐々に洗練されてゆき、ソロ・アルバムを出した頃からは開き直ったかのように王道のロック・スター的な風貌に変わっていった。


きっと、持って生まれたグラマラスは隠そうとしても隠し切れなかったのだろう。


音楽の方もグランジの頂点であるNIRVANAニルヴァーナ〕よりも、80年代型ハード・ロックの雄であるGUNS N' ROSES〔ガンズ・アンド・ローゼズ〕に近い。


特に今回取り上げた「PURPLE」は彼らのハード・ロック・バンドとしての側面が最も色濃く顕れたアルバムであり、耳にこびりつくドラマティックな歌メロと職人的に上手いギター・リフ、そしてシンプルでありながら異様な重さを撒き散らすリズム隊は、やはりグランジというよりはハード・ロックである。


「PURPLE」を聴いていて思うのは、メンバー全員が技巧派揃いであり、どんな音楽でも演奏できる実に巧いバンドだということだ。


アルバムの最後に隠しトラックとして収録されている"My Second Album"はScott Weiland がFrank Sinatraフランク・シナトラ〕のようなポピュラー歌手風に歌い上げるラウンジ・ソングであり、これを最後に聴けるのもこのアルバムを聴く時の楽しみの一つである。


筆者はテクニック至上主義という訳ではないが、STONE TEMPLE PILOTSというバンドは、お金を払って聴く価値のあるプロフェッショナルなスキルを持ったバンドだと強く感じている。

 

LLOYD COLE & THE COMMOTIONS / RATTLESNAKES【1984年リリース】

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1980年代中盤に英国から登場したバンドで最も大きな支持を集めたバンドは間違いなくTHE SMITHSザ・スミス〕だろう。


筆者はTHE SMITHSの登場をリアルタイムで知った世代だが、THE SMITHSに対するファンの思いは信仰に近いものがあった。


そして、その次はと言うと、これはけっこう難しくなるのだが、筆者はTHE JESUS AND MARY CHAIN〔ザ・ジーザス・アンド・メリーチェイン〕だと思っている。


時代が同じなので当然ながらTHE JESUS AND MARY CHAINの登場もリアルタイムで知ったが、彼らの場合はファンを突き放すような冷やかさがあり、ファンもまたそれを楽しんでいるふしがあった。


上記二つのバンドほどインパクトのあるデビューではなかったが、同じ時代のバンドではLLOYD COLE & THE COMMOTIONS〔ロイド・コール&ザ・コモーションズ〕もかなり良いバンドだった。


今回は、LLOYD COLE & THE COMMOTIONSの1stアルバム「RATTLESNAKES」を取り上げてみる。


筆者は、THE SMITHSTHE JESUS AND MARY CHAIN共に、今でも好きなのだが、彼らのCDを聴くのは一年に1~2回くらいである。


それに対し、LLOYD COLE & THE COMMOTIONSのCDは今でも通勤電車の中で頻繁に聴く。


中でも再生回数が多いのが「RATTLESNAKES」だ。


LLOYD COLE & THE COMMOTIONSはスタジオ・アルバムを3枚リリースしているが、2ndアルバムと3rdアルバムはバンドとして成熟した音になっている。


それに対し、1stアルバムの「RATTLESNAKES」はLloyd Cole〔ロイド・コール〕のシンガー・ソングライターとしての資質が濃く出たアルバムだ。


とても綿密にアレンジされたバンド・サウンドなのだが、全ての曲が美しく、アコースティック・ギター一本の弾き語りであったとしても成立する名曲が揃っている。


中でも"Forest Fire"の美しさは絶品である。


静寂の中で揺蕩う(たゆたう)ようにしっとりと歌い上げられるこの曲は、"Forest Fire (森林火災)"という物騒なタイトルとは相反する癒しを聴く者に与えてくれる。


THE SMITHSTHE JESUS AND MARY CHAINがとても良いバンドであることに異論はないのだが、彼らの曲はどこか日常とかけ離れた世界観を持っており、気軽に聴けない重みがある。


それに対し、LLOYD COLE & THE COMMOTIONSの曲は日常にスッと溶け込んでくる軽さがある。


彼らがすぐそばで歌って演奏してくれているような親しみが感じられるのである。


活動期間中も、そして現在でも、LLOYD COLE & THE COMMOTIONSの日本での人気は低い。


それはたぶん、愛想のないLloyd Coleの仏頂面が原因ではないだろうか?


しかし、筆者は彼の仏頂面を見ると、不思議とほっこりした気分になれるのである。

 

CRIMSON GLORY / CRIMSON GLORY【1986年リリース】

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米国のフロリダ州と言えば、青い海、白い砂浜、ウォルト・ディズニー・ワールド・リゾート等、米国屈指のリゾート地という印象が強い。


今回取り上げた「CRIMSON GLORY」は、そんなリゾート地フロリダ出身のプログレッシヴ・メタル・バンドCRIMSON GLORYの1stアルバムである。


フロリダ出身と書いたが、このバンドの奏でる曲にはリゾート地フロリダをイメージさせるような能天気な雰囲気は全くない。


むしろ、英国の湿り気や北欧の哀愁に通ずるその音は、バンドのデータを知らずに聴いた場合、欧州出身のバンドだと言われても違和感が無い。


プログレッシヴ・メタルと言うと、QUEENSRYCHE〔クイーンズライク〕とDREAM THEATER〔ドリーム・シアター〕が二大巨頭だが、筆者はCRIMSON GLORYもそれに匹敵するほどのバンドだと思っているし、特に今回取り上げた1stアルバム「CRIMSON GLORY」と2ndアルバム「TRANSCENDENCE」の完成度は凄まじい。


ただし、残念ながらCRIMSON GLORYは二大巨頭のようには売れなかった。


彼らの場合、歌も演奏も完璧なのだが、イメージ戦略に失敗したように思えてならない。


何しろメンバー全員が仮面を着けて素顔を隠していたのだから胡散臭さ十分である。


その上、シンガーのステージネームがMidnight〔ミッドナイト〕というのも胡散臭さに拍車をかけている。


筆者は「ミッドナイト」と言われると、週刊少年チャンピオンに連載されていたタクシードライバーが主人公の手塚治虫の漫画を連想してしまう。


アルバム・ジャケットも微妙である。


彼らが着けていたマスクをモチーフとしたデザインなのだが、これが漫画「コブラ」のCrystal Bowie〔クリスタル・ボーイ〕ようなカッコ良さもあるものの、映画「犬神家の一族」の佐清(すけきよ)にも似ている気がして、何となく間抜けな感じがしなくもない。


とにかく、イメージ戦略にことごとく失敗している気がしてならない。


筆者は音楽第一主義なので、楽曲が良ければイメージにはそれほど拘りがないのだが、このイメージ戦略では真面目に聴く気になれない人もいるのではないかと思う。


ただし、この1stアルバム「CRIMSON GLORY」は、デビュー作とは思えないほどの完成度を誇るプログレッシヴ・メタルの金字塔なので、イメージが過去の物となった今こそ正当に音楽性を評価して欲しいと願う一枚である。