#0092) WISH YOU WERE HERE / PINK FLOYD 【1975年リリース】

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以前、#0016でSyd Barrettシド・バレット〕の1stアルバム「THE MADCAP LAUGHS」を取り上げた。


今回はそのSyd Barrett が脱退を余儀なくされたバンド、PINK FLOYDピンク・フロイド〕の9thアルバム「WISH YOU WERE HERE」を取り上げることにする。


このアルバム・タイトルを直訳すると、「あなたがここにいたらいいのにと思う」という意味になるはずだ。


邦題も「炎〜あなたがここにいてほしい」なので比較的素直な邦題の付け方である。


アルバム・タイトルの「WISH YOU WERE HERE」といい、収録曲の"Shine On You Crazy Diamond"といい、ドラッグ中毒になり、精神を病んで脱退したバンド創設時のリーダーであるSyd Barrettを意識しているように思えるのだが、Roger Waters〔ロジャー・ウォーターズ〕(vocals, bass)はこれを否定している。


本当かなと、勘ぐってしまう。


このアルバムを聴くと、どうしてもSyd Barrettを感じずにはいられないのである。


実は、筆者はPINK FLOYDを最初に聴いた時の印象は良くなかった。


どうしてもプログレッシヴ・ロックが聴きたくて、お小遣いを使い果たして買ったのがKING CRIMSONの1stアルバム「IN THE COURT OF THE CRIMSON KING」とPINK FLOYDの8thアルバム「THE DARK SIDE OF THE MOON」の二枚。


深遠なる幽玄の美を高度な演奏技術でスリリングに聴かせてくれるKING CRIMSONの「IN THE COURT OF THE CRIMSON KING」は直ぐに好きになれたのだが、PINK FLOYDの「THE DARK SIDE OF THE MOON」は筆者のイメージしていたプログレッシヴ・ロックとは大きく異なっていた。


ビョンビョンした変な音が入っていてサイケデリック・ロックっぽかったり、うるさい時計の音が入っていてエクスペリメンタル・ロックっぽかったり、ギター・ソロに泣きが入っていてブルース・ロックっぽかったり、とにかく掴み所がなかったのだが、何とか良い所をみつけようとして一年ほど聴き続けたら良いと感じるようになってきた。


今みたいにインターネットで簡単に試聴できる時代ではなかったので、せっかく買ったレコードを好きになるために必死だったのだ。


そして、もっとPINK FLOYDを聴いてみたくなって買った一枚が「WISH YOU WERE HERE」だ。


これは初めて聴いたときから好きになれた。


アルバムのオープニング曲、"Shine On You Crazy Diamond (Parts I–V)"で聴けるDavid Gilmourデヴィッド・ギルモア〕の泣きのギターでいきなり魂を持っていかれる。


そもそもこのバンドはプログレッシヴ・ロックなのだろうか?


筆者はこのバンドを聴く時に殆どプログレということを意識していない。


凄腕のミュージシャン揃いなのに、それほど演奏技術に拘っていなさそうなところがまた良かったりする。


KING CRIMSONEMERSON, LAKE & PALMER、YES、GENESIS等は、それぞれの音楽性は異なるものの、プログレとしてカテゴライズ出来ると思うのだが、どうにもPINK FLOYDだけはこの仲間には入れてもらえなさそうな気がして仕方がない。

 

#0091) BIRTH, SCHOOL, WORK, DEATH / THE GODFATHERS 【1988年リリース】

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筆者が初めて買ったCDは、THE MISSION〔ザ・ミッション〕の2ndアルバム「CHILDREN」と、今回取り上げたTHE GODFATHERS〔ザ・ゴッドファーザーズ〕の2ndアルバム「BIRTH, SCHOOL, WORK, DEATH」だった。


いずれも1988年にリリースされたアルバムだが、この頃の日本では、ミュージシャンが音源をリリースするためのメディア形式が、アナログ・レコードからコンパクト・ディスク(CD)に移行し始めた。


当時の筆者は、けっこう頑なにアナログ・レコードに拘っていた。


しかし、日本のレコード会社はこの頃から、「このアーティストのニュー・アルバムはCDのみのリリースで、アナログ・レコードのリリースはありません」というアナウンスをし始めた。


実は、上記の二枚が日本ではCDのみでリリースされるアルバムだったのである。


THE GODFATHERSのことは当時の音楽雑誌MUSIC LIFEで知って、「これは絶対に聴きたい」と目を付けていたアーティストのアルバムだったので、この不測の事態に当時の筆者はかなり焦ったわけだ。


その後、輸入レコード店でこのアルバムのアナログ・レコードを見つけることが出来なかったので、かなり無理をしてCDプレーヤーを購入し、日本盤のCDも購入した。


それにより、晴れてお目当てのアルバムを無事に聴くことが出来たのだが、これが期待を大きく上回る内容だったので救われた気分になったことを今でもよく憶えている。


もしこれが期待を大きく下回っていたなら正気を保っていられなかった可能性が高い。


THE GODFATHERSは英国出身のバンドで、その音楽性を簡単に言ってしまうとロックン・ロールということになるのだが、メンバー全員がスーツにネクタイというスマート且つフォーマルな服装でやっているわりには音の方は全然スマートではない。


切れ味の鋭さはあるのだが、ナイフでスパッと切り裂かれる感じではなく、鉈(なた)でズバッと叩き切られる感じだ。


「BIRTH, SCHOOL, WORK, DEATH(生まれて、学校に行って、働いて、死ぬ)」という身も蓋もないタイトルにも英国人らしいセンスが感じられた。


このアルバムがリリースされた1988年と言えば、筆者の大好きなHANOI ROCKSハノイ・ロックス〕が既に解散しており、ヘヴィ・メタル的ではない純粋なロックン・ロール・バンドの数が少なかった。


前年の1987年にはGUNS N' ROSES〔ガンズ・アンド・ローゼズ〕が「APPETITE FOR DESTRUCTION」(これはアナログ・レコードを買った)でデビューしていて、かなり気に入って聴いていたのだが、HANOI ROCKSのようなヘヴィ・メタル的ではない純粋なロックン・ロール・バンドはもう出てこないのかなと思っていたところに登場してくれたのがTHE GODFATHERSだった。


この当時、米国からはヘヴィ・メタルの影響が感じられるロックン・ロール・バンド(グラム・メタル)が数多く登場していて、筆者も喜んで聴いていたのだが、やはりそれだけでは飽きてしまう。


そんな時に欧州(英国)から登場したTHE GODFATHERSは新鮮だった。


この直後にTHE DOGS D'AMOUR〔ザ・ドッグス・ダムール〕が登場するのだが、THE DOGS D'AMOURに出会うまでの短い期間ではあったが、THE GODFATHERSは筆者の最もお気に入りのロックン・ロール・バンドになってくれたのである。

 

#0090) PROVIDING THE ATMOSPHERE / CLOUDBERRY JAM 【1996年リリース】

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1990年代に日本で人気のあったスウェディッシュ・ポップとは、その名の通りスウェーデン発のポップ・ミュージックなのだが、その代表的なアーティストで且つ最も人気あったのが#0080で取り上げたTHE CARDIGANS〔ザ・カーディガンズ〕である。


しかし、今回取り上げるCLOUDBERRY JAMクラウドベリー・ジャム〕もTHE CARDIGANSに匹敵するくらいの高い人気を得ていたアーティストだ。


THE CARDIGANSCLOUDBERRY JAMも女子をフロントに立てたクインテットなので何かと比較されることも多く、似たようなバンドだと思っている人も多いかもしれないが、この二つのバンドの音楽性がけっこう異なることはあまり知られていないような気がする。


いずれもガール・ポップと言ってしまえばそれまでだが、THE CARDIGANS は「60年代ポップからの影響が強いガール・ポップ」、CLOUDBERRY JAMは「軸足をロックに置きつつもジャズやソウル等ブラック・ミュージックからの影響も感じられるガール・ポップ」だと言える。


そんなCLOUDBERRY JAMの代表作と言えば、やはり2ndアルバムの「PROVIDING THE ATMOSPHERE」だろう。


日本では「雰囲気作り」という邦題でリリースされていたが、これはなかなか上手い邦題の付け方である。


はっきりとした数字は分からないが、日本ではこのアルバムが、かなり高いセールスを記録しているはずだ。


スウェディッシュ・ポップの特徴として、「普段、洋楽(主にロック)を中心にして音楽を聴いていないようなリスナー層からも高い支持を得ていた」ことがあげられる。


通常、そういう種類の音楽は筆者のような頭の固いロック・マニアからは敬遠されがちなのだが、このアルバムが好きだというロック・マニアが筆者の周りにもけっこう居た。


とにかく、ロック、ジャズ、ソウル等、様々な音楽を絶妙にブレンドしたこのアルバムの曲は昨日今日バンドを始めた者ではできないくらい高度で、全ての収録曲のクオリティが高く、一度嵌ると彼ら(彼女ら)の曲を聴かずにはいられなくなるのである。


そして、やはり、シンガーであるJennie Medin〔ジェニー・メディン〕の艶やかで魅惑的なシルクのような声が良い。


筆者も身近にこんな声で歌える女子がいたら、一緒にバンドをやって欲しいとお願いしていたと思う。

 

#0089) SATURATION / URGE OVERKILL 【1993年リリース】

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1990年代初頭に米国で興ったグランジ/オルタナティヴのムーヴメントから出てきたアーティストは、グラム・メタルやポップ・メタル等のロック・スター的な煌びやかさを否定する姿勢があったので、殆どのアーティストは小汚い恰好をしていてファッショナブルではなかった。


しかし、その小汚さが逆にファッショナブルだということになり、ファッション業界ではグランジ/オルタナテ系アーティストの服装を真似たグランジ・ファッションという訳の分からない物を作り出していたが、筆者のような筋金入りのロック・ジャンキーから見ると、そのアーティストの音楽性や精神性を追求することなく、上っ面だけをなぞったグランジ・ファッションという物が滑稽に見えて仕方がなかった。


ロックとは、先ず音楽が良いことが前提であり、見てくれはファッショナブルであろうがなかろうが、そのアーティストが着たいものを着ればそれでよいのである。


上記のとおり、小汚い恰好の連中が多かったグランジ/オルタナテ系アーティストの中にもファッショナブルな連中は居た。


例えば、シカゴ出身のURGE OVERKILL〔アージ・オーヴァーキル〕だ。


メンバー三人がマフィアっぽいスーツでバシッとスタイリッシュに決めており、ヴォーカルとギターのNash Kato〔ナッシュ・カトー〕とベースのEddie "King" Roeser〔エディ・キング・ローサー〕の二人が長髪ワンレングスの双子コーデ、ドラムスのBlackie Onassis〔ブラッキー・オナシス〕一人が短髪でバンドのヴィジュアルのアクセントとなるという、所謂ZZ TOP〔ジージー・トップ〕スタイルだ。


彼らはヴィジュアルだけでなく、やっている音楽もスタイリッシュだった。


代表作は今回取り上げた4thアルバム「SATURATION」だろう。


このアルバムは、メジャー・レーベルからリリースされた第一弾アルバムであり、URGE OVERKILLというバンドを世界のロック・ファンに広く認知させた一枚でもある。


暑苦しさのまるで無いクールなロックン・ロールであり、ライヴ・ハウスよりもホテルのラウンジで演奏する方が似合いそうな大人のロックン・ロールを聴かせてくれる。


しかし、このURGE(衝動) OVERKILL(過剰殺戮)というバンド名、それだけを見ると相当過激なデス・メタル・バンドに見えなくもない。

 

#0088) OLYMPIAN / GENE 【1995年リリース】

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1990年代中期に英国で興ったブリットポップ・ムーヴメントからは実に様々なアーティストが登場した。


筆者も当時の洋楽雑誌に煽られて、出てくるアーティストのCDを片っ端から買っていた。


ただ、正直なところ、「これは買って失敗したな」と思うCDも少なくなかった。


当時はインターネットで簡単に試聴できるような環境が無かったので、洋楽雑誌の情報を鵜呑みにして買っていたのだが、洋楽雑誌はレコード会社の太鼓持ちのような側面もあるので、次から次へと登場する新人アーティストに対し、実際の実力以上の評価を与えることもあった。


つまり、筆者はムーヴメントに便乗しようとするレコード会社の青田買いと、それをプッシュする洋楽雑誌の連携プレイにまんまと嵌っていたわけだが、稀に「これは生涯聴きつけるだろう」と思える珠玉の名盤にめぐり逢うこともあった。


今回取り上げたGENE〔ジーン〕の1stアルバム「OLYMPIAN」もそんな一枚だ。


THE SMITHSザ・スミス〕との比較で語られることも多く、口の悪い英国プレスからはカムデン・スミスと揶揄されることもあったバンドだが、実際に聴いてみると彼らの影響源がTHE SMITHSだけではないことが分かる。


GENE の曲にはTHE SMITHSほど尖ったところはなく、しなやかで、そして、温もりを感じさせてくれる彼らのメロディはTHE SMITHSというよりも後期のTHE JAMザ・ジャム〕からの影響が濃い。


こう書くと、「結局はTHE SMITHSTHE JAMのパクリか」と言われそうだが、GENEに限らず、この時期の英国のバンドでTHE SMITHSTHE JAMからの影響を受けていないバンドを探す方がむしろ難しいのではないだろうか。


ここまでGENEの音楽的影響源について根拠が有るのか無いのか分からないことを書いてきたが、筆者がこのバンド、そして、このアルバムを好きな理由はそこではない。


では、どこが好きなのかと言うと、彼らが放つロマンティシズムなのである。


これは、以前、取り上げたMARION〔マリオン〕やMANSUN〔マンサン〕にも通ずることなのだが、このロマンティシズムというものは練習して出せるようになるものではない。


ロマンティシズムとは、そのアーティストが持って生まれた資質なのである。