#0233) THE COMPLETE RECORDINGS / Blind Lemon Jefferson 【2008年リリース】

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これまでにこのブログで取り上げてきたアーティストの中で最も生年月日が古い人はブルース・シンガーのSonny Boy Williamson II〔サニー・ボーイ・ウィリアムソンII〕であり、その生年は諸説あるが1899年生れというのが定説となっている。


Wolfgang Amadeus Mozart〔ヴォルフガング・アマデウスモーツァルト〕(1756年生)とRobert Alexander Schumannロベルト・アレクサンダー・シューマン〕(1810年生)の作品も取り上げているが、こちらは作品の作曲者であり、本人の演奏が収録されているわけではないので省くこととする。


今回取り上げたブルース・シンガーのBlind Lemon Jefferson〔ブラインド・レモン・ジェファーソン〕はSonny Boy Williamson IIよりも更に古く、この人の生年も諸説あるのだが1893年生れというのが有力であり、これが定説となっている。


Sonny Boy Williamson IIもBlind Lemon Jeffersonも、定説を信じるなら19世紀生れということになる。


Blind Lemon Jeffersonの生年である西暦1893年を日本の元号に変換すると明治26年だ。


日露戦争の開戦が1904年(明治37年)、夏目漱石が処女作の『吾輩は猫である』を発表したのが1905年(明治38年)、筆者の祖父の生年が1911年(明治44年)なので、初期のブルース・マンというのは歴史的過去の人物であるということに改めて気付かされる。


Blind Lemon Jeffersonは、その芸名からも分かるとおり盲目のブルース・シンガー/ギタリストであり、Blind Blakeブラインド・ブレイク〕、Blind Willie McTell〔ブラインド・ウィリー・マクテル〕と並び、盲目の3大ブルース・マンと言われている。


今回取り上げた「THE COMPLETE RECORDINGS」はBlind Lemon Jefferson が1926~1929年の間に遺したテイクを文字通りコンプリートしたアルバムである。


よくぞ遺してくれたなと思う。


テキサス出身という出自と関係あるのかどうか分からないのだが、Blind Lemon Jeffersonの歌とギターはブルース(憂歌)でありながら、どこかカラッとした陽性の魅力がある。


しかし、テキサスは後にTHE 13TH FLOOR ELEVATORS〔ザ・13thフロア・エレベーターズ〕やBUTTHOLE SURFERS〔バットホール・サーファーズ〕という狂気のロック・バンドを輩出する地であり、Blind Lemon Jeffersonの歌とギターからも同じ匂いを感じるのは気のせいだろうか?


何れにしても、よくぞ遺してくれたなと思う。

 

#0232) DRACONIAN TIMES / PARADISE LOST 【1995年リリース】

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PARADISE LOST〔パラダイス・ロスト〕は、MY DYING BRIDE〔マイ・ダイイング・ブライド〕、ANATHEMA〔アナセマ〕と共にザ・ピースヴィル・スリーと称される英国のゴシック・メタル・バンドである。


いずれのバンドもピースヴィル・レコードに所属していたことがザ・ピースヴィル・スリーという呼び方の所以である。


ゴシック・メタルの始まりは諸説あるが、筆者の中ではPARADISE LOSTが1991年にリリースしたそのものズバリのタイトルを持つ2ndアルバム「GOTHIC」がその起源だと認識している。


ゴシックとは、Wikipediaによると「12世紀の北西ヨーロッパに出現し、15世紀まで続いた建築様式を示す言葉」と記載されているが、我々日本人の認識としては「中世ヨーロッパ風の様式を指す言葉」というイメージで捉えている人が多いのではないだろうか。


筆者の場合、ゴシックという言葉から先ず思い浮かべるものは1897年に発表されたBram Stoker〔ブラム・ストーカー〕の怪奇小説『ドラキュラ』や、1970年代後半から1980年代前半のポストパンク期に登場したSIOUXSIE & THE BANSHEES 〔スージー&ザ・バンシーズ〕、THE CUREザ・キュアー〕、JOY DIVISIONジョイ・ディヴィジョン〕、BAUHAUS〔バウハウス〕、THE SISTERS OF MERCY〔ザ・シスターズ・オブ・マーシー〕といったゴシック・ロック・バンドだったりする。


今回取り上げたのはゴシック・ロックではなく、ゴシック・メタルであり、そのジャンルの金字塔とも言えるPARADISE LOSTの5thアルバム「DRACONIAN TIMES」だ。


ゴシック・ロックとゴシック・メタル、同じゴシックという言葉を冠する音楽だが、その感触は大きく異なる。


上記したゴシック・ロック・バンドも、たぶんPARADISE LOSTの音楽的影響源だと思うのだが、やはりベースにメタルがあるため、かなりきっちりとした様式美が感じられるのである。


特に今回取り上げた「DRACONIAN TIMES」というアルバムにはそれが顕著であり、メタルの様式美の上に「死」、「退廃」、「宿命」、「暗黒」といったイメージが重なり合い、美しくも荘厳なる世界観が構築されている。


実のところ、ポストパンク期に登場したゴシック・ロックよりも、1990年代に登場したゴシック・メタルの方が我々日本人のイメージするゴシックのイメージに近い。


「ゴシックとは何か?」、その分かり易い答えが「DRACONIAN TIMES」なのである。

 

#0231) LED ZEPPELIN / LED ZEPPELIN 【1969年リリース】

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#210.5で自分の生まれ年(1969年)にリリースされたロック・アルバムのリストを作った。


ロックの黄金時代なので凄いアルバムが沢山リリースされており、聴いたことのあるアルバムもあれば、聴いたことのないアルバムもある。


この年にリリースされたアルバムを改めて何枚か聴いてみたのだが、その中で一際異彩を放つアルバムがあった。


それが今回取り上げたLED ZEPPELINレッド・ツェッペリン〕の1stアルバム「LED ZEPPELIN」だ。


どこが「異彩を放つ」のかと言うと、同じ年にリリースされた他のアルバムに比べて圧倒的に新しいのである。


もちろん、1969年にリリースされたアルバムなのでこの記事を書いている2019年から見ると、遥か昔のアルバムだ。


しかし、このアルバムから感じられる新しさ、1969年という時代には似つかわしくない新しさは一体どこから来るのだろう。


ブルースをベースにしたロックであり、ある意味ロックのセオリーどおりなのだが、LED ZEPPELIN以前のブルース・ロック・バンドとは明らかに違ったテイストを持っている。


まだヘヴィ・メタルなんて無いこの時代の人達はRobert Plantロバート・プラント〕の金属的な声にどれくらいの衝撃をうけたのだろう?


あるヴォイス・トレーナーが、「ヴォーカルは管楽器である」と言っているのを聴いたことがあるが、Robert Plantの歌唱を聴いていると確かにそうだなと納得できる。


John Bonhamジョン・ボーナム〕が叩き鳴らす空気の振動が伝わってくるようなドラムも凄い。


もちろん、Jimmy Pageジミー・ペイジ〕のギター、John Paul Jones〔ジョン・ポール・ジョーンズ〕のベースとキーボードも凄いのだが、LED ZEPPELINの音を新しいと感させる最大の要因はRobert PlantのヴォーカルとJohn Bonhamのドラムのような気がする。


LED ZEPPELINDEEP PURPLE〔ディープ・パープル〕、BLACK SABBATHブラック・サバス〕を3大ハード・ロック・バンドと言うそうだが、もし、LED ZEPPELINがいなかったらDEEP PURPLEBLACK SABBATHの音はもう少し違ったものになっていた可能性すらある。


LED ZEPPELINとは、「好き」、「嫌い」という単純な二元論的評価を超越したロックのイノヴェーターなのである。

 

#0230) THE SEA / Corinne Bailey Rae 【2010年リリース】

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当たり前と言えばそれまでだが、女性アーティストの作品を聴くと、男性である自分の感性とは全くかけ離れた世界を見せて(聴かせて)もらえるから面白い。


洋楽雑誌を毎月購入しなくなって久しいのだが、気になる新人女性アーティストに関する記事が載っている場合、その号にかぎり洋楽雑誌を買ってみたりすることもある。


自分のCDラックを眺めて2000年以降に登場した女性アーティストのCDを探してみると、Amy Winehouseエイミー・ワインハウス〕、M.I.A.〔エム・アイ・エイ〕、Adele〔アデル〕、Duffy〔ダフィー〕、Lana Del Rey〔ラナ・デル・レイ〕等がある。


これらのCDは殆どの場合、Amazonで購入するのだが、その購入履歴を基にAmazonが筆者に「お薦め」してくるCDの中に時々何となく気になるアーティストが含まれていることがある。


今回取り上げたCorinne Bailey Raeコリーヌ・ベイリー・レイ〕もその中の一人であり、「お薦め」してきたのは1stアルバム「CORINNE BAILEY RAE」だった。


アルバム・カヴァーに写る彼女の容姿がとても美しかったので、気になって某動画サイトで聴いてみたところ、一発で気に入ってしまい、AmazonでCDを即買いとなったわけである。


そして、立て続けに購入したのが今回取り上げた2ndアルバム「THE SEA」なのである。


Corinne Bailey RaeはジャンルとしてはR&Bやネオ・ソウルにカテゴライズされているのだが、所謂最近のヒップ・ホップに接近したそれとはだいぶ趣が異なる。


メロディはかなりしっかりと耳に残り、アレンジは彼女の歌を引き立たせるための控えめなものとなっているのだが、時々絶妙のセンスを感じさせる煌めきがある。


今回取り上げた2ndアルバム「THE SEA」は、R&Bやネオ・ソウルからはかなりかけ離れており、むしろ単純にポップ・ミュージックと言ってしまった方が誤解を生まないような気がする。


1stのリリースが2006年、2ndのリリースが2010年、そして、このブログを書いている時点(2019年8月)での最新作である3rdアルバム「THE HEART SPEAKS IN WHISPERS」のリリースが2016という具合に、Corinne Bailey Raeは非常に寡作なアーティストなのだが、そのクオリティはいずれも極めて高い。


寡作ながら必ずクオリティの高い作品を届けてくれるというところは、音楽性はまるで違うのだがSADEシャーデー〕に近い資質をCorinne Bailey Raeから感じられるのである。

 

#0229) THE SOFT BULLETIN / THE FLAMING LIPS 【1999年リリース】

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今回取り上げたTHE FLAMING LIPS〔ザ・フレーミング・リップス〕の9thアルバム「THE SOFT BULLETIN」を聴いてみたいと思った切っ掛けは、SUEDEのBrett Anderson〔ブレット・アンダーソン〕が日本の洋楽雑誌の「年間お気に入りアルバムBest10」的な企画で「THE SOFT BULLETIN」を入れていたからだったような気がする。


THE FLAMING LIPSのことは、7thアルバム「CLOUDS TASTE METALLIC」の日本盤がリリースされており、日本の洋楽雑誌のディスクレビューで取り上げられていたので、その頃から知ってはいたが、当時の筆者にとっては特に興味を惹かれるバンドではなかった。


その後、8thアルバム「ZAIREEKA」がリリースされたのだが(これは日本盤がリリースされなかった)、このアルバムは4枚のディスクを同時に再生することで、一つのアルバムとして完成するという代物であり、「こんなもん、プレイヤー4台持っとる奴しか聴けへんやないか、なんちゅう乱暴なことすんねん」と感じてしまい、THE FLAMING LIPSに対して全く良い印象を持てなくなっていた。


ただし、上記のとおり、SUEDEのBrett Andersonが「年間お気に入りアルバムBest10」で「THE SOFT BULLETIN」を推していたことは大きかった。


当時の筆者はSUEDEが...と言うよりはBrett Andersonが放つ「英国労働者階級の美学」のような世界に嵌っており、この人が推しているアーティストはどうしても聴かずにはいられなかったのである。


「THE SOFT BULLETIN」は日本盤もリリースされており、近所のCDショップJEUGIA(ジュージヤと読み、京都では老舗の音楽関連事業者)で簡単に購入できた。


当時(今も)、もう何十年も万華鏡なんて覗いていなかったのだが、「THE SOFT BULLETIN」を聴いた時、次から次へと再生される曲たちのドリーミーな感触が、まるで万華鏡と覗いているような錯覚に見舞われた。


そして、どうにも落ち着かないバタバタしたドラムとWayne Coyne〔ウェイン・コイン〕のヴォーカルのヘタレっぷりが、そのドリーミーな感触に拍車をかけているのである。


お世辞にも上手いとは言えない演奏...はっきり言ってしまうとプロのバンドとしては下手な部類に入る演奏は、音楽に真面目さを求める人には向かないのかもしれない。


筆者は、演奏は上手いに越したことはないと思っているのだが、上手いだけでは成立しないのがロックだと思っているので、こういうのもけっこう楽しんで聴けてしまうのである。