Rock'n'Roll Prisoner's Melancholy

好きな音楽についての四方山話

#0026) WARREN ZEVON / Warren Zevon 【1976年リリース】

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昨年末(2017年末)にAmazon Music Unlimitedを契約した。


Amazonプライム会員の場合、月額780円(会員以外は月額980円)で約4000万曲が聴き放題となる音楽配信サービスである。


Amazonプライム特典の一つであるPrime Musicが約100万曲だったので、Amazon Music UnlimitedではPrime Musicの約40倍の曲を聴き放題できる(ただし、J-POPの配信曲数は少ないらしいので、J-POPのリスナーは注意が必要だ)。


率直な感想を言うと、非常に便利であると感じている。


Amazon Music Unlimitedを契約してから、確実にCDを買う枚数が減った。


この先、CDを買わなくなるのかと思うと、一抹の寂しさを禁じ得ない。


筆者がAmazon Music Unlimitedで最もよく聴くのは、何らかの理由で手放してしまった過去に持っていたアルバムだ。


この手のアルバムの場合、もう一度聴いてみたい気がするので買って聴いてみたところ、結局それほど好きになれず、買ったことを後悔することもしばしばある。


今回取り上げたWarren Zevon〔ウォーレン・ジヴォン〕の2ndアルバム「WARREN ZEVON」は、「何らかの理由で手放してしまった過去に持っていたアルバム」なのだが、Amazon Music Unlimitedで再び聴くことが出来た。


何故手放してしまったのか解らないくらい素晴らしいアルバムだ。


所謂ウェストコースト・サウンド(死後か?)らしい大らかさもあるが、どちらかというと男らしい実直な歌と曲がこの人の最大の魅力だろう。


誰が付けたのか、「ハード・ボイルド」という二つ名も、なるほど納得がいく。


聴く者にけして媚を売らないちょっと不愛想な彼の歌声は、見た目が優男(やさおとこ)なのでそのギャップが面白い。


不愛想な歌声なのに、それでいてメロディは聴く者を包み込むような優しさがあり、これもまたギャップである。


もう少し懐具合が良くなったら、是非ともこのアルバムを買い直してみようと思う。

 

#0025) THIS IS ROCK'N'ROLL / THE QUIREBOYS 【2001年リリース】

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だいぶ前のことになるが、ぶらりと入ったタワーレコードで偶然見つけたCDが今回取り上げるTHE QUIREBOYS〔ザ・クワイアボーイズ〕の3rdアルバム「THIS IS ROCK'N'ROLL」だ。


「えっ、もしかして再結成?」


衝動的にレジに持っていき購入。


後から調べて判ったのだが、再結成後の最初のアルバムだった。


正直に言うと、THE QUIREBOYSについては、それほど好きという訳ではない。


1990年リリースの1stアルバム「A BIT OF WHAT YOU FANCY」をリアルタイムで買っていたが、筆者にとって、このバンドは個性の感じられないバンドだった。


彼らの影響源の殆どがFACES〔フェイセズ〕で、ほんの少しだけ米国南部音楽に傾倒していた頃のTHE ROLLING STONESザ・ローリング・ストーンズ〕が入っていると言い切っても過言ではないだろう。


同時期に英国で活動していたロックン・ロール・バンドとしては、同じようにSTONES とFACESの影響を受けつつも、THE ONLY ONES〔ジ・オンリー・ワンズ〕から影響を受けたポップなメロディや、Charles Bukowski〔チャールズ・ブコウスキー〕から影響を受けた文学的な歌詞が個性的だったTHE DOGS D'AMOUR〔ザ・ドッグス・ダムール〕の方が圧倒的に好きだった。


そう言えば、デンマークのD-A-D〔ディー・エー・ディー〕も同時期のバンドだが、西部劇風のテイストを導入したパンク(カウパンク?)とAC/DC〔エーシー・ディーシー〕のハイブリッドみたいでTHE QUIREBOYSよりも断然好きだった。


かようにTHE QUIREBOYSとは、筆者にとってお気に入りの上位に位置するバンドではなかったのである。


それが何故、彼らの復活作を衝動的に買ってしまったのかとうと、憎からず思っていたが行方不明になっていた古い友人に偶然会ったかのような、そんなノスタルジアが刺激されたからである。


そして、それほど期待せずに聴いた彼らの復活作から流れ出る音楽がとても良かった。


相変わらず、「殆どFACES、少しだけSTONES」という音楽性は全く変わっていない。


しかし、それもやり続けることで、見事な芸となっている。


彼らの場合、歌も演奏も曲も、デビュー当時より、むしろ復活してからの方が良い。


「継続は力なり」とはこういうことなのかもしれないと思った。

 

#0024) LUNATIC HARNESS / μ-ZIQ 【1997年リリース】

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μ-ZIQ〔ミュージック〕とは、英国のテクノ・アーティストであるMike Paradinas〔マイク・パラディナス〕が用いるアーティスト名の一つである。


他にもJAKE SLAZENGERやKID SPATULA等(いずれも読み方が不明)、色々なアーティスト名を用いているが、テクノ/エレクトロニック系のアーティストとうのは、リリースする作品の音楽性に合わせてアーティスト名を変える人が多い。


こういうことはロックの分野には無くはないがあまり馴染みがないので、テクノ/エレクトロニックの門外漢である筆者には新鮮に感じられる。


ただし、門外漢なので、そこにどれ程の音楽性の違いがあるのか解っていない。


その辺は、ロック門外漢からすればハードコア・パンクとスラッシュ・メタルの違いなんて解らない方が多いと思うのでご容赦頂きたい。


今回取り上げたμ-ZIQの「LUNATIC HARNESS」は1997年の作品であるが、筆者は1990年代中旬頃からロックへの興味を失いつつあり、テクノやドラムン・ベース、トリップ・ホップ等、ロック以外のアーティストを好んで聴くようになっていた。


中でも、この「LUNATIC HARNESS」は、APHEX TWINエイフェックス・ツイン〕の「RICHARD D. JAMES ALBUM」、PLUG〔プラグ〕の「DRUM 'N' BASS FOR PAPA」、SQUAREPUSHERスクエアプッシャー〕の「HARD NORMAL DADDY」と共によく聴いたアルバムである。


いずれも、ただでさえ高速で破壊的なブレイクビーツが特徴のドラムン・ベースを更に凶悪に発展させたドリルン・ベースにカテゴライズされる音楽だが、APHEX TWIN、PLUG、SQUAREPUSHERの曲が破壊的な要素が強いのに対し、μ-ZIQの曲は破壊的な要素も少なからずあるものの、どこかしなやかでメランコリックな印象を聴く者に与えてくれる。


出会い頭にいきなり張り手を喰らわせてくるような無作法なところはなく、アヴァンギャルドでありながら気品を感じさせてくれるのである。


筆者は、この時期(1990年代中旬~後半)以降、積極的にエレクトロニック系のアーティストを追わなくなったが、「LUNATIC HARNESS」は、きっと死ぬまで聴き続ける一枚になると感じている。

 

#0023) THE BEST OF MUDDY WATERS / Muddy Waters 【1958年リリース】

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このブログで取り上げるアルバムは、基本的にオリジナル・アルバム(スタジオ・アルバム)にしているのだが、Muddy Watersマディ・ウォーターズ〕については「THE BEST OF MUDDY WATERS」が相応しいと思う。


「THE BEST OF ~」はグレイテスト・ヒッツ・アルバムなのだが、Muddyが最初にリリースしたアルバムなので、デビュー・アルバムという捉え方もできる。


Muddy は1940年代からシングルを継続してリリースしているので、このアルバムがリリースされた1958年には、既にベテランと呼ばれる域に達している。


筆者はロック・リスナーなのでブルースのことは全く詳しくないし、聴いてきたブルースのレコードも少ない。


そんな筆者が、「最もブルースらしいレコードは?」と問われたときに迷わず上げるのが、この「THE BEST OF ~」だ。


筆者の場合、最初に聴いたブルースのレコードはRobert Johnson〔ロバート・ジョンソン〕の「KING OF THE DELTA BLUES SINGERS, VOL. II」だったのだが、このアルバムを聴いて(と言うかRobert Johnsonを聴いてと言うべきか?)、他のブルース・マンも聴いてみようという気には、なかなかならないような気がする。


あまりにもミステリアスなRobert Johnsonの歌とギターは聴く者に呪術的な印象を与え、ちょっと取っ付き難い。


それに比べ、Muddy Watersは実に解り易い。


ブルースとはこういう物だということを、記号のような解り易さで教えてくれる。


特に「THE BEST OF ~」はグレイテスト・ヒッツ・アルバムなので、Muddyの初期の代表曲をたっぷりと味わえる。


そして、曰く言い難いのだが、悪(ワル)の匂いがプンプンするのである。


THE ROLLING STONESザ・ローリング・ストーンズ〕やTHE PRETTY THINGS〔ザ・プリティ・シングス〕等、当時の英国の若きバンド達も、きっとこの匂いにヤラれたのだろう。


このアルバムを聴いていると、なるほど、ロックとは、ロックン・ロールとは、ブルースの息子なのだなということが実によく解かるのである。

 

#0022) ELECTRIC WARRIOR / T. REX 【1971年リリース】

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今回はT. REX〔T・レックス〕の「ELECTRIC WARRIOR」を取り上げてみようと思う。


T. REXとしては2ndアルバム、前身となるTYRANNOSAURUS REX〔ティラノザウルス・レックス〕時代からカウントすると6thアルバムとなる。


T. REXはバンドなので、一応、


Marc Bolanマーク・ボラン〕(vocals, guitars)
・Mickey Finn〔ミッキー・フィン〕(percussion)
・Steve Currie〔スティーヴ・カーリー〕(bass)
・Bill Legend〔ビル・レジェンド〕(drums)


というメンバー構成になってはいるが、実際にはMarc Bolanのソロに限りなく近い。


現在で言うと、Al Jourgensen〔アル・ジュールゲンセン〕のMINISTRY〔ミニストリー〕や、Trent Reznor〔トレント・レズナー〕のNINE INCH NAILSナイン・インチ・ネイルズ〕等、「バンドの体裁をとってはいるが、実際はソロ・プロジェクト」というアーティストの元祖かもしれない。


筆者は1980年代前半からロックを聴き始めたのだが、最初の頃はリアルタイムか、その少し前にリリースされたアルバムを聴いていた。


そのうち、当時読んでいた雑誌「音楽専科」に掲載されていたグラム・ロック特集でT. REXやDavid Bowieデヴィッド・ボウイ〕の過去のカタログに興味を持ち、レコード店に頼んで取り寄せてもらって買ったのが、T. REXの「ELECTRIC WARRIOR」とDavid Bowieの「THE RISE AND FALL OF ZIGGY STARDUST AND THE SPIDERS FROM MARS」だった。


グリッター感を全開にしたグラム・ロック・スターとしてのT. REXを聴きたいのであれば次作の「THE SLIDER」だと思うのだが、Marc Bolanの書く美しい曲を堪能したいのでれば「ELECTRIC WARRIOR」だろう。


このアルバムは、とにかく美しい。


グリッター感を全開にしたグラム・ロック・ナンバーは、"Jeepster"と"Get It On"くらいではないだろうか?


エレクトリック・ギターが鳴ってはいるが、全体的にはフォーク・ロック的な儚げな曲が多い。


このアルバムに収録された曲の美しさは、所謂美メロというものとはちょっと違う。


なにかこう、優しい手でハートをきゅっと掴まれるような感覚だ。


グラム・ロックの衰退とともにT. REXの人気も下降していくのだが、実は人気が下降してから書かれた曲も美しい。


良い曲を書けば必ず売れるという単純な図式が成り立たない。


これがロックというショー・ビジネスの難しさなのだろう。