Rock'n'Roll Prisoner's Melancholy

好きな音楽についての四方山話

#0125) COSMO'S FACTORY / CREEDENCE CLEARWATER REVIVAL 【1970年リリース】

f:id:DesertOrchid:20181125081719j:plain

 

今回取り上げるCREEDENCE CLEARWATER REVIVAL〔クリーデンス・クリアウォーター・リバイバル〕、通称CCRの5thアルバム「COSMO'S FACTORY」を筆者が聴きたいと思った理由は明白だ。


1980年代に筆者が最も好きだったHANOI ROCKSハノイ・ロックス〕がこのアルバムに収録されている"Up Around The Bend"をカヴァーしていたので、その原曲を聴きたかったのである。


ただし、"Up Around The Bend"のみを聴きたかったのではなく、HANOI ROCKSが曲をカヴァーしたバンドということで、CCRというバンドその物にも興味があった。


実際にCCRの"Up Around The Bend"を聴いてみて感じたのは、HANOI ROCKSが比較的忠実に原曲を再現していということだった。


故に、取り立てて大きな感動は無く、JAPAN〔ジャパン〕がカヴァーした"All Tomorrow's Parties"の原曲が聴きたくてTHE VELVET UNDERGROUND〔ザ・ヴェルヴェット・アンダーグラウンド〕を聴いた時に、まるで違う曲を聴いているかのような驚きはなかった。


ただし、驚きは無かったのだが、このアルバム「COSMO'S FACTORY」は、その後けっこう永きに渡る愛聴盤となった。


とにかく、このバンドは曲がキャッチーで、活動期間中に全米第2位を獲得したシングルが5曲もある(逆に全米第1位は無い)。


それら全米第2位になった5曲の内の2曲は、このアルバム収録の"Travelin' Band"と"Lookin' Out My Back Door"だ。


米国南部を連想させる土の匂いのするロックン・ロールがCCRの持ち味なのだが、それを南部からは距離的に遠いカリフォルニア州サンフランシスコ出身のこのバンドが演奏しているというのが面白い。


このバンドのソングライターであるJohn Fogerty〔ジョン・フォガティ〕は非常にクレヴァーな人物なので、こういう音が米国人には受けるということを分かった上で曲作りをしているのだろう。


また、John Fogertyはクレヴァーであると同時に多作なソングライターでもあり、この「COSMO'S FACTORY」をリリースした前年の1969年には、「BAYOU COUNTRY」、「GREEN RIVER」、「WILLY AND THE POOR BOYS」という3枚ものスタジオ・アルバムをリリースしている。


この時代は1年に2枚のスタジオ・アルバムをリリースすることは普通にあったが、3枚もスタジオ・アルバムをリリースというのは極めて稀なのではないだろうか?


解散していないくせに、アルバムのインターヴァルが10年以上もあるような昨今のアーティストはCCRを見習ってほしいものである。

 

#0124) 1992 – THE LOVE ALBUM / CARTER THE UNSTOPPABLE SEX MACHINE 【1992年リリース】

f:id:DesertOrchid:20181124082004j:plain

 

今回取り上げるのは、CARTER THE UNSTOPPABLE SEX MACHINE〔カーター・ジ・アンストッパブル・セックス・マシーン〕(長いので以下CARTER USMとする)の3rdアルバム「1992 – THE LOVE ALBUM」だが、彼らは前年の1991年に「30 SOMETHING」というタイトルの2ndアルバムをリリースしている。


これは1991当時、メンバーのJim Bob〔ジム・ボブ〕(1960年生れ)が31歳、Fruitbat〔フルートバット〕(1958年生れ)が33歳なので、そこから付けられたタイトルなのだが、当時20歳を少し超えたばかりの筆者から見ると、30代というのはけっこうなオッサンに思えたものである。


Paul Wellerポール・ウェラー〕が1958年生れなので、CARTER USMの二人はパンクの洗礼を受けたパンクど真ん中世代だ。


当時の筆者は、「30歳になるのは嫌だな」という思いがあって歳を取ることに抵抗があったのだが、実際に30歳になってみると、特に何がどう変わるということもなく、拍子抜けした感じだった。


さて、CARTER USMの「1992 – THE LOVE ALBUM」である。


CARTER USMは当時既に30代になっていたオッサン二人のロック・デュオだ。


彼らの初期のアルバムはどれもカッコ良いのだが、今でも特に好んでよく聴くのが「1992 – THE LOVE ALBUM」だ。


彼らのシングルの中で最も全英チャートの上位に入った"The Only Living Boy In New Cross"という名曲が収録されていて、アルバムそのものも全英チャートの1位になっているので、それがこのアルバムの価値を高めているのかもしれないが、何よりも全ての曲がよく出来ている。


CARTER USMの音楽性は、同時期に活動したJESUS JONES〔ジーザス・ジョーンズ〕、EMF〔イーエムエフ〕、POP WILL EAT ITSELF〔ポップ・ウィル・イート・イットセルフ〕辺りと同系統のデジタル・ビートとロックを掛け合わせたデジタル・ロック(英国ではグレボと言うらしい)なのだが、この中ではCARTER USMが最もキャッチーで古典的なメロディ重視型の音楽性を持っている。


打ち込みを使ってはいるが、どこか温かみがあり、無機質な感じがしない。


当時、聴いていた頃は、30歳を過ぎたオッサン二人が20代の若い衆に負けまいと、必死に頑張ってロックしている姿が何だかとてもカッコ良く見えて仕方がなかったものである。


そして、メロディが、これまた泣けるメロディなのである。


そのせいか、カッコ良くもあったが、痛々しくも見えた。


そこがまた良かったのである。


この記事を書くにあたり、世界最大の動画共有サービスサイトでCARTER USMの当時のミュージック・ヴィデオを見たのだが、二人が若く見えることに驚いた。


自分自身が当時の彼らを超えるオッサンになっているので、当時の彼らが若く見えるのは当たり前のことなのだが、30代ってまだまだ全然若い世代である。


彼らをオッサンと思っていたことを、ここで深くお詫びしたいと思う。

 

#0123.3) innocent blue birds、junのロックンロールレディオ 【2018年スタート】

筆者が愛読しているブログ「SMELLS LIKE PUNK SPIRIT」のブロガーさんがラジオ番組を始めた。


番組名は「innocent blue birds、junのロックンロールレディオ」である。


これがかなり面白い。


「そう言えば、昔、ロック好きが集まって、こんな話をしたなぁ~」っていう感じの番組であり、筆者のような2000年代以降のロックについて行けないロック・ファンにとって実にフレンドリーな内容になっている。


ロックと親和性の高いメディアは、やはり、ラジオなのである。


雑誌も好きなのだが、雑誌は音が出ない。


ミュージック・ヴィデオ(昔はプロモーション・ヴィデオと言っていたような・・・)も面白いのだが、映像とセットで曲を聴いてしまうと、その曲に対するイメージが固定化される傾向がある。


それに対し、曲だけを聴けるラジオはプリミティヴだ。


DJが語るそのミュージシャンや曲やアルバムへの蘊蓄に対し、「そうそう」とか「いやいや」とか、突っ込みを入れつつ聴けるラジオは最高のロック・メディアである。


「innocent blue birds、junのロックンロールレディオ」はRadiotalkというアプリを使って製作/公開されているのだが、このアプリで収録できる番組の長さが12分なのである。


この12分というのがちょうど良い。


これが、5分では物足りないし、30分だと聴くのに気構えがいる。


アーカイブを纏めて聴きたい時も、この12分というのが良い感じで次から次へと聴き進められる。


適当に休憩も入れられる。


質問箱も設置されているのでリスナー参加型となっているのも嬉しい。


ぜひ、くすぶっているロックン・ロール・プリズナー達に聴いてほしい番組である。

 

#0123.2) CROSSBEAT Presents from PUNK to POST-PUNK / シンコー・ミュージック・ムック 【2018年リリース】

#0123.1に続き、もう一冊、番外編として本を取り上げてみる。


今回は、シンコー・ミュージックからのムック本、「CROSSBEAT Presents from PUNK to POST-PUNK」である。


詳しくは出版社の公式サイトを見て頂きたい。


筆者がロックを聴き始めたのは1980年代初期であり、これはパンク・ムーヴメントが完全に終わり、ポストパンクの隆盛もそろそろ終わりに向かおうとしている時期と重なる。


そんな筆者にとってパンク~ポストパンクはリアルタイムで体験することが出来なかった「最も近い生々しいロックの歴史」であり、当時の洋楽雑誌にパンク~ポストパンクの特集記事が掲載された時などは必死に読み耽ったものである。


CROSSBEAT Presents from PUNK to POST-PUNK」はそのタイトルのとおり、パンク~ポストパンクのミュージシャン、写真家、DJへのインタビュー記事で構成されたムック本なのだが、インタビューを受けている各人がバンド成立の過程やバンド内のメンバーに対する好意も敵意も入り乱れた複雑な感情を吐露しており、読んでいて興奮が抑えられない一冊となっている。


過去に存在した洋楽雑誌CROSSBEATに掲載されたインタビューもあるようだが、それらの記事にも掲載当時はカットした部分を新たに挿入するなど、大幅な編集が加えられているので過去に同じインタビューを読んだことがある人も新しい発見が出来るのではないだろうか。


筆者としては、Sylvain Sylvain〔シルヴェイン・シルヴェイン〕がNEW YORK DOLLSニューヨーク・ドールズ〕結成の経緯を語っている記事が最も面白く感じることが出来た。


特に自分(Sylvain Sylvain)がギターを教えてあげたJohnny Thundersジョニー・サンダース〕から言われたという、あるセリフが面白く、それがあまりにもJohnny Thundersらしいので不覚にもニヤリとしてしまった。


これは、ぜひともJohnny Thundersフリークに読んで頂きたいインタビューである。

 

#0123.1) マンガでわかるジャズ / 山本加奈子(著)、及川亮子(監修) 【2018年リリース】

ここ数年はインターネットで情報を収集することが増え、買う本の数が激減してしまったのだが、最近、面白い本に出合えたので番外編としてそれらの本を取り上げてみる。


まずは、山本加奈子(著)、及川亮子(監修)による「マンガでわかるジャズ」である。


詳しくは出版社の公式サイトを見て頂きたい。


筆者はロック・リスナーなのでジャズは全くの門外漢なのだが、若かりし頃に仕事で赴任した先に在ったジャズ喫茶にふとした切っ掛けで入り、そこのマスターからジャズを教えてもらうようになり、僅かではあるがジャズも聴くようになった。


しかしながら、全くの「かじり聴き」なので、ジャズについての知識が殆ど無い。


常々、ジャズの歴史やアーティストの相関関係を知りたいと思っていたのだが、ジャズはロックよりも歴史が深く、その成立の過程が複雑で全貌が掴みにくい。


そんな筆者のモヤモヤを一気に解決してくれたのが今回取り上げた「マンガでわかるジャズ」だ。


可愛らしい絵と丁寧な解説でジャズの全貌を解り易く教えてくれる一冊となっている。


ジャズ特有の敷居の高さもなく、初心者でも気軽に読める作りになっているので、「これからジャズを聴いてみたい」、或いは、「ジャズを聴き始めたけどこの先、何を聴いたらいいのか分からない」という人にお薦めしたい本である。