Rock'n'Roll Prisoner's Melancholy

好きな音楽についての四方山話

#0228) I SHOULD COCO / SUPERGRASS 【1995年リリース】

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ブリットポップの二大巨頭と言えばBLUR〔ブラー〕とOASIS〔オアシス〕であることは多くのロック・ファンにとって共通の認識だろう。


しかし、ブリットポップ・ムーヴメントの勃発は1994年頃であり、BLURはそれよりも少しだけ前から、OASISはそれよりもほんの少しだけ前から活動している。


筆者にとって、ブリットポップ・ムーヴメントの真っ只中から登場したアーティストとして真っ先に思い浮かべるのはSUPERGRASSスーパーグラス〕だ。


そして、SUPERGRASSは他のブリットポップのアーティストを寄せ付けることなく、早々にブリットポップから抜け出し、UKロックのアイコンになった。


同じ時期にこれもまたブリットポップの真っ只中から出てきたMENSWEAR〔メンズウェア〕もデビューし、SUPERGRASSと比較されたりもしたが、MENSWEARが急激に下降線を辿っていったのに対し、SUPERGRASSは鰻上りに評価を高めていった。


残念ながらSUPERGRASS は2010年に解散してしまったが、SUPERGRASSの活動期間中に彼らのことをブリットポップのアーティストとして捉えているロック・ファンは殆どいなかっただろう。


筆者もSUPERGRASSのことをブリットポップのアーティストとして聴いていたのは1stシングル"Caught By The Fuzz"と2ndシングル"Mansize Rooster"までだ。


今回取り上げたのはSUPERGRASSの1stアルバム「I SHOULD COCO」だ。


「I SHOULD COCO」を聴く前に、既にテレビの洋楽番組で"Caught By The Fuzz"と"Mansize Rooster"を聴いていたのだが、「メチャクチャ良い曲を書く生きの良いバンドが出てきてな」と思う反面、「この2曲だけで才能を使い果たして消えていくブリットポップ・バンドの一つかな」とも思っていた。


しかし、「I SHOULD COCO」は、そんな筆者の予想を遥かに上回るアルバムだった。


どこから聴いてもポップでキャッチーなロックン・ロールが飛び出す名盤であり、それでいて、この1stアルバムくらいでは才能が枯渇しようもない懐の深さも同時に感じさせる名盤だったのである。


筆者の予想通りと言うか、SUPERGRASSの才能からすれば当たり前だったのだが、その後の彼らはブリットポップという小さな枠組みにはとても収まり切れないバンドに成長し、1990年代から2000年代にかけての英国を代表するバンドとしての存在感を示し続けたのである。

 

#0227) WAKE ME WHEN IT'S OVER / FASTER PUSSYCAT 【1989年リリース】

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FASTER PUSSYCATが1stアルバム「FASTER PUSSYCAT」をリリースしたのは1987年7月であり、これはGUNS N' ROSES〔ガンズ・アンド・ローゼズ〕の1stアルバム「APPETITE FOR DESTRUCTION」とリリース時期がドン被りしている。


今でもよく憶えているのだが、この2枚のアルバムがリリースされる少し前に、当時の洋楽雑書MUSIC LIFEに「アメリカン・ハード・ロックン・ロール特集」的な記事が掲載されていて、その内容は「1970年代に活躍したAEROSMITHエアロスミス〕やKISS〔キッス〕に影響を受けた若い世代のバンドが米国で盛り上がりを見せ始めている」というものだった。


その「若い世代のバンド」の筆頭として紹介されていたのがGUNS N' ROSESとFASTER PUSSYCATであり、更に注目株としてL.A.GUNS〔L.A.ガンズ〕、JETBOY〔ジェットボーイ〕、BRUNETTE〔ブルネット〕等が紹介されいたのだが、このムーヴメントをかなり深く掘りさげた記事だったと記憶している。


話が逸れたが、FASTER PUSSYCATの1stアルバム「FASTER PUSSYCAT」での演奏の下手さ加減は、当時のグラム・メタル界隈で最下位だったかもしない。


もしかすると、当時、演奏が下手だと叩かれまくっていたあのPOISON〔ポイズン〕よりも危うかった可能性がある。


しかし、AEROSMITH、NEW YORK DOLLSニューヨーク・ドールズ〕、HANOI ROCKSハノイ・ロックス〕への憧憬を隠さない彼らのスタイルが好きだった筆者は一緒に買ったGUNS N' ROSES の1stアルバムよりもFASTER PUSSYCATの1stアルバムを愛聴していた。


その後、1年ほど経過すると彼らの情報が洋楽雑誌に載らなくなり、「レコード会社に契約を切られたかな」と思っていた矢先に突然リリースされたのが今回取り上げた2ndアルバムの「WAKE ME WHEN IT'S OVER」である。


このアルバムを聴いて驚いたのは、演奏が上手くなっていたことである。


それも、練習して上手くなったというよりも、過酷なツアーで鍛え上げられて上手くなった感じであり、1曲目"Where There's A Whip, There's A Way"の骨太なロックン・ロールに意表を突かれる。


そして、このアルバムで何よりも特筆すべき曲は、両親が離婚した子供の苦痛を切々と歌ったバラードの"House Of Pain"だ。


筆者の両親も離婚していたため、この曲で歌われいる子供の悲痛な叫びが他人事には思えず、当時の筆者の心に突き刺さった。


今でもこの曲を聴くと、子供を悲しませる親達に対し、強い憤りを覚えるのである。

 

#0226) SPORTS / HUEY LEWIS & THE NEWS 【1983年リリース】

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このブログでは度々書いていることだが、筆者が洋楽を聴き始めたのは1980年代の初期だ。


その頃に聴いていたアーティストは、JAPAN〔ジャパン〕、GIRL〔ガール〕あたりで、その後はDURAN DURANデュラン・デュラン〕、CULTURE CLUBカルチャー・クラブ〕、KAJAGOOGOO〔カジャグーグー〕となり、いずれも英国のアーティストだ。


英国以外ではフィンランド出身のHANOI ROCKSハノイ・ロックス〕も聴いていたが、ザックリと広く括って言ってしまえば、いずれも欧州のアーティストだ。


そして、いずれのアーティストにも共通しているのはヴィジュアルのインパクトが強いということである。


同級生のロック好きの女子達は、洋楽雑誌に載った上記のアーティスト達のグラビアを見てキャーキャー言っていた。


男子だった筆者にとっての洋楽への入り口も女子達がキャーキャー言っていたアーティストと同じなのだが、これは当時の洋楽雑誌(主にMUSIC LIFEとROCK SHOW)が取り上げていたアーティストの多くが女子受けの良いアーティストだったからだ。


もちろん、未だに上記したアーティスト達は大好きなのだが、1980年代の中期になると、それまでとはまるで違う「ヴィジュアルのインパクトが薄い」アーティストに嵌り始めた。


それは、Bruce Springsteenブルース・スプリングスティーン〕であり、TOM PETTY & THE HEARTBREAKERS〔トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズ〕であり、BOB SEGER & THE SILVER BULLET BAND〔ボブ・シーガー&ザ・シルバー・バレット・バンド〕であり、John Cougar Mellencamp〔ジョン・クーガー・メレンキャンプ〕あり、そして、今回取り上げたHUEY LEWIS & THE NEWS〔ヒューイ・ルイス&ザ・ニュース〕なのである。


いずれも米国のアーティストだ。


今回取り上げたHUEY LEWIS & THE NEWSの3rdアルバム「SPORTS」は800万枚以上を売り上げたメガヒット・アルバムだ。


でも、筆者がこのアルバムに惹かれたのはメガヒット・アルバムだからではない。


多少80年代的なチープなシンセの音も入っているが、彼らの鳴らすタフで軽快でストレートなロックン・ロールに惹かれたからだ。


アルバムの1曲目を飾る曲のタイトルが"The Heart Of Rock & Roll"なんて、それだけでもう既にカッコ良いのである。

 

#0225) FIRE ON THE MOUNTAIN / THE CHARLIE DANIELS BAND 【1974年リリース】

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若い頃はスリムだった体形も50歳になった現在ではお腹の出たポテッとした体形になった。


ズボンのファスナーが開けっぱなしであることに気付かず歩いていたとしても、大して違和感の無い見事なオッサンになったと思う。


ロック・スターというのはスリムであることを要求される職業である。


Mick Jaggerミック・ジャガー〕やKeith Richards〔キース・リチャーズ〕、Steven Tylerスティーヴン・タイラー〕やJoe Perryジョー・ペリー〕なんて、ずっとスリムな体形を維持し続けていて凄いなと思う。


David Bowieデヴィッド・ボウイ〕なんて、スリムで美しい容姿のまま亡くなった。


皆、ロック・スターの鏡だ。


きっと、スリムな体形を維持するために不断の努力を続けていたのだろう。


だたし、「羨ましいか?」と問われれば、全く羨ましいとは思わない。


何故なら筆者は、好きな食べ物をお腹いっぱい食べたいからだ。


そんな、筆者が憧れるのは、上記したスリムなロック・スターよりも、むしろCharlie Daniels〔チャーリー・ダニエルズ〕だ。


彼の見事な太鼓腹を見ていると安心できるのである。


Charlie Danielsに限らず、サザン・ロックと言えば、何となく「禿」、「髭」、「太鼓腹」のイメージがある。


実際にはスリムな人もかなり居るのだが、なんとなく、サザン・ロックにはそのようなイメージがある。


Charlie Danielsはテンガロンハットを被っているので禿かどうかは分からないが、髭と太鼓腹は堂々たるものである。


今回取り上げたのは、そんなCharlie Daniels が率いるTHE CHARLIE DANIELS BANDの5thアルバム「FIRE ON THE MOUNTAIN」だ(バンド名義では2枚目にあたる)。


このアルバムは、「禿」、「髭」、「太鼓腹」を地で行くようなサザン・ロックであり、カントリー・ロックだ。


筆者が、もしアルコールが達者な体質なら、昼間からバーボンでも呑みながら聴いてみたい、そんな音楽なのである。

 

#0224) IN SIDES / ORBITAL 【1996年リリース】

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ORBITAL〔オービタル〕はPhil Hartnoll〔フィル・ハートノル〕とPaul Hartnoll〔ポール・ハートノル〕の兄弟で構成される英国のテクノ・デュオだ。


同じ英国出身のテクノ・デュオTHE CHEMICAL BROTHERS〔ザ・ケミカル・ブラザーズ〕のTom Rowlands〔トム・ローランズ〕とEd Simons〔エド・シモンズ〕は兄弟(Brothers)と名乗ってはいるが本当の兄弟ではない。


しかし、ORBITALの二人は本当の兄弟だ。


UNDERWORLDアンダーワールド〕、THE PRODIGY〔ザ・プロディジー〕、THE CHEMICAL BROTHERSと、今回取り上げているORBITALを「テクノ四天王」というらしい。


ただし、「テクノ四天王」は、METALLICAメタリカ〕、MEGADETHメガデス〕、SLAYER〔スレイヤー〕、ANTHRAXアンスラックス〕から成る「スラッシュ・メタル四天王(Big Four)」のように世界的に認知されたものではなく、日本だけで通用するローカルなものらしい。


ORBITALは、「テクノ四天王」の中で、筆者が最も後から聴いたアーティストだ。


テクノを含めたエレクトロニカと呼ばれる音楽が盛り上がり始めたのは、確か1990年代の中頃からなのだが(この時期にUNDERWORLDTHE PRODIGYTHE CHEMICAL BROTHERSも名盤をリリースしている)、当時、毎月買っていた洋楽雑誌でORBITALは、テクノ四天王の他の3組ほど取り上げられていなかったように記憶している。


今回取り上げたORBITALの4thアルバム「IN SIDES」は、このブログで取り上げてきたUNDERWORLDの「SECOND TOUGHEST IN THE INFANTS」(1996年リリース)、THE PRODIGYの「THE FAT OF THE LAND」(1997年リリース)、THE CHEMICAL BROTHERSの「DIG YOUR OWN HOLE」(1997年リリース)よりも若干影が薄いのではないだろうか?


ORBITALのアルバムは、1stアルバム「ORBITAL (GREEN ALBUM)」(1991年リリース)や、2ndアルバム「ORBITAL (BROWN ALBUM)」(1993年リリース)等、初期の作品の方が高い評価を得ている。


しかし、筆者が聴いた最初のORBITALのアルバムが「IN SIDES」だったことと、このアルバムがリリースされた当時(1996年)、凄まじい勢いでシーンに食い込んできたドラムン・ベースの影響が強く出ていることもあり、筆者の場合、ORBITALというと、どうにもこのアルバムばかりを聴いてしまう。


このアルバムで聴けるアンビエント・テクノとドラムン・ベースを融合したような音楽は、ロックにかなり接近していた当時の他のテクノ四天王とはかなり距離があり、孤高のテクノ・アーティストといった趣も面白い。