#0001) IN THE DYNAMITE JET SALOON / THE DOGS D'AMOUR 【1988年リリース】

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これから好きな音楽についての文章を書いてみるにあたり、最初にどのアーティストのどの作品を取り上げるべきか非常に迷ったのだが、結局これになった。


「IN THE DYNAMITE JET SALOON」。


これは、筆者が生涯で最も愛した英国のロックン・ロール・バンド、THE DOGS D'AMOUR〔ザ・ドッグス・ダムール〕の1stアルバムだ。


THE DOGS D'AMOUR は、それほどメジャーなバンドではないのでロック・ファンでも知らない人が多いのだが、FACES〔フェイセズ〕とTHE HEARTBREAKERS〔ザ・ハートブレイカーズ〕の中間をいくようなバンドと言えば、その音楽性をイメージできるロック・ファンは多いのではないだろうか。


言うまでもないがTHE HEARTBREAKERSは、Tom Pettyトム・ペティ〕の方ではなく、Johnny Thundersジョニー・サンダース〕の方だ。


FACESのブルース・フィーリングとTHE HEARTBREAKERSのストリート感を合わせたようなストレートなロックン・ロールがTHE DOGS D'AMOURの音楽性の基本なのだが、彼ら独自のオリジナリティを決定づけているのは、詩情あふれる短編小説のような歌詞と、胸に染みる哀愁漂うメロディーだ。


THE DOGS D'AMOURの殆どの曲を書いているのはヴォーカルとギターを担当するTyla〔タイラ〕なのだが、この人は作家で詩人のCharles Bukowski〔チャールズ・ブコウスキー〕から多大なる影響を受けている。


Charles Bukowskiは、酒と女と競馬に明け暮れた破滅型の生き方で知られる人で、こういう人から影響を受けて書かれたTylaの曲は、けしてハッピーなものではない。


今回取り上げた「IN THE DYNAMITE JET SALOON」の収録曲ではないのだが、Tylaの書いた曲のタイトルをいくつか列挙してみると、


・"When The Dream Was Gone (夢が消えたとき)"
・"Trail Of Tears (涙の痕跡)"
・"Kiss My Heart Goodbye (オレの心に別れのキスをしてくれ)"
・"Victims Of Success (成功の犠牲者)"
・"Scared Of Dying (死ぬのが怖いなら)"


等々、なんとなく、敗れ去った者をイメージさせる曲が多い。


敗者の美学とでも言うのだろうか。


「敗者の美学なんてものはない」という人もいるが、筆者に言わせれば、そういう人は、人の心の痛みが分からず、人の心を踏みつけているのに気付かない鈍感野郎だ。


この世には、敗れる生き方しか出来ない人もいる。


そんな敗れ去った人達に聴いてほしいバンドがTHE DOGS D'AMOURだ。


今回取り上げた「IN THE DYNAMITE JET SALOON」は、


・Tyla〔タイラ〕(vocals, guitars)
・Jo Dog〔ジョー・ドッグ〕(guitars)
・Steve James〔スティーヴ・ジェームス〕(bass)
・Bam〔バム〕(drums)


という、黄金期のメンバーが揃って、ようやくリリースされた1stアルバムである。


そして、後々まで、バンドでもソロでもTylaが歌い続けていく名曲” How Come It Never Rains”が収録されているアルバムだ。


” How Come It Never Rains”は所謂ラヴ・バラードなのだが、ただ単に甘いラヴ・ソングではなく、行き場を無くした男と女の悲哀を感じさせる情景描写が聴く者の胸を打つ名曲だ。


もし、” How Come It Never Rains”を聴いて好きになれたのであれば、「IN THE DYNAMITE JET SALOON」の他の収録曲も好きになれる確率は高い。


ほどよくキャッチ―なメロディーと、ツボを押さえた演奏、そして酒焼けしたTylaの声が、本物のロックン・ロールを好きな奴等の心に響くはずだ。