このブログで取り上げるアルバムは、基本的にオリジナル・アルバム(スタジオ・アルバム)にしているのだが、Muddy Waters〔マディ・ウォーターズ〕については「THE BEST OF MUDDY WATERS」が相応しいと思う。
「THE BEST OF ~」はグレイテスト・ヒッツ・アルバムなのだが、Muddyが最初にリリースしたアルバムなので、デビュー・アルバムという捉え方もできる。
Muddy は1940年代からシングルを継続してリリースしているので、このアルバムがリリースされた1958年には、既にベテランと呼ばれる域に達している。
筆者はロック・リスナーなのでブルースのことは全く詳しくないし、聴いてきたブルースのレコードも少ない。
そんな筆者が、「最もブルースらしいレコードは?」と問われたときに迷わず上げるのが、この「THE BEST OF ~」だ。
筆者の場合、最初に聴いたブルースのレコードはRobert Johnson〔ロバート・ジョンソン〕の「KING OF THE DELTA BLUES SINGERS, VOL. II」だったのだが、このアルバムを聴いて(と言うかRobert Johnsonを聴いてと言うべきか?)、他のブルース・マンも聴いてみようという気には、なかなかならないような気がする。
あまりにもミステリアスなRobert Johnsonの歌とギターは聴く者に呪術的な印象を与え、ちょっと取っ付き難い。
それに比べ、Muddy Watersは実に解り易い。
ブルースとはこういう物だということを、記号のような解り易さで教えてくれる。
特に「THE BEST OF ~」はグレイテスト・ヒッツ・アルバムなので、Muddyの初期の代表曲をたっぷりと味わえる。
そして、曰く言い難いのだが、悪(ワル)の匂いがプンプンするのである。
THE ROLLING STONES〔ザ・ローリング・ストーンズ〕やTHE PRETTY THINGS〔ザ・プリティ・シングス〕等、当時の英国の若きバンド達も、きっとこの匂いにヤラれたのだろう。
このアルバムを聴いていると、なるほど、ロックとは、ロックン・ロールとは、ブルースの息子なのだなということが実によく解かるのである。