米国のフロリダ州と言えば、青い海、白い砂浜、ウォルト・ディズニー・ワールド・リゾート等、米国屈指のリゾート地という印象が強い。
今回取り上げた「CRIMSON GLORY」は、そんなリゾート地フロリダ出身のプログレッシヴ・メタル・バンドCRIMSON GLORYの1stアルバムである。
フロリダ出身と書いたが、このバンドの奏でる曲にはリゾート地フロリダをイメージさせるような能天気な雰囲気は全くない。
むしろ、英国の湿り気や北欧の哀愁に通ずるその音は、バンドのデータを知らずに聴いた場合、欧州出身のバンドだと言われても違和感が無い。
プログレッシヴ・メタルと言うと、QUEENSRYCHE〔クイーンズライク〕とDREAM THEATER〔ドリーム・シアター〕が二大巨頭だが、筆者はCRIMSON GLORYもそれに匹敵するほどのバンドだと思っているし、特に今回取り上げた1stアルバム「CRIMSON GLORY」と2ndアルバム「TRANSCENDENCE」の完成度は凄まじい。
ただし、残念ながらCRIMSON GLORYは二大巨頭のようには売れなかった。
彼らの場合、歌も演奏も完璧なのだが、イメージ戦略に失敗したように思えてならない。
何しろメンバー全員が仮面を着けて素顔を隠していたのだから胡散臭さ十分である。
その上、シンガーのステージネームがMidnight〔ミッドナイト〕というのも胡散臭さに拍車をかけている。
筆者は「ミッドナイト」と言われると、週刊少年チャンピオンに連載されていたタクシードライバーが主人公の手塚治虫の漫画を連想してしまう。
アルバム・ジャケットも微妙である。
彼らが着けていたマスクをモチーフとしたデザインなのだが、これが漫画「コブラ」のCrystal Bowie〔クリスタル・ボーイ〕ようなカッコ良さもあるものの、映画「犬神家の一族」の佐清(すけきよ)にも似ている気がして、何となく間抜けな感じがしなくもない。
とにかく、イメージ戦略にことごとく失敗している気がしてならない。
筆者は音楽第一主義なので、楽曲が良ければイメージにはそれほど拘りがないのだが、このイメージ戦略では真面目に聴く気になれない人もいるのではないかと思う。
ただし、この1stアルバム「CRIMSON GLORY」は、デビュー作とは思えないほどの完成度を誇るプログレッシヴ・メタルの金字塔なので、イメージが過去の物となった今こそ正当に音楽性を評価して欲しいと願う一枚である。