Rock'n'Roll Prisoner's Melancholy

好きな音楽についての四方山話

#0044) MAXINQUAYE / Tricky 【1995年リリース】

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筆者が音楽と同じくらい好きなものの一つに文学がある。


音楽も節操なく色々なジャンルを聴き漁るがが、文学も節操なく色々なジャンルを読み倒す。


そんな筆者が1990年代中期に最も嵌まっていた小説が京極夏彦百鬼夜行シリーズである。


この百鬼夜行シリーズ、通称、「レンガ本」と呼ばれるほどの分厚い小説なのだが、そのページ数の膨大さが気にならないほどの面白さで、これまでに同じ作品を何度も読み返している。


小説を読むときは、なるべく無音の方が良いときもあれば、何か音楽を聴きながらの方が良いときもある。


百鬼夜行シリーズも何か音楽を聴きながら読みたいときがあり、どういう訳か、そのときに筆者が最も聴きたくなる音楽のジャンルがトリップ・ホップなのである。


トリップ・ホップの中でもブリストル出身のアーティストが最も百鬼夜行シリーズに合うのだが、中でも選ぶ回数が多いのが今回取り上げたTricky〔トリッキー〕の1stアルバム「MAXINQUAYE」だ。


このアルバムは、とにかく暗い。


聴いていると暗澹たる気分になる。


この「MAXINQUAYE」という読みにくいアルバム・タイトルは、「マクシンクェーイ」と読むのだが、これはTrickyが子供の頃に自殺した彼の母親の名前である。


そんなタイトルのアルバムが暗くない訳はない。


更に言えば、暗い上に乱暴なアルバムである。


盟友とも言えるPORTISHEAD〔ポーティスヘッド〕の名曲"Glory Box"を無断でサンプリングするという荒業を仕掛けて、"Hell Is Round The Corner"というこれもまた名曲を作ってしまっている。


そもそもPORTISHEADの"Glory Box"がIsaac Hayesアイザック・ヘイズ〕というR&Bアーティストの"Ike's Rap 2"という曲をサンプリングした曲なので、Trickyの"Hell Is Round The Corner"はサンプリングを更にサンプリングしている訳であり、これもなかなかの荒業である。


話が戻ってしまうのだが、この「MAXINQUAYE」というアルバムが持つ暗さや乱暴さが、人間の複雑な情念から出でる犯罪と日本古来の妖怪を絡めた百鬼夜行シリーズの世界観にとてもよく合うのである。


今回はなんだかCDの紹介というよりも本の紹介のような文章になってしまった。