筆者がロックを聴き始めたのは中学生の頃で、その頃めちゃくちゃ売れていたロック・アルバムの一枚がZZ TOP〔ジー・ジー・トップ〕の「ELIMINATOR」(1983年リリース)だった。
当時、貪欲に色々なロックを聴き漁っていた筆者も御多分に漏れず、「ELIMINATOR」をレンタル・レコード店で借りて聴き、お気に入りの一枚になっていたわけだが、そこからZZ TOPのバック・カタログを遡って聴くまでには至っていなかった。
当時の音楽雑誌などでよく書かれていた、「ELIMINATORはテクノロジーを駆使して制作されたモダンなアルバムだが、70年代のZZ TOPはもっと泥臭い」という記事を目にし、そんな泥臭い過去のZZ TOPを自分みたいな子供が聴けるわけないと思い込んでいたからだ。
そんな筆者がZZ TOPのバック・カタログを遡るようになったのは高校生になってからである。
当時、筆者がバイトをしていた会社の常務がZZ TOPの大ファンで、彼がZZ TOPの過去の全てのアルバムを筆者に貸してくれたのである。
おかげで筆者は身銭を切ることなくZZ TOPのバック・カタログを聴くことができた。
少々、話は逸れるが、筆者がバイト先で付き合いのあった当時の大人のロック・ファン達(概ね5歳以上年上の人達)は、どういう訳かみんな判で押したようにDEEP PURPLEとLYNYRD SKYNYRDとZZ TOPが大好きで、David BowieやT. REXが大嫌い、パンクに至ってはロックじゃないと言う人が多かった。
上記の全てのアーティストを聴いていた筆者は、年上の彼らから度々「お前みたいな節操の無い奴はロック・ファンの風上にも置かれへん」と詰られたものである。
結局、節操の無さは現在まで続いているので、これはもう死ぬまで治らなさそうだ。
さて、バイト先の常務から借りたZZ TOPのバック・カタログだが、一番気に入って聴きまくったのが今回取り上げた「FANDANGO!」である。
このアルバムは一応ZZ TOPの4thアルバムという位置づけなのだが、アナログ・レコードで言うところのA面がライヴ音源でB面がスタジオ録音という変則的なアルバムである。
とにかく荒っぽいA面のライヴ音源で聴き手の関心をぐっと引き付け、達者なソングライティングが光るB面で聴き手の心を鷲掴みにするという構成は見事としか言いようがない。
そして、このアルバムも含め、ZZ TOPのバック・カタログを聴いて意外だと思ったのは、当時、モダンと称されていた最新作の「ELIMINATOR」と、泥臭いと称されていたバック・カタログがそれほど変わらないと感じたことだ。
もちろん、「ELIMINATOR」ではシンセサイザーやシーケンサーを使ってるのでモダンと言えばモダンなのだが、ZZ TOPと言うバンドは何をやろうが骨格は全く変わらないのである。
徹頭徹尾ブギー・バンドでありロックン・ロール・バンドなのだ。
これはもう、RAMONES、AC/DC、MOTORHEADと同様、グレート・マンネリズムと言うべき存在であり、やりたいことを全く変えないその姿勢は尊敬に値する。
そして、ZZ TOPがRAMONES、AC/DC、MOTORHEADよりも一枚上手なのは、メンバーさえもデビュー当時から一度も変わっていないことである。