1980年代の後半に英国でちょっとだけ興ったブームに「ブロンド・ムーヴメント」というものがある。
ルックスの良いブロンドの女子をフロントに立てたBLONDIE〔ブロンディ〕っぽいバンドを一纏めにして当時のメディアがそう呼んでいた。
このムーヴメントの代表的なバンドであるTRANSVISION VAMP〔トランスヴィジョン・ヴァンプ〕とTHE PRIMITIVES〔ザ・プリミティヴズ〕を既にこのブログで取り上げたので、THE DARLING BUDS〔ザ・ダーリン・バッズ〕も取り上げないわけにはいかなくなった。
そして、取り上げるアルバムは、このバンドの場合、やはり1stアルバムの「POP SAID...」が妥当だろう。
この1stアルバム、ロックやポップの歴史に刻まれるような名盤ではない。
かと言って、駄作でもない。
全てにおいて、ちょうど良い感じである。
このアルバムがリリースされた1989年頃と言えば、筆者はスラッシュ・メタルやプログレッシヴ・メタル等、聴く時にけっこうな緊張感を強いられる音楽を聴くことが多かった。
もちろん、緊張感を強いられながら聴く音楽もそれはそれでスリリングで好きなのだが、やはり、たまにはほっこりした気分で音楽を聴きたくなる時もある。
そういう気分になった時によく聴いていたのが、この「POP SAID...」だった。
TRANSVISION VAMPのWendy James〔ウェンディー・ジェームス〕やTHE PRIMITIVESのTracy Tracy〔トレイシー・トレイシー〕は、ちょっと性格がきつそうに感じられるのだが、このバンドのシンガーであるAndrea Lewis Jarvis〔アンドレア・ルイス・ジャーヴィス〕は彼女達と比べると普通の女の子感が強い。
なんとなく優しそうなのである。
そう言えば、Wendy JamesとTracy Tracyはメディアに煽られる形で舌戦を展開していたが、Andrea Lewis Jarvisはそういった舌戦には無関心だったように記憶している。
音楽的には、これと言った特徴のない普通のギター・ポップである。
そんな普通のギター・ポップにのせて歌われるAndrea Lewis Jarvisの声がなんとも可愛らしくて心地よい。
たぶん、こういうバンドはロックやポップの歴史に埋もれてしまうのだろう。
でも、ロックやポップ等のポピュラー・ミュージックは歴史的な名盤ばかりを聴いていても飽きてくるものである。
こういった歴史に埋もれてしまいそうな一枚をひっそりと聴くのも音楽の楽しみ方の一つなのである。