#0068でMANSUN〔マンサン〕の1stアルバム「ATTACK OF THE GREY LANTERN」を取り上げた時に、「今(2018年現在)でも聴くブリットポップのアーティストはGENE〔ジーン〕、MARION〔マリオン〕、MANSUNくらいだ」と書いたので、今日はその中の一つ、MARIONの2ndアルバム「THE PROGRAM」を取り上げてみる。
MARIONはブリットポップのオピニオン・リーダーとも言えるOASIS〔オアシス〕と同じマンチェスター出身のバンドだが、その知名度となるとOASISとは比べようもないくらい低い。
この世代のマンチェスター出身のバンドにしては異例とも言えるほどTHE STONE ROSES〔ザ・ストーン・ローゼズ〕からの影響を感じさせないバンドだ。
むしろ、彼らの音楽的ルーツは同じマンチェスター出身のバンドでも、THE STONE ROSESのようなマッドチェスターではなく、JOY DIVISION〔ジョイ・ディヴィジョン〕やTHE SMITHS〔ザ・スミス〕のようなポストパンク~ニュー・ウェーヴにある。
これは筆者の想像ではなく、何かの雑誌のインタビューでMARIONのシンガーJaime Harding〔ジェイミー・ハーディング〕が言っているのを読んだことがある。
ブリットポップにはマッドチェスターが持っていた外側に向かう享楽的な要素が引き継がれているが、MARIONにはそういう要素が皆無であり、むしろ内側に向かう美意識を研ぎ澄ませる傾向が強い。
1stアルバム「THIS WORLD AND BODY」は粗削りながらも自らのロマンティシズムを貫き通した名盤だったが、今回取り上げた2ndアルバム「THE PROGRAM」はそのロマンティシズムを更に昇華させた大傑作となっている。
Jaime Hardingの狂おしく歌い上げるヴォーカルとポストパンク~ニュー・ウェーヴからの影響を隠そうとしないプリミティヴな輝きを放つ楽曲が収録されたこのアルバムは、1980年代初期にUKロックで洋楽に嵌った筆者のようなリスナーにとっては垂涎の一枚となっている。
これは元々MARIONというバンドが持っていた資質だと思うのだが、このアルバムは元THE SMITHS〔ザ・スミス〕のJohnny Marr〔ジョニー・マー〕がプロデュースを手掛けているので、彼によって引き出されている部分も少なからずあるのだろう。
実はMARIONが持つこのロマンティシズムは冒頭に書いたGENEとMANSUNにも通ずるものであり、それがこれらのバンドのCDをいまだに筆者が聴き続ける理由なのである。