THE BEATLES〔ザ・ビートルズ〕から大きな影響を受けたバンドとして、よく例えに挙げられるのはBADFINGER〔バッドフィンガー〕、CHEAP TRICK〔チープ・トリック〕、ENUFF Z'NUFF〔イナフ・ズナフ〕、TEENAGE FANCLUB〔ティーンエイジ・ファンクラブ〕、OASIS〔オアシス〕あたりになるのだろうか?
他にもあるはずだが、今、パッと思いついたものだけを書いてみた。
OASIS以外は筆者が今でもよく聴くバンドである。
OASISは、2ndアルバム「(WHAT'S THE STORY) MORNING GLORY?」がリリースされた頃まではよく聴いていたのだが、「ある日、突然に」と言えるくらい、急激に興味を失ってしまった。
逆にTEENAGE FANCLUBは、1991年に名盤と言われる3rdアルバム「BANDWAGONESQUE」がリリースされた頃は、「良い曲が詰まったアルバムだな」と思いながらも、それほど聴き込むことはなかった。
普通、それほど聴き込まないアルバムは中古CDショップに売ってしまったりするのだが、「BANDWAGONESQUE」は聴き込まないながらも、何となく捨て難いものがあり、部屋のCDラックに眠ったまま数年が過ぎた。
そして、TEENAGE FANCLUBのその後のアルバムを追いかけることなく、2000年を少し過ぎた頃、気まぐれで「BANDWAGONESQUE」を久しぶりに聴いてみたところ、「えっ、こんなに良かったっけ?」という驚きと共に、遅ればせながらTEENAGE FANCLUBに嵌ってしまったのである。
その後、少しずつ「BANDWAGONESQUE」以降のTEENAGE FANCLUBのアルバムを買い揃えていったのだが、その中でも特に心を鷲掴みにされたのが、今回取り上げた5thアルバムの「GRAND PRIX」だ。
余談だが、このバンド、2ndアルバムの「THE KING」が無かったことにされているような節がある。
故に、「GRAND PRIX」も5thアルバムではなく、4thアルバムとしてカウントされている場合がある。
話が逸れたが、この「GRAND PRIX」というアルバム、1990年代屈指のグッド・メロディが詰まった作品である。
「BANDWAGONESQUE」で話題になった頃は、時代性を反映させ、グランジやオルタナティヴ・ロックからの影響を伺わせるテイストもあったのだが、この「GRAND PRIX」というアルバムは唯々良質なポップ・ミュージックを楽しめる作品になっている。
THE BEATLESに似ているかと問われれば、それほど似ていないような気がする。
特に中期以降のTHE BEATLESが持っていたエクスペリメンタルな要素は希薄である。
Norman Blake〔ノーマン・ブレイク/vocals, guitars〕、Gerard Love〔ジェラード・ラヴ/vocals, bass〕、Raymond McGinley〔レイモンド・マッギンリー/vocals, guitars〕という優れたソングライターがそれぞれ個別に書いた曲を持ち寄り、バンドで録音しただけのようなアルバムなのだが、不思議と統一感がある。
どの曲も名曲なのだが、人に聴かせる時に1曲選ぶならGerard Love の書いた"Don't Look Back"だ。
優しく、「振り返るな」と語りかけてくれるようなこの曲は、もう、何もかもが嫌になったと思える時に聴くと涙が出そうになる。
そう言えば、昔、洋楽雑誌MUSIC LIFEに掲載されたMANIC STREET PREACHERS〔マニック・ストリート・プリーチャーズ〕のNicky Wire〔ニッキー・ワイアー〕のインタビュー記事で、彼が少し言い難そうに、「実はTEENAGE FANCLUBが好きなんだ」と言っていたのを読んだ記憶がある(古い記憶なので間違っていたらお許し頂きたく)。
この、少し言い難そうに「TEENAGE FANCLUBが好き」とカミングアウトする感じ、何となく解る気がする。