今回取り上げるのは、CARTER THE UNSTOPPABLE SEX MACHINE〔カーター・ジ・アンストッパブル・セックス・マシーン〕(長いので以下CARTER USMとする)の3rdアルバム「1992 – THE LOVE ALBUM」だが、彼らは前年の1991年に「30 SOMETHING」というタイトルの2ndアルバムをリリースしている。
これは1991当時、メンバーのJim Bob〔ジム・ボブ〕(1960年生れ)が31歳、Fruitbat〔フルートバット〕(1958年生れ)が33歳なので、そこから付けられたタイトルなのだが、当時20歳を少し超えたばかりの筆者から見ると、30代というのはけっこうなオッサンに思えたものである。
Paul Weller〔ポール・ウェラー〕が1958年生れなので、CARTER USMの二人はパンクの洗礼を受けたパンクど真ん中世代だ。
当時の筆者は、「30歳になるのは嫌だな」という思いがあって歳を取ることに抵抗があったのだが、実際に30歳になってみると、特に何がどう変わるということもなく、拍子抜けした感じだった。
さて、CARTER USMの「1992 – THE LOVE ALBUM」である。
CARTER USMは当時既に30代になっていたオッサン二人のロック・デュオだ。
彼らの初期のアルバムはどれもカッコ良いのだが、今でも特に好んでよく聴くのが「1992 – THE LOVE ALBUM」だ。
彼らのシングルの中で最も全英チャートの上位に入った"The Only Living Boy In New Cross"という名曲が収録されていて、アルバムそのものも全英チャートの1位になっているので、それがこのアルバムの価値を高めているのかもしれないが、何よりも全ての曲がよく出来ている。
CARTER USMの音楽性は、同時期に活動したJESUS JONES〔ジーザス・ジョーンズ〕、EMF〔イーエムエフ〕、POP WILL EAT ITSELF〔ポップ・ウィル・イート・イットセルフ〕辺りと同系統のデジタル・ビートとロックを掛け合わせたデジタル・ロック(英国ではグレボと言うらしい)なのだが、この中ではCARTER USMが最もキャッチーで古典的なメロディ重視型の音楽性を持っている。
打ち込みを使ってはいるが、どこか温かみがあり、無機質な感じがしない。
当時、聴いていた頃は、30歳を過ぎたオッサン二人が20代の若い衆に負けまいと、必死に頑張ってロックしている姿が何だかとてもカッコ良く見えて仕方がなかったものである。
そして、メロディが、これまた泣けるメロディなのである。
そのせいか、カッコ良くもあったが、痛々しくも見えた。
そこがまた良かったのである。
この記事を書くにあたり、世界最大の動画共有サービスサイトでCARTER USMの当時のミュージック・ヴィデオを見たのだが、二人が若く見えることに驚いた。
自分自身が当時の彼らを超えるオッサンになっているので、当時の彼らが若く見えるのは当たり前のことなのだが、30代ってまだまだ全然若い世代である。
彼らをオッサンと思っていたことを、ここで深くお詫びしたいと思う。