Rock'n'Roll Prisoner's Melancholy

好きな音楽についての四方山話

#0149) ANGEL DUST / FAITH NO MORE 【1992年リリース】

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FAITH NO MORE〔フェイス・ノー・モア〕というバンドは、3rdアルバム「THE REAL THING」に収録されている全米9位のヒット・シングル"Epic"がラップ・メタルの先駆けのような曲であるため、ラップ・メタルやファンク・メタルとしてカテゴライズされることが多い。


しかし、ラップやファンクだけがこのバンドの影響源ではなく、それら以外にも実に様々な音楽からの影響を内包しているのだが、複雑な音楽性を持ちながらも、不思議と難解な部分はなく、極めてキャッチーで解り易い楽曲を提供してくれるバンドだ。


今回取り上げた4thアルバム「ANGEL DUST」は、そんな彼らの多様な音楽性が最も理想的な形で昇華した傑作と言えるだろう。


彼らと同様に、ファンク・メタルにカテゴライズされながらも、実は一言では説明し切れない多様な音楽性を持つバンドとしては、JANE'S ADDICTION〔ジェーンズ・アディクション〕がいるのだが、FAITH NO MOREはJANE'S ADDICTIONに比べるとはるかに聴き易い音楽性を持つ。


昔(1990年代初頭)、筆者が当時の洋楽仲間にJANE'S ADDICTIONの傑作2ndアルバム「RITUAL DE LO HABITUAL」き聴かせると好き嫌いが真っ二つに分かれるのだが、FAITH NO MOREの「ANGEL DUST」を聴かせると好きになってくれる人の方が多かった。


JANE'S ADDICTIONを受け付けなかった人からは、大抵の場合、曲はカッコ良いと感じるが、Perry Farrell〔ペリー・ファレル〕の癖のあるヴォーカルに馴染めないと言われることが多かった。


それに比べると、FAITH NO MOREのMike Pattonマイク・パットン〕は、この手のファンク・メタル・バンドのヴォーカルとしては珍しいくらい王道のロック・シンガーであり、歌が上手いのでメタルでもラップでもバラードでも何でも器用に歌いこなす。


何しろ、あのLionel Richieライオネル・リッチー〕が書いたTHE COMMODORES〔ザ・コモドアーズ〕の名曲"Easy"を見事な美声で朗々と歌い上げてしまうのだからシンガーとしてのスキルはかなり高い。


そんな達者なシンガーと高水準の演奏技術を持つ楽器隊が渾然一体となって、複雑でありながらもポップな音をぶつけてくるのが、この「ANGEL DUST」というアルバムの凄さだ。


繰り返しになるが、Mike Pattonという人は実に歌の上手いシンガーだ。


しかし、そんな彼の歌の裏側に何とも言えない闇を感じてしまうところもこのバンドの面白さである。