UKパンクからは多くのバンドが登場し、特に1977年には、このムーヴメントを代表するバンドが1stアルバムをリリースしている。
有名どころでは、SEX PISTOLS〔セックス・ピストルズ〕、THE CLASH〔ザ・クラッシュ〕、THE DAMNED〔ザ・ダムド〕、THE STRANGLERS〔ザ・ストラングラーズ〕、THE JAM〔ザ・ジャム〕等がそれにあたる。
どれもこれも全く個性の異なる素晴らしいバンドであり、甲乙付け難いのだが、どうしてもこの中から自分にとってのNo.1を選ばなければならないのであればTHE JAMと答えるだろう。
筆者は3ピース・バンドへの憧れがあるのだ。
筆者が若かりし頃にやっていたバンドはvocals、guitar×2、bass、drumsという5人組だったのだが、対バンで3ピース・バンドと一緒になると、大抵の場合、良いバンドが多く、人数で勝る筆者たちがコテンパンに負けてしまうというのがお決まりのパターンだった。
3ピース・バンドというのは肝が据わっているバンドが多いような気がする。
ロック・バンドとして成立する最小限でプレイしているためか、ロックに対する覚悟が出来ているのかもしれない。
そんな3ピース・バンドの理想形の一つが筆者にとってはTHE JAMなのだ。
故に、THE JAMっぽいバンドが出てくると、気になって仕方が無く、試聴もせずに(というかインターネットが普及するまでは試聴なんて簡単に出来なかった)、ついついアルバムを買ってしまうのである。
今回取り上げた60FT DOLLS〔シックスティ・フット・ドールズ〕も、そんなTHE JAMっぽいバンドであり、無条件で1stアルバム「THE BIG 3」を買って大成功した好例だ。
3人で一体となって音の塊をぶつけてくるような、そんな初期衝動丸出しのプリミティヴな曲が素晴らしい。
特に2曲目の"Talk To Me"は初期衝動だけには留まらない、哀愁さえも感じさせてくれる名曲であり、その才能に嫉妬すら感じるほどだ。
60FT DOLLSは、沈みゆくブリットポップに無理やりカテゴライズされたバンドであり、不運なバンドだった。
期待されていたほど大きな成功を修めたバンドではないのだが、この素晴らしいアルバムを残してくれた彼らのことを筆者はけして忘れることはない。