Rock'n'Roll Prisoner's Melancholy

好きな音楽についての四方山話

#0186) ON THE BEACH / Chris Rea 【1986年リリース】

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筆者はバブル経済の頃に10代を過ごした世代だ。


バブル経済でイメージするものと言えば、「DCブランド」、「外資系企業」、「NTT株の高騰」、「ゆるい就活」、「地上げ」等、今思い出してもなかなかの狂気が錯綜する時代だった。


世界に目を向けると「米ソの冷戦」、「北大西洋条約機構vsワルシャワ条約機構」、「資本主義vs共産主義」等、軍事的な緊張感もあったが自分には関係の無いことだと思っていたし、「バブル」という狂気により心が麻痺させられていたのかもしれないが、何となく毎日が楽しくて、自分の行く末の心配なんて全くしていなかった。


まさか、アラフィフで、こんなにも不安定な毎日を過ごすことになるとは1ミリも思ってなかったのである。


洋楽と言うのは、主に英米で制作された音楽なので、日本の経済とは直接関係は無いはずだが、当時のバブル経済の好景気にやたらとフィットする洋楽もあった。


今回取り上げるChris Rea〔クリス・レア〕の8thアルバム「ON THE BEACH」も、そんな一枚だ。


表題曲の"On The Beach"が車のテレビCMに使われたこともあり、このアルバムは日本でもかなりのヒットを記録しているはずだ。


何よりも先ず、アルバム・ジャケットがバブルっぽい。


青い空、白い雲、ビーチパラソル、洋楽のアルバム・ジャケットというよりは、TUBE〔チューブ〕やOMEGA TRIBE〔オメガトライブ〕等、邦楽の夏バンドのアルバム・ジャケットのようだ。


ただし、音楽性は、「夏を楽しもうぜ!」的な明るさは無い。


表題曲の"On The Beach"を筆頭に、何となく「過ぎ去った夏の寂しさ」、「夏の終わりと共に失った恋」を思わせる喪失感のある曲が多い。


この喪失感が、当時、人間の欲望の全てが満たされたバブルという時代にマッチした。


現実世界で喪失感を味わうのは嫌だけれど、このアルバムを聴くことで仮想的な喪失感を味わって感傷に浸れたのである。


当時、高校生だった筆者も、このアルバムを聴いて大人になった気分を味わっていた。


今もこのアルバムを聴くと、あの頃の夏の記憶が蘇るのである。