Rock'n'Roll Prisoner's Melancholy

好きな音楽についての四方山話

#0216) THE WAY IT IS / BRUCE HORNSBY & THE RANGE 【1986年リリース】

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ロック・ミュージシャンを象徴する楽器と言えば、それはたぶんギターなのだろう。


しかし、ロック黎明期の1950年代中期においては、Little Richard〔リトル・リチャード〕、Fats Dominoファッツ・ドミノ〕、Jerry Lee Lewis〔ジェリー・リー・ルイス〕等、ピアノを演奏しながら歌うロックン・ローラーも人気を博しており、ピアノもロック・ミュージシャンを象徴する楽器だった。


ロックを象徴する楽器として、ピアノが衰退し、ギターが繁栄した理由は、ギターの方がピアノよりも持ち運びが楽だったからだろう。


ツアーの多いロック・ミュージシャンに選ばれる理由として、「持ち運びが楽」というのは大きなアドバンテージになる。


筆者の世代(2019年現在でアラフィフ)では子供の頃にピアノを習っている女子が非常に多く(これは今でも同じなのだろうか?)、筆者のイトコも女子は全員ピアノを習っていた。


ピアノを習っていた従姉とは、今でも時々音楽の話をするのだが、話していて凄いなと思うのは、楽譜も読めるし、絶対音感もあり、音楽理論的なことも解っているということだ。


故に、何となくピアノを弾くミュージシャンを見ると、無条件で「この人は音楽的な資質が高い」と感じてしまう。


ロックの世界で「ピアノ・マン」と言えば、そのものズバリの「PIANO MAN」というアルバムをリリースしたBilly Joelビリー・ジョエル〕、或いは、「DON'T SHOOT ME, I'M ONLY THE PIANO PLAYER」というアルバムをリリースしたElton Johnということになると思うのだが、筆者の世代にとって、この二人はリアルタイムでその登場を確認できたピアノ・マンではない。


では、筆者の世代にとって、リアルタイムでその登場を確認できたピアノ・マンが誰なのか言えば、それはBruce Hornsby〔ブルース・ホーンズビー〕であり、その象徴が今回取り上げたBRUCE HORNSBY & THE RANGE〔ブルース・ホーンズビー&ザ・レインジ〕の1stアルバム「THE WAY IT IS」なのである。


ジャジーでお洒落なサウンドでありながら、大ヒットした表題曲の"The Way It Is"には、失業や生活不安に苦しむ貧困層から当時の米国のレーガン政権に向けた一種の諦めとも言える悲痛なメッセージが込められている。


米国では、このような社会性の強い曲はヒットしないと言われているのだが、卓越したソングライティングと高度なピアノの演奏技術でBruce Hornsbyはその定説を覆したのである。