ブルースの世界で「3大」と言えば、B.B. King〔B.B.キング〕、Albert King〔アルバート・キング〕、Freddie King〔フレディ・キング〕から成る「3大キング」が真っ先に思う浮かぶだろう。
しかし、「盲目の3大ブルース・マン」といのものけっこう有名で、こちらはBlind Lemon Jefferson〔ブラインド・レモン・ジェファーソン〕、Blind Willie McTell〔ブラインド・ウィリー・マクテル〕、そして今回取り上げているBlind Blake〔ブラインド・ブレイク〕がそれにあたる。
いずれも19世紀生れの人物であり、戦前に活躍したブルース・マンだ。
一説によると、当時の黒人は貧しさ故、子供の頃に十分な栄養を摂取することができず、視力を失う人が少なくなかったという。
確かにこの時代はblind(盲目の)を名乗るブルース・マンは多いし、この説が事実ならあまりにも悲しい話だ。
視力を失うと触覚や聴覚が発達するというが、blindを名乗るブルース・マンにはギターの名手が多い。
特に今回取り上げているBlind Blakeの弾くギターは気品に溢れ美しさに満ちており、卓越したテクニックとセンスの持ち主である。
強弱を絶妙に使い分ける独特のシンコペーションが心地よく、1曲の中にギター1本で様々な表情を与えているため聴く者を全く飽きさせない。
紡ぎだされる音数が多く、一聴しただけでは(というか、二聴しても三聴しても)一人で演奏しているとはとても思えないのである。
もちろん、歌も歌うのだが、盲目の3大ブルース・マンと呼ばれている他の二人(Blind Lemon Jefferson、Blind Willie McTell)と比べると、シンガーとしての印象は薄く、ギタリストとしての印象が強い。
自分は歌わずに、他のミュージシャンのバックでギタリストとしてギターを演奏した録音も少なくないため、その点でもシンガーとしてよりギタリストとしての印象が強い。
今回取り上げた「THE COMPLETE RECORDINGS」はバッキングを担当した音源も含め、Blind Blakeが残した演奏を文字通りコンプリートしたアルバムだ。
あまりにもギタリストとしての印象が強い人なのでここに至るまでヴォーカルについては触れてこなかったが、実はブルースを歌うのに向いている渋い声の持ち主であることも最後に付け加えておく。