Steve Stevens〔スティーヴ・スティーヴンス〕は金のためにMichael Monroe〔マイケル・モンロー〕とのバンドJERUSALEM SLIMを脱退し、Vince Neil〔ヴィンス・ニール〕のソロ・アルバムに参加した、故に、JERUSALEM SLIMのアルバムは出来損ないの駄作である。
というのが今回取り上げたJERUSALEM SLIMの最初で最後のアルバム(というよりは、日本のレコード会社が半ば強引にリリースしたアルバム)の一般的な評価ではないだろうか?
確かに収録曲を増やすためにアルバムの後半2曲に、1曲目と7曲目のデモ版を収録しているあたりは無理やりな感じがしなくもない。
しかし、Steve Stevensはこのアルバムでしっかりと仕事をしているし、収録曲のクオリティも高い。
そもそも、Steve Stevensという人はこのアルバム以前も以後も、自分が参加した作品を必ず名盤にするギタリストである。
比較的最近読んだMichael Monroeのインタビューで、彼は未だにSteve Stevensのことを「Steveは金のためにプレイする」というような恨み言を言っているのを読んだのだが、はっきり言って、プロのミュージシャンなのだから金のためにプレイするのは当然だろう。
これはあくまでも筆者の推理であり、何の証拠もないことだが、Michael Monroeという人は一緒に仕事をし難い人なのではないだろうか?
Michael Monroeのインタビューはこれまで永年に渡り色々な雑誌で読んできたが、何とも言えないアクの強さや頑固な気質を感じてきた。
また、Michael Monroeのファンも彼の熱狂的な信者のような人が多い気がするので、彼のそんなところが余計と彼を好きにさせるのだろう。
Michael MonroeはこのJERUSALEM SLIMのことを黒歴史のような形で葬っているようだが、筆者はこのアルバムこそがHANOI ROCKS〔ハノイ・ロックス〕解散以降の彼の最高傑作だと思っている。
Michael Monroeという人は個性が強烈なため、彼と拮抗するプレイヤーが居ないと、大抵の場合は彼の独り相撲になりがちである。
HANOI ROCKS〔ハノイ・ロックス〕時代はAndy McCoy〔アンディ・マッコイ〕が居たので独り相撲にはならなかったが、このアルバムではSteve Stevensが見事にその役割を果たしている。
このアルバムは、「Michael Monroeが嫌っているから」という、よく分からない理由で聴かないというのであれば勿体ない作品なのである。