1990年代初期に勃発したグランジ/オルタナティヴ・ムーヴメントからは実に個性的な音楽を聴かせてくれるバンドが数多く登場した。
筆者はこのムーヴメントが勃発していた頃、「次はどんなバンドが登場すんのやろ」とワクワクしながら洋楽雑誌をめくりながら購入するCDを探したものである。
その中でも超弩級のビッグ・バンドとなると、NIRVANA〔ニルヴァーナ〕、PEARL JAM〔パール・ジャム〕、SOUNDGARDEN〔サウンドガーデン〕、ALICE IN CHAINS〔アリス・イン・チェインズ〕、THE SMASHING PUMPKINS〔ザ・スマッシング・パンプキンズ〕、STONE TEMPLE PILOTS〔ストーン・テンプル・パイロッツ〕の6バンドになるのではないだろうか?
もちろん、このムーヴメントからは他にも沢山の魅力的なバンドが登場しているが、存在感、セールス、後に与えた影響等、あらゆる面から考察した場合、上記の6バンドに落ち着くような気がする。
しかし、何故か、これらのバンドのフロントマンは、ろくな死に方をしない人が多い。
2020年2月現在までに、NIRVANAのKurt Cobain〔カート・コバーン〕は1994年に自殺、ALICE IN CHAINSのLayne Staley〔レイン・ステイリー〕は2002年にドラッグのオーバードーズで死亡(ALICE IN CHAINSはベーシストのMike Starr〔マイク・スター〕も2011年に死亡している)、STONE TEMPLE PILOTSのScott Weiland〔スコット・ウェイランド〕も2015年にドラッグのオーバードーズで死亡、そして、今回取り上げているSOUNDGARDENのChris Cornell〔クリス・コーネル〕も2017年に自殺してしまった。
いずれも素晴らしい音楽を届けてくれたミュージシャンなので残念で仕方がない。
今回取り上げているSOUNDGARDENの3rdアルバム「BADMOTORFINGER」を初めて聴いた時の衝撃は未だに忘れることが出来ない。
変幻自在のヴォーカル(Chris Cornellの声域は4オクターブに及ぶらしい)、耳にこびりつく印象的なギター・リフ、地を這うようなグルーヴを叩き出すベースとドラム、そして何よりこのバンドの特徴を決定付けているのはドロップDチューニングによる重低音サウンドだ。
多くのロック・リスナーがイメージするグランジ・ロックとは、この「BADMOTORFINGER」のような音なのではないだろうか?
SOUNDGARDENのアルバムは全て名盤揃いなのだが次作以降は収録曲が多すぎて少し散漫になる。
SOUNDGARDENの神髄を知るには、12曲で約58分というこの「BADMOTORFINGER」がベストなのである。