Rock'n'Roll Prisoner's Melancholy

好きな音楽についての四方山話

#0279) BADMOTORFINGER / SOUNDGARDEN 【1991年リリース】

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1990年代初期に勃発したグランジ/オルタナティヴ・ムーヴメントからは実に個性的な音楽を聴かせてくれるバンドが数多く登場した。


筆者はこのムーヴメントが勃発していた頃、「次はどんなバンドが登場すんのやろ」とワクワクしながら洋楽雑誌をめくりながら購入するCDを探したものである。


その中でも超弩級のビッグ・バンドとなると、NIRVANAニルヴァーナ〕、PEARL JAMパール・ジャム〕、SOUNDGARDENサウンドガーデン〕、ALICE IN CHAINS〔アリス・イン・チェインズ〕、THE SMASHING PUMPKINS〔ザ・スマッシング・パンプキンズ〕、STONE TEMPLE PILOTS〔ストーン・テンプル・パイロッツ〕の6バンドになるのではないだろうか?


もちろん、このムーヴメントからは他にも沢山の魅力的なバンドが登場しているが、存在感、セールス、後に与えた影響等、あらゆる面から考察した場合、上記の6バンドに落ち着くような気がする。


しかし、何故か、これらのバンドのフロントマンは、ろくな死に方をしない人が多い。


2020年2月現在までに、NIRVANAKurt Cobainカート・コバーン〕は1994年に自殺、ALICE IN CHAINSのLayne Staley〔レイン・ステイリー〕は2002年にドラッグのオーバードーズで死亡(ALICE IN CHAINSはベーシストのMike Starr〔マイク・スター〕も2011年に死亡している)、STONE TEMPLE PILOTSのScott Weiland〔スコット・ウェイランド〕も2015年にドラッグのオーバードーズで死亡、そして、今回取り上げているSOUNDGARDENChris Cornellクリス・コーネル〕も2017年に自殺してしまった。


いずれも素晴らしい音楽を届けてくれたミュージシャンなので残念で仕方がない。


今回取り上げているSOUNDGARDENの3rdアルバム「BADMOTORFINGER」を初めて聴いた時の衝撃は未だに忘れることが出来ない。


変幻自在のヴォーカル(Chris Cornellの声域は4オクターブに及ぶらしい)、耳にこびりつく印象的なギター・リフ、地を這うようなグルーヴを叩き出すベースとドラム、そして何よりこのバンドの特徴を決定付けているのはドロップDチューニングによる重低音サウンドだ。


多くのロック・リスナーがイメージするグランジ・ロックとは、この「BADMOTORFINGER」のような音なのではないだろうか?


SOUNDGARDENのアルバムは全て名盤揃いなのだが次作以降は収録曲が多すぎて少し散漫になる。


SOUNDGARDENの神髄を知るには、12曲で約58分というこの「BADMOTORFINGER」がベストなのである。

 

#0278) THE LEXICON OF LOVE / ABC 【1982年リリース】

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筆者は中学生になった頃(1980年代初期)から洋楽ロックを聴き始め、それを拗らせて現在(2020年)に至るのだが、そもそもどういう経緯で洋楽ロックを聴き始めたのかと言うと、それは同級生のお兄さんやお姉さんからの影響である。


例えばO君のお兄さんからはSCORPIONSスコーピオンズ〕、UFO〔ユー・エフ・オー〕、Michael Schenker〔マイケル・シェンカー〕、VAN HALENヴァン・ヘイレン〕等を教えてもらい、Eちゃんのお姉さんからはDURAN DURANデュラン・デュラン〕、KAJAGOOGOO〔カジャグーグー〕、HAIRCUT ONE HUNDRED〔ヘアカット・ワン・ハンドレッド〕、Bryan Adamsブライアン・アダムス〕等を教えてもらった。


このEちゃんのお姉さん(Nちゃんとする)は筆者が中1の時に高1だった。


彼女たちのご家庭は裕福で、Nちゃんは沢山のレコードを所有しており、容姿端麗で着ている洋服も高校生とは思えないほどお洒落でファッショナブルであり、筆者にとってはとても眩しい存在の女の子だった。


Nちゃんは音楽だけでなく、COMME des GARÇONS〔コム・デ・ギャルソン〕、arrston volaju〔アーストン・ボラージュ〕、Vivienne Westwoodヴィヴィアン・ウエストウッド〕、Paul Smithポール・スミス〕等のファッションにも精通していたので、彼女は筆者にとって音楽やファッション等、文化的側面の先生と言える存在だったのである(ただし、彼女から教えてもらったファッションに関しては、当時の筆者に手が出せるようなブランドは一つも無かったのだが)。


今回取り上げたABCの〔エービーシー〕の1stアルバム「THE LEXICON OF LOVE」もNちゃんからカセット・テープに録音してもらった1枚である。


ABCは1980年代初期の英国で興ったニュー・ロマンティック・ムーヴメントから出てきたバンドであり、"The Look Of Love"のヒットで有名だ。


この時代の英国のバンドのシンガーはボウイッシュかフェリーッシュに分類される人が多い(ボウイッシュとはDavid Bowieデヴィッド・ボウイ〕風、フェリーッシュとは、Bryan Ferry〔ブライアン・フェリー〕風という意味だ)。


THE PSYCHEDELIC FURS〔ザ・サイケデリック・ファーズ〕のRichard Butler〔リチャード・バトラー〕がボウイッシュの最右翼なら、ABCのMartin Fry〔マーティン・フライ〕はフェリーッシュの最右翼だろう。


このアルバムで聴けるABCの音楽性もBryan Ferry~ROXY MUSICロキシー・ミュージック〕の先鋭的すぎる部分を大衆に理解し易いようにコンパイルしており、そのセンスは実に見事である。

 

#0277) WILD HORSES / WILD HORSES 【1980年リリース】

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WILD HORSES〔ワイルド・ホーシズ〕というバンド名はTHE ROLLING STONESザ・ローリング・ストーンズ〕が1971年にリリースしたアルバム、「STICKY FINGERS」の収録曲である"Wild Horses"から取られているのだろうか?


WILD HORSESとは「野生の馬」という意味だと思うのだが、英国では諺や格言として特別な意味を持つ言葉なのだろうか?


その辺りのことは全く知らないのだが、とにかくWILD HORSESというバンド名を初めて聞いた時に、「えらいカッコえぇバンド名やな」と思ったことを今でも憶えている。


WILD HORSESは、IRON MAIDEN〔アイアン・メイデン〕、DEF LEPPARDデフ・レパード〕、GIRL〔ガール〕と共にNew Wave Of British Heavy Metal(以下、NWOBHM)の四天王と呼ばれていたらしい。


NWOBHMが盛り上がった時期は1979年頃から1982年頃なので、筆者が本格的に洋楽ロックを聴き始めた頃(1982年頃)に終わり迎えた英国のロック・ムーヴメントということになる。


上記の期間に若くて生きの良いヘヴィ・メタル・バンドが続々と登場したことにより、NWOBHMというムーヴメントになった訳だが、WILD HORSESをIRON MAIDEN、DEF LEPPARD、GIRLと同列に並べるのは少々無理があると筆者は感じている。


WILD HORSES の中心メンバーであるJimmy Bain〔ジミー・ベイン〕はRAINBOW〔レインボー〕のベーシスト、Brian Robertson〔ブライアン・ロバートソン〕はTHIN LIZZYシン・リジィ〕のギタリストとして、NWOBHM以前からキャリアを積んでいるミュージシャンである。


WILD HORSESの結成時期とNWOBHMが勃発した時期とが重なっただけであり、NWOBHM から登場した他のバンドのメンバーから見た場合、WILD HORSESのメンバーは大先輩なのである。


そして、WILD HORSESの音楽性は良い意味で新しさを全く感じさせない古式ゆかしいハード・ロックであり、今回取り上げている彼らの1stアルバム「WILD HORSES」は安心して聴けるブリティッシュハード・ロックの名盤だ。


「WILD HORSES」には、例えばIRON MAIDENの1stアルバム、「IRON MAIDEN」のような新時代のヘヴィ・メタルの到来を感じさせる新しさは皆無である(これも「良い意味」として書いている)。


NWOBHMはこれから新たにバンド活動を始めるWILD HORSESにとって追い風になったのかもしれないが、NWOBHMの四天王はIRON MAIDEN、DEF LEPPARD、GIRL、WILD HORSESではなく、IRON MAIDEN、DEF LEPPARD、GIRL、SAXON〔サクソン〕にしてもらった方が筆者にとっては納得できるのである。

 

#0276) STAND IN LINE / IMPELLITTERI 【1988年リリース】

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今回取り上げているIMPELLITTERIインペリテリ〕の1stアルバム「STAND IN LINE」は、筆者が学生時代(約30年前)にバイト先で知り合ったU君に教えてもらった1枚だ。


筆者とU君はお互いにロック・ファンということもあり、さほど時間をかけずに仲良くなれたのだが、筆者とU君とでは聴いていたロックの守備範囲が少々違っていた。


当時の筆者はGUNS N' ROSES〔ガンズ・アンド・ローゼズ〕のデビュー以降に数多く登場したラフなロックン・ロール・スタイルのメタルに入れ込んでいたのだが、U君はプログレッシヴ・メタルネオクラシカル・メタル等の技巧派メタルに詳しかった。


U君と知り合う前に、筆者が聴いていた技巧派メタルと言えばYngwie Malmsteenイングヴェイ・マルムスティーン〕くらいだったと思うのだが、U君からは先ずQUEENSRŸCHE〔クイーンズライク〕を教えてもらい、次に教えてもらったのがIMPELLITTERIだったように記憶している。


U君の家に遊びに行った時に、U君のお兄さんが撮り溜めていたメタル系アーティストのミュージック・ヴィデオを二人で見ていたのだが、U君が「こいつ、Yngwieより速いねん」と言った時に始まったのがIMPELLITTERIの"Stand in Line"だった。


「Yngwieより速い」と聞き、「おっ、それは面白そやな」と興味が掻き立てられ、固唾を飲んでミュージック・ヴィデオを見ていたのだが、Chris Impellitteri〔クリス・インペリテリ〕のギター・ソロが始まった瞬間、筆者は度肝を抜かれることとなる。


当然のことながらChris Impellitteriのギター・ソロは速かったのだが、それは単に「速い」という一言で済ませられるレベルではなく、それはもう人間の限界を超えているように見えた(聴こえた)のである。


Yngwie Malmsteenの「TRILOGY」をレンタル・レコード店で借りて聴いた時も度肝を抜かれる速さを感じたのだが、Chris Impellitteriは先にミュージック・ヴィデオを見たということもあり、筆者にとってそのインパクトはYngwie Malmsteenよりも大きかった。


それに加えてGraham Bonnet〔グラハム・ボネット〕という、かつてRitchie Blackmore〔リッチー・ブラックモア〕が率いたRAINBOW〔レインボー〕の2代目ヴォーカリストが歌っているということも筆者にとっては大きな魅力だった。


当然のことながら、その日はU君が所有する「STAND IN LINE」のCDをカセット・テープに録音してもらい、帰宅の途についたのである。

 

#0275) BURNING TREE / BURNING TREE 【1990年リリース】

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昨年、つまり、西暦2019年、日本は元号改元し平成から令和となった。


筆者は昭和生まれなので人生で三つ目の元号を迎えたわけである。


音楽鑑賞を趣味としている者にとって、昭和はレコードの時代、平成はそのレコードが廃れ急速にCDの時代となり、令和は既にCDは廃れ音楽配信サービスの時代となっている。


筆者の音楽の聴き方も完全に音楽配信サービスに依存する状態になった。


かつては1ヶ月に3~4枚ほどCDを買っていたが、今ではCDを殆ど買わなくなり、せいぜい1年に1~2枚くらいである。


物理的な録音媒体が手元に残らない音楽配信サービスに対し、最初は違和感を覚えていたのだが、実際に利用してみると、その手軽さには抗うことができず、今では完全に音楽配信サービスに頼り切った音楽鑑賞をしている毎日である。


思えばレコードが廃れ、CDが普及する時も、暫くはレコードに拘りを持っていたものの、一度CDの手軽さを知ってからは瞬く間にCD派に変わってしまった過去がある。


事程左様に人は易きに流れるものなのである。


音楽配信サービスといっても色々あるわけだが、筆者はAmazon Music Unlimitedを利用している。


Amazon Music Unlimitedを利用していて驚くのは、「こんなんまであんねや!」と思うほどマイナーなものもあれば、「なんでこれがないねん!」と思うほどメジャーなものがない場合もある。


今回取り上げたBURNING TREEの最初で最後のアルバム「BURNING TREE」は「こんなんまであんねや!」と思った方の作品である。


このアルバムは筆者が1990年のお気に入りアルバム・リストを作るなら確実に上位に入る作品であり、CREAM〔クリーム〕やTHE JIMI HENDRIX EXPERIENCE〔ザ・ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンス〕の流れを汲む3ピース・ブルース・ロック・バンドによる極上の演奏が楽しめる1枚となっている。


しかし、これだけ質の高いアルバムを制作していたにも関わらずBURNING TREEは商業的な成功を得ることが出来なかった。


ヴォーカルとギターを担当していたMarc Ford〔マーク・フォード〕はTHE BLACK CROWES〔ザ・ブラック・クロウズ〕に加入することとなり、残念ながらバンドは早々に解散することとなる。