Rock'n'Roll Prisoner's Melancholy

好きな音楽についての四方山話

#0311) JACK O'BYTE BLUESY / Tyla's DOGS D'AMOUR 【2019年リリース】

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当ブログの#0001ではTHE DOGS D'AMOUR〔ザ・ドッグス・ダムール〕の1stアルバム「IN THE DYNAMITE JET SALOON」を取り上げている。


その理由は、筆者の最も好きなバンドがTHE DOGS D'AMOURだからであり、同バンドのシンガー&ギタリストのTyla〔タイラ〕が筆者にとってHANOI ROCKSのAndy McCoy〔アンディ・マッコイ〕と双璧を成すリアルタイムで(つまり、1980年代に)出会った最高のソングライターだからだ。


リアルタイムではなく、ルーツを掘り起こすことによって好きになったバンドやソングライターも沢山いるのだが、誰しもリアルタイムで出会えたバンドやソングライターには思い入れが深くなるのではないだろうか。


今回は、筆者にとって思い入れの深いTylaが2019年にTyla's DOGS D'AMOUR〔タイラズ・ドッグス・ダムール〕名義でリリースしたアルバム「JACK O'BYTE BLUESY」を取り上げている。


Tylaは創作意欲旺盛なソングライターなのでリリースのペースが速すぎて、1年に2~3枚のアルバムをリリースすることもあり、追いかけるのしんどくなることもある(これは筆者にとってのもう一人の最高のソングライターであるAndy McCoyとは正反対だ)。


正直なところ、実態の伴わないTHE DOGS D'AMOUR名義で(実際にはTylaのソロとして)リリースした「WHEN BASTARDS GO TO HELL」(2004年)と「LET SLEEPING DOGS...」(2005年)でやっていたゴシックやインダストリアルに接近した音を聴いた時に「もう、そろそろこの辺りでTylaを追いかけるのは止めようかな」と思ったこともあった。


筆者はゴシックやインダストリアルも大好きなのだが、筆者を含め多くのTylaのファンが彼に求める音はロックン・ロールなのだ。


しかし、Tylaは2006年頃からロックン・ロールに再び舞い戻り、TYLA & THE DOGS〔タイラ&ザ・ドッグス〕名義でリリースした「BLOODY HELL FIRE」(2009年)で完全に復活した。


そこにはTHE DOGS D'AMOUR時代の哀愁漂うロックン・ロール、そして歳相応の枯れたブルースの味わいまでもが加味された音があり、Tylaのファンが彼に求めるもの全てが揃っていたのだ。


今回取り上げている「JACK O'BYTE BLUESY」は、Tylaが「BLOODY HELL FIRE」以降に創作を続けてきた音を最もナチュラルな形で具体化したアルバムだ。


何しろリリースの多い人なので、時々「あれ?」と思う作品があるのも事実なのだが、Tylaは、きっと、この先もこのアルバムで聴かせてくれる音を作り続けてくれそうに思える、そんなアルバムなのである。

 

#0310) PHANTOM BLUE / PHANTOM BLUE 【1989年リリース】

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ここ数年の間、ヘヴィ・メタル専門誌のBURRN!を買う機会が増えた。


1980年代には毎月買っていた雑誌なのだが、1990年代中頃から買わなくなり、2000年代に入ってから再び時々買うようになり、この3年くらいは毎月買っている(現在は2020年である)。


最近のBURRN!を読んでいて気付くのは、メンバー全員が女性のヘヴィ・メタル・バンドが日本国内にけっこういるということだ。


筆者は女性ミュージシャン好きなので、この辺りのバンドのアルバムも聴いてみたいのだが、今のところ他に聴きたいものが多すぎて手を出せていないのが現状だ。


日本国内にはメンバー全員が女性のヘヴィ・メタル・バンドが増えているようだが、欧米ではシンガーのみ女性のヘヴィ・メタル・バンドはけっこういるようだが、メンバー全員が女性のヘヴィ・メタル・バンドとなると相変わらず少ないようだ。


1980年代はメタル・バブルの時代だったがメンバー全員が女性のヘヴィ・メタル・バンドは殆どいなかった。


今、パッと思いつくのはGIRLSCHOOL〔ガールスクール〕、VIXEN〔ヴィクセン〕、そして、PHANTOM BLUE〔ファントム・ブルー〕くらいだろうか。


PHANTOM BLUEはVIXENほどの知名度はないバンドだが、このバンドはかなりの実力派バンドだ。


米国(ロサンゼルス)出身のバンドだが、音楽性は切れ味の鋭い欧州風のヘヴィ・メタルであり、今回取り上げている1stアルバム「PHANTOM BLUE」は1980年代におけるヘヴィ・メタルの名盤だと筆者は思っている。


楽器を担当しているメンバー4人の演奏技術も高いのだが、シンガーGigi Hangach〔ジジ・ハンガック〕の歌声は一瞬聴いただけでは女性とは気づかないほどのワイルドさがある。


ヘヴィ・メタル・バンドは男じゃないと...」と思っている人でもPHANTOM BLUEは十分にいけるバンドであり、同じ時代の米国でもこれほど正統派のヘヴィ・メタルをやっている男性バンドは少なかった。


当時、日本盤もリリースされたのだが、VIXENを意識してのことか、日本盤は下記のアルバム・カヴァーに変えられていた。

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しかし、このアルバム・カヴァーではVIXEN風のゴージャスなポップ・メタルを期待して買った人は「メタルすぎるやん!」と感じてしまったのではないだろうか?

 

#0309) DIVA / MY SISTER'S MACHINE 【1992年リリース】

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今回取り上げているMY SISTER'S MACHINE〔マイ・シスターズ・マシーン〕は米国ワシントン州シアトル出身のバンドであり、1stアルバム「DIVA」をリリースしたのは1992年だ。


1992年と言えば、NIRVANAニルヴァーナ〕、PEARL JAMパール・ジャム〕、SOUNDGARDENサウンドガーデン〕、ALICE IN CHAINS〔アリス・イン・チェインズ〕というシアトル・グランジ四天王の人気がメジャー・シーンで盛り上がっていた時期だ。


更に、MUDHONEY〔マッドハニー〕、SCREAMING TREES〔スクリーミング・トゥリーズ〕といったシアトル・アンダーグランドの大物までもがメジャー・シーンに進出していた時期でもある。


MY SISTER'S MACHINEの1stアルバム「DIVA」はこのような時期にリリースされたアルバムであり、遅れてきた大物という感じもあったが、また出てきたなという感じもあった。


そんな食傷気味の時期に聴いたアルバムだったのだが、最初の2曲を聴き終えた時、「これはシアトル・グランジ四天王に匹敵する凄いバンドになる」と筆者は予測した。


結果としては全くそうならなかったわけだが、筆者は未だにこのアルバムのことをシアトル・グランジ屈指の名盤だと思っている。


シアトル・グランジの中ではALICE IN CHAINSが最もヘヴィ・メタルの要素が強いバンドだと言われているが、MY SISTER'S MACHINEの音楽性はALICE IN CHAINSよりも更にヘヴィ・メタルの要素が強い。


ちなみにMY SISTER'S MACHINEのシンガーNick Pollock〔ニック・ポロック〕は、ALICE IN CHAINSのシンガーLayne Staley〔レイン・ステイリー〕とALICE N' CHAINSというバンドをやっていた人物だ(INではなくN’であり、紛らわしいのだがALICE IN CHAINSとALICE N' CHAINSは違うバンドだ)。


MY SISTER'S MACHINEの音楽性はALICE IN CHAINSよりもSOUNDGARDENの方に近く、SOUNDGARDENヘヴィ・メタルの要素を追加して拡張させたような感じと言えば伝わるのだろうか。


当時の筆者のような、1980年代に興ったメタル・バブルにどっぷりと嵌っていたロック・リスナーが最も受け入れやすいグランジであり、逆に言うと、これがグランジと呼べるギリギリのラインなのではないだろうか。


全体的に完成度の高いアルバムだが、特に1曲目"Hands and Feet"から2曲目"Pain"へのシームレスな流れが素晴らしい。


あと1年早くこのアルバムがリリースされていたらグランジ・シーンの勢力図が変わっていた可能性も十分に考えられるのである。

 

#0308) ECHO & THE BUNNYMEN / ECHO & THE BUNNYMEN 【1987年リリース】

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所謂ポストパンクやニュー・ウェイヴというジャンルにおいて、ECHO & THE BUNNYMEN〔エコー&ザ・バニーメン〕の現在での評価とは如何ほどのものなのだろう?


彼らが最も盛んに活動していた1980年代前半と、現在とでは、その評価に大きな差があるのではないだろうか?


同じ時代に人気を得ていたTHE CUREザ・キュアー〕やNEW ORDERニュー・オーダー〕ほどの評価をECHO & THE BUNNYMENは得ていないような気がする。


その原因は、たぶん、バンドの顔であるシンガーのIan McCulloch〔イアン・マッカロク〕が中途半端なタイミングでバンドを脱退し、尻切れトンボのような感じで急激に勢いを失速させたからではないだろうか?


ドラマーのPete de Freitas〔ピート・デ・フレイタス〕がバイク事故により27歳という若さで亡くなってしまったことも、このバンドに暗い影を落としている。


筆者にとってのECHO & THE BUNNYMENはどのような存在なのかと言うと、THE CURENEW ORDERよりは聴いていたが、THE PSYCHEDELIC FURS〔ザ・サイケデリック・ファーズ〕やSIMPLE MINDS〔シンプル・マインズ〕ほどは聴いていないバンドだ。


ECHO & THE BUNNYMENは最高傑作となるアルバムを選ぶのが難しいバンドでもある。


それでもあえて選ぶなら2ndアルバムの「HEAVEN UP HERE」か3rdアルバムの「PORCUPINE」あたりが妥当なのだろう。


少なくとも今回取り上げている5thアルバムの「ECHO & THE BUNNYMEN」ではないはずだ。


しかし、筆者が個人的に彼らの最高傑作を選ぶなら迷うことなく「ECHO & THE BUNNYMEN」を選ぶ。


何故なら、このアルバムが彼らのアルバムの中で最も音楽的であり、安心して聴けるアルバムだからだ。


前作となる4thアルバム「OCEAN RAIN」からその傾向はあったが、この「ECHO & THE BUNNYMEN」で彼らの音楽的才能が完全に開花した。


正直なところ、初期の彼らのアルバム(1st~3rd)にはヒリヒリとした緊張感が有り過ぎて、アルバム1枚を丸ごと聴き続けるには少々しんどい部分がある。


ECHO & THE BUNNYMENを今から聴いてみたいという人には、この5thアルバム「ECHO & THE BUNNYMEN」から1stアルバム「CROCODILES」に遡りながら聴くことをお薦めしたい。

 

#0307) FEEL THE SHAKE / JETBOY 【1988年リリース】

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JETBOY〔ジェットボーイ〕というバンドの存在を知った切っ掛けは、かつて刊行されていた洋楽雑誌のMUSIC LIFEだ。


時期的には、たぶん1987年で、確か「今、L.A.のロックン・ロール・バンドが熱い」といった内容の記事だったと思う。


その記事には「1970年代に隆盛を極めたAEROSMITHエアロスミス〕やKISS〔キッス〕が1980年代に入り一時的に沈みかけたものの再浮上の兆しがあり、そんなAEROSMITHやKISSに影響を受けた若い世代のロックン・ロール・バンドがMÖTLEY CRÜE〔モトリー・クルー〕やRATT〔ラット〕の次の波として続々とL.A.から登場している」といった文章が書かれていた。


その記事の中で写真付きで紹介されていたのがGUNS N' ROSES〔ガンズ・アンド・ローゼズ〕、FASTER PUSSYCAT〔ファスター・プッシーキャット〕、L.A. GUNS〔L.A.ガンズ〕、BRUNETTE〔ブルネット〕、そして、JETBOYだった(ただし、JETBOYはL.A.ではなくサンフランシスコ出身だ)。


この中でGUNS N' ROSESは言うまでもなく1980年代後期を代表するスーパースターとなり、FASTER PUSSYCATとL.A. GUNSもある程度の人気を得ていた。


BRUNETTEはデビューすることなく、後に中心メンバーが元JOURNEY〔ジャーニー〕のギタリストNeal Schon〔ニール・ショーン〕と合流してHARDLINE〔ハードライン〕に発展した。


そして、JETBOYは今回取り上げている1stアルバム「FEEL THE SHAKE」のリリース直前に所属レーベルと何らかのゴタゴタがあり、紆余曲折して漸くリリースに漕ぎ着けたような記憶があるが古い記憶なので定かではない。


このバンド、かなり普通のグラム・メタル系ロックン・ロール・バンドだ。


バンド名のJETBOYはNEW YORK DOLLSニューヨーク・ドールズ〕の曲から付けられているはずだがNEW YORK DOLLSっぽさは全くない。


ベーシストが元HANOI ROCKSハノイ・ロックス〕のSami Yaffa〔サミ・ヤッファ〕だがHANOI ROCKSっぽさは全くない。


シンガーは見事なモヒカンだがハードコア・パンクっぽさは全くない。


若干AC/DC〔エーシー・ディーシー〕に似ているような気もするがAC/DCの鋭い切れ味は無い。


しかし、このアルバム収録の"Hometown Blues"のようなフェイクなブルースを聴いていると、どうにも憎めなくなり、筆者にとっては思い出深く記憶に残り続けているバンドなのである。