筆者は音楽を聴くことを趣味の一つとしているが、その割には聴く音楽に関する嗜好というものが殆ど無い。
聴く音楽の中心はロックだが、ロックと言ってもロックン・ロール、ブルース・ロック、ハード・ロック、ヘヴィ・メタル、パンク、インディー・ロック、グランジ、オルタナティヴ・ロック等々、様々なサブ・ジャンルがあり、列挙し始めるとキリが無くなるのだが、このジャンルは聴くが、このジャンルは聴かないというようなことは無い。
ロック以外でも、クラシック、ジャズ、ブルース、R&B、ファンク、カントリー、ブルーグラス、テクノ、エレクトロニカ、ヒップホップ、歌謡曲、アイドル・ソング等もロックほどではないが比較的好んで聴いている。
聴く音楽に関する嗜好的なものがあるとするなら西洋音楽、或いは、その影響下にある音楽ということになるのだろう。
とにかく「音楽は無節操に聴きまくる」ということが筆者の「嗜好」なのだが、歳を取るにつれてブラック・ミュージックを聴く頻度が上がってきているような気がする。
今回取り上げているKeziah Jones〔キザイア・ジョーンズ〕はナイジェリア出身のギタリスト/シンガー・ソングライターであり、自らが編み出したブルースとファンクを融合させたブルーファンクを標榜するミュージシャンだ。
2020年7月現在におけるKeziah Jonesの最新アルバムは2013年にリリースされた「CAPTAIN RUGGED」でありこれも素晴らしいアルバムなのだが、この人を取り上げるにあたり、どうしても選びたくなるのは1992年にリリースされた1stアルバム「BLUFUNK IS A FACT」なのである。
しばしば「衝撃のデビュー・アルバム」という言葉が使わることがあるが、この「BLUFUNK IS A FACT」こそは、まさに「衝撃のデビュー・アルバム」と呼ぶに相応しい一枚なのである。
多少なりともギターをかじったことのある人がこのアルバムを聴いたときは間違いなく度肝を抜かれたはずである。
筆者も、その躍動感溢れるパーカッシブなギターを聴いた時は「どうやって弾いてるの?」と思ったものである。
Keziah Jones自身はブルースとファンクを融合させたと言っているが、彼の音楽から聴こえてくる要素はとてもじゃないがその二つだけはなく、これぞまさにジャンルを超越した1990年代におけるソウル・ミュージックの金字塔と呼べるアルバムなのではないだろうか。