Rock'n'Roll Prisoner's Melancholy

好きな音楽についての四方山話

#0333) BLUFUNK IS A FACT / Keziah Jones 【1992年リリース】

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筆者は音楽を聴くことを趣味の一つとしているが、その割には聴く音楽に関する嗜好というものが殆ど無い。


聴く音楽の中心はロックだが、ロックと言ってもロックン・ロール、ブルース・ロック、ハード・ロックヘヴィ・メタル、パンク、インディー・ロック、グランジオルタナティヴ・ロック等々、様々なサブ・ジャンルがあり、列挙し始めるとキリが無くなるのだが、このジャンルは聴くが、このジャンルは聴かないというようなことは無い。


ロック以外でも、クラシック、ジャズ、ブルース、R&B、ファンク、カントリー、ブルーグラス、テクノ、エレクトロニカ、ヒップホップ、歌謡曲、アイドル・ソング等もロックほどではないが比較的好んで聴いている。


聴く音楽に関する嗜好的なものがあるとするなら西洋音楽、或いは、その影響下にある音楽ということになるのだろう。


とにかく「音楽は無節操に聴きまくる」ということが筆者の「嗜好」なのだが、歳を取るにつれてブラック・ミュージックを聴く頻度が上がってきているような気がする。


今回取り上げているKeziah Jones〔キザイア・ジョーンズ〕はナイジェリア出身のギタリスト/シンガー・ソングライターであり、自らが編み出したブルースとファンクを融合させたブルーファンクを標榜するミュージシャンだ。


2020年7月現在におけるKeziah Jonesの最新アルバムは2013年にリリースされた「CAPTAIN RUGGED」でありこれも素晴らしいアルバムなのだが、この人を取り上げるにあたり、どうしても選びたくなるのは1992年にリリースされた1stアルバム「BLUFUNK IS A FACT」なのである。


しばしば「衝撃のデビュー・アルバム」という言葉が使わることがあるが、この「BLUFUNK IS A FACT」こそは、まさに「衝撃のデビュー・アルバム」と呼ぶに相応しい一枚なのである。


多少なりともギターをかじったことのある人がこのアルバムを聴いたときは間違いなく度肝を抜かれたはずである。


筆者も、その躍動感溢れるパーカッシブなギターを聴いた時は「どうやって弾いてるの?」と思ったものである。


Keziah Jones自身はブルースとファンクを融合させたと言っているが、彼の音楽から聴こえてくる要素はとてもじゃないがその二つだけはなく、これぞまさにジャンルを超越した1990年代におけるソウル・ミュージックの金字塔と呼べるアルバムなのではないだろうか。

 

#0332) ONCE AROUND THE WORLD / IT BITES 【1988年リリース】

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英国におけるプログレッシヴ・ロックの最盛期は間違いなく1970年代だろう。


所謂5大バンドと言われているPINK FLOYDピンク・フロイド〕、KING CRIMSONキング・クリムゾン〕、YES〔イエス〕、GENESISジェネシス〕、Emerson, Lake & Palmer〔エマーソン・レイク・アンド&パーマー〕が特に有名だ。


筆者は1980年代からロックを聴き始めたので上記の5大バンドは当時の筆者にとって、10年くらい前に活躍していたロック界における大御所中の大御所という存在だった。


それでは、1980年代にはプログレッシヴ・ロックは完全に過去の音楽になっていたのか言うと実はそうではない。


1980年代にはMARILLION〔マリリオン〕、IQ〔アイキュー〕、PENDRAGON〔ペンドラゴン〕、そして、今回取り上げているIT BITES〔イット・バイツ〕等が登場し、英国ではそれなりの盛り上がりを見せていたと記憶している。


今回はIT BITESの2ndアルバム「ONCE AROUND THE WORLD」を取り上げているが、このアルバムは1980年代におけるプログレッシヴ・ロックの大名盤だ。


アルバム・カヴァー以外には全く付け入る隙を与えない、一つ一つの音の細部まで研ぎ澄まされた完璧なアルバムだ。


これだけ凄いアルバムでありながら、メンバーの写真が使われているつまらないアルバム・カヴァーは実に勿体ない。


もっとアルバムの内容にあった絵画や写真をカヴァーにしてほしかったものである。


IT BITESは1980年代に登場した他のプログレ・バンドと比べると少し趣を異にしている。


MARILLION、IQ、PENDRAGONはPomp Rock〔ポンプ・ロック〕とも呼ばれ、彼らの音はその名のとおり「華麗」や「荘厳」という言葉が似合っており、1970年代的なエッセンスが強い。


それに対し、IT BITESの音は1970年代のプログレッシヴ・ロックからの影響を取り入れながらも、1980年代的なポップ・ミュージックのモダンなセンスを持っていたのである。


曲によっては、ヒット・チャートで活躍するソロ・シンガーに提供して歌わせたとしても違和感の無いキャッチーなものさえある。


アルバムのラストを飾る曲、"Once Around the World"は14分を超える大作なのだが「終わるのが速すぎる」、「もっと聴いていたい」と思えるほど長さを感じさせないポップな曲なのである。

 

#0331) FAVOURITE ENEMY / TRASHMONKEYS 【2006年リリース】

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今回取り上げるTRASHMONKEYS〔トラッシュモンキーズ〕はドイツのガレージ・ロック・バンドだ。


筆者は1980年代初期からロックを聴き始めたので、当時よく聴いていたドイツのバンドと言えばSCORPIONSスコーピオンズ〕、ACCEPT〔アクセプト〕、HELLOWEEN〔ハロウィン〕なのである。


その後はSODOM〔ソドム〕、KREATOR〔クリエイター〕、DESTRUCTION〔デストラクション〕等を好んで聴いてきた。


筆者の中におけるドイツとは、上記のとおりメタルのイメージが強い国なので今回取り上げているTRASHMONKEYSの4thアルバム「FAVOURITE ENEMY」を聴いた時は驚いた記憶がある。


その理由は簡単で、TRASHMONKEYSのようなガレージ・ロック・バンドが自分の中のドイツのイメージと全く結びつかなかったからだ。


TRASHMONKEYSは1998年に1stアルバムをリリースしているので、THE STROKESザ・ストロークス〕やTHE WHITE STRIPES〔ザ・ホワイト・ストライプス〕の登場によって2000年頃から盛り上がりを見せ始めたガレージ・ロック・リヴァイヴァルのムーヴメントと多少リンクしてる部分もある。


しかし、今回取り上げている「FAVOURITE ENEMY」は2006年のリリースであり、日本盤もリリースされているはずなのだが、ガレージ・ロック・リヴァイヴァルのムーヴメントには上手い具合にリンクしきれなかった感もある。


しかしながこのアルバム、個人的にはTHE HIVES〔ザ・ハイヴス〕の「YOUR NEW FAVOURITE BAND」、TOKYO SEX DESTRUCTIONの「LE RED SOUL COMUNNITTE」と並ぶ、ガレージ・ロック・リヴァイヴァルの愛聴盤である。


実のところ、ガレージ・ロック・リヴァイヴァルの頃の筆者はBACKYARD BABIES〔バックヤード・ベイビーズ〕、THE HELLACOPTERS〔ザ・ヘラコプターズ〕、HARDCORE SUPERSTAR〔ハードコア・スーパースター〕、BUCKCHERRY〔バックチェリー〕、BULLETS AND OCTANE〔ブレッツ・アンド・オクタン〕等バッド・ボーイズ・ロック・リヴァイヴァル(というムーヴメントがあるか否かは不明だが)を好んで聴いていたので、THE STROKESはちゃんと聴けていないし、THE WHITE STRIPESは現在も未聴である。


そんな筆者がTRASHMONKEYSには何故か惹きつけられるものがあり、購入したくなったのである。


この「FAVOURITE ENEMY」というアルバムはガレージ・ロックと呼ぶにはかなりメロディアスであり、聴いていると「これはガレージ・ロックではないのかも」という気がしてくる。


しかしこのバンド、何度聴いてもドイツのイメージと結びつかない不思議なバンドである。

 

#0330.5) Singles: Original Motion Picture Soundtrack / various artists 【1992年リリース】

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今回は番外編として1992年に米国で制作された映画『シングルス』(原題:Singles)のサウンドトラック・アルバム「Singles: Original Motion Picture Soundtrack」を取り上げてみる。


サウンドトラック・アルバムを取り上げておいて、こんなことを言うのは気が引けるのだが、筆者は映画への関心が殆ど無い人間だ。


ロックを聴いている人には映画好きの人が多いような気がするが、筆者はむしろ映画も含めてお芝居全般が苦手な方である。


2020年7月現在で満50歳の筆者だが、人生で映画館に行った回数は、数えたわけではないが、たぶん20回に満たないのではないだろうか?


しかも、自分で「この映画が観たい」と思って映画館に行ったことは一度もなく、全てはその映画が観たいと言う連れ(殆どはその時付き合っていた彼女)のお供である。


そして、映画が始まると5~10分くらいで寝てしまうのである。


マトリックス』に至っては本編が始まって30秒くらいで寝てしまった。


最後まで観続けることができた映画は高校生の時に一つ年上の彼女と観に行った『ビー・バップ・ハイスクール』だけだと思う。


何故、映画が苦手なのかと言うと、これは映画好きの方からお叱りを受けると思うのだが、筆者にとって映画というものがストーリーではなく、「これは脚本家の書いた台詞を役者が読んでいるんだな」という観方をしてしまい、全く感情移入ができないのだ。


全くもって筆者は感性の鈍い人間なのである。


ちなみに、お芝居っぽい要素が入っているもの全てがダメなのかというとそうでもなく、落語は三度の飯よりも好きであり、『地獄八景亡者戯』のような1時間を超える大ネタも寝ることなく最後まで観続ける(聴き続ける)ことができる。


話しが完全に脱線してしまっているが、今回取り上げてる「Singles: Original Motion Picture Soundtrack」には、ALICE IN CHAINS〔アリス・イン・チェインズ〕、PEARL JAMパール・ジャム〕、MOTHER LOVE BONE〔マザー・ラヴ・ボーン〕、SOUNDGARDENサウンドガーデン〕、MUDHONEY〔マッドハニー〕、SCREAMING TREES〔スクリーミング・トゥリーズ〕、THE SMASHING PUMPKINS〔ザ・スマッシング・パンプキンズ〕といったグランジの大御所アーティストの曲が収録されている。


「最近NIRVANAニルヴァーナ〕を聴いて好きになったんだけど、NIRVANA以外のグランジ系アーティストも聴いてみたい」という人が新たなお気に入りアーティストを見つけるには非常に優れたアルバムなのである。


シアトルを舞台にした映画なのでシアトル出身のJimi Hendrixジミ・ヘンドリックス〕やHEART〔ハート〕(THE LOVEMONGERS〔ザ・ラヴモンガーズ〕名義)の曲が収録されているのも嬉しい。


そして、筆者にとって何より嬉しいのは元THE REPLACEMENTS〔ザ・リプレイスメンツ〕のPaul Westerberg〔ポール・ウェスターバーグ〕がソロとして最初にリリースした"Dyslexic Heart"と"Waiting for Somebody"の2曲が収録されていることだ。


少々乱暴に言い切ってしまうなら、筆者にとってのこのサウンドトラック・アルバムはPaul Westerbergの2曲を聴くためのアルバムなのである。


ちなみに、このサウンドトラック・アルバムの曲が使われている映画『シングルス』は未だに観たことがなく、この先もたぶん観ないような気がする。

 

#0330) ARULAR / M.I.A. 【2005年リリース】

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筆者は男なので女性アーティストのCDやレコードを買うにあたり、その女性アーティストが自分の好みのルックスか否かが買う買わないの基準になることがある。


「それって全く音楽と関係ない基準やん」と突っ込まれるかもしれないが、所詮男なんてその程度のものなのではないだろうか?


前回取り上げたTHE SMASHING PUMPKINS〔ザ・スマッシング・パンプキンズ〕がデビューした時にCDを買う気になったのはベーシストのD'arcy Wretzky〔ダーシー・レッキー〕が美人だったからだ。


これもまた「お前みたいな不純な動機でCDを買う奴にロックを聴く資格も語る資格もない」と突っ込まれるかもしれないが、所詮男なんてその程度のものなのである。


インターネットを使って簡単に試聴できなかった時代には特にその傾向が強かった。


女子だって音楽性よりは、とにかくそのアーティストの顔面の良し悪しが聴く聴かないの1次オーディションという子が殆どだった。


今回取り上げているM.I.A. 〔エム・アイ・エイ〕の1stアルバム「ARULAR」を買った動機も、洋楽雑誌に載っていた彼女の容姿が可愛かったからに他ならない。


M.I.A.は英国出身の褐色系有色人種だが、アフリカ系ではなく、タミル系スリランカ人であり、アジア風のエキゾチックな容姿に当時の筆者はガツンとやられてしまったわけである。


改めて冷静に振り返ってみると、アイドルの追っかけをやっているオッサンと何の違いもないことに気付かされ、「自分も見事なオッサンになったものだ」と感慨深く思う。


しかし、今回取り上げているM.I.A.の「ARULAR」というアルバムは、M.I.A.の可愛らしい容姿からは想像がつかないのだが、驚くほどキャッチーではないのである。


こういうのはエクスペリメンタル・ヒップ・ホップとでもいうのだろうか?


1stアルバムならもう少しキャッチーにしてもいいと思うのだが、この人は全く譲歩する気が無いかなりの武闘派である。


容姿に惹かれ、鼻の下を伸ばして接近してみたものの、下心を見破られてピシャリとやられた感じなのである。


このキャッチーではないアルバムもM.I.A.への興味で聴き続けることにより、今では大切な愛聴盤になっているから不思議なものである。