Rock'n'Roll Prisoner's Melancholy

好きな音楽についての四方山話

#0345) PRIDE & GLORY / PRIDE & GLORY 【1994年リリース】

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Ozzy Osbourneオジー・オズボーン〕は凄いギタリストを見つけ出す名人だ。


BLACK SABBATHブラック・サバス〕を脱退し、ソロ・アーティストとしての活動を開始した時にRandy Rhoadsランディ・ローズ〕という天才を見つけ出し、そのRandy Rhoadsを失った後には直ぐにJake E. Lee〔ジェイク・E・リー〕という天才を見つけ出した。


そのJake E. Leeを解雇した後、「流石に3人目を見つけるのは難しいのでは?」と思っていたところ、今度はZakk Wyldeザック・ワイルド〕という天才を見つけ出した。


ちなみに、凄いヴォーカリストを見つけ出す天才はRitchie Blackmore〔リッチー・ブラックモア〕なのだが、それはまた別の機会に書いてみたいと思う。


今回取り上げているPRIDE & GLORY〔プライド&グローリー〕はZakk Wyldeが結成したサザン・ロック・バンドであり、セルフ・タイトルのデビュー・アルバムを1枚だけリリースしている。


筆者は1969年生れなので、THE ALLMAN BROTHERS BAND〔ジ・オールマン・ブラザーズ・バンド〕やLYNYRD SKYNYRDレーナード・スキナード〕といったオリジナルのサザン・ロックは後追いで聴いた。


筆者が初めてリアルタイムで聴いたサザン・ロックは1980年代中期に登場したTHE GEORGIA SATELLITES〔ザ・ジョージア・サテライツ〕であり、その次が1990年代初頭に登場したTHE BLACK CROWES〔ザ・ブラック・クロウズ〕である。


しかし、THE GEORGIA SATELLITESやTHE BLACK CROWESは、米国南部の音楽に影響を受けたTHE ROLLING STONESザ・ローリング・ストーンズ〕やFACES〔フェイセズ〕といった英国のバンドからの影響が強い米国のバンドである。


そのまんま米国南部を丸出しにした米国のバンドとなると、筆者が初めて聴いたサザン・ロックはPRIDE & GLORYのような気がする。


PRIDE & GLORYの曲は強烈な男臭さがあり、「男のロマン」という言葉がとてもよく似合う。


男のロマン」という言葉は、女の人からすると、子供じみていたり、或いは、アホっぽく感じたりするのだろうか。


しかし、大抵の男とは「男のロマン」に言いようのない憧れを抱くものなのだ。


この「PRIDE & GLORY」というアルバムを聴いていると、行ったこともないのに米国南部の情景が目に浮かび、「男のロマン」を追い求めて旅をしている自分に出会えるのである。

 

#0344) HELLBILLY DELUXE / Rob Zombie 【1998年リリース】

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米国のインダストリアル・メタルにおける2大巨頭はMINISTRY〔ミニストリー〕とNINE INCH NAILSナイン・インチ・ネイルズ〕だが、MARILYN MANSONマリリン・マンソン〕とRob Zombie〔ロブ・ゾンビ〕も2大巨頭に匹敵する存在だ。


MINISTRYのAl Jourgensen〔アル・ジュールゲンセン〕と他の3人、つまり、NINE INCH NAILSのTrent Reznor〔トレント・レズナー〕、Marilyn Manson、Rob Zombieの間には世代的に開きがあるが、この4人を米国インダストリアル・メタルの四天王と呼んでもいいのかもしれない。


今回取り上げているRob Zombieは、言わずと知れたインダストリアル・メタル・バンドWHITE ZOMBIE〔ホワイト・ゾンビ〕を率いていた人物だ。


「HELLBILLY DELUXE」は、Rob Zombieがソロ・アーティストとしてリリースした最初のアルバムであり、この一枚がWHITE ZOMBIEを遥かに超える成功を修めたことにより、Rob ZombieはWHITE ZOMBIEを解散させ、本格的にソロ・アーティストとしての活動を開始することになった。


やはり、ソロでの成功の手ごたえを掴むと、バンドというものは、長く続ければ続けるほど足かせになってしまうのかもしれない。


下世話な話だが、バンドでやる以上、分け前は減るわけだし、固定された人間関係を維持するというのもストレスになりそうだ。


音楽的にも、他のメンバーから、あーだこーだ言われることなく、自分の理想を形にし易いはずである。


もちろん、レコード会社からの要望や、プロデューサーの意見もあるので、100%とは言えないのかもしれないが。


Rob Zombieというアーティストは、インダストリアル・メタルというジャンルの中では、ずば抜けてキャッチーな曲を作る人物である。


ソロとしてリリースしたこのアルバムからはRob Zombieのキャッチーな部分がWHITE ZOMBIEの頃より顕著になっており、中には東洋風の旋律が感じられる曲もあり、単純にインダストリアル・メタルとは言い切れない側面もある。


もしかすると、Rob Zombieの曲は筋金入りのインダストリアル・メタル・マニアからすると、キャッチーすぎて物足りないのかもしれない。


むしろ、よく言われるように、Rob Zombie とは、Alice Cooperアリス・クーパー〕やKISS〔キッス〕等のショック・ロック、或いは、T. REX〔T・レックス〕や初期David Bowieデヴィッド・ボウイ〕等のグラム・ロックを、1990年代のスタイルで蘇らせたアーティストなのかもしれない。

 

#0343) THRILLER / Michael Jackson 【1982年リリース】

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Michael Jacksonマイケル・ジャクソン〕の6thtアルバム「THRILLER」は多くの人に知られているとおり、世界で最も売れたアルバムである。


リリースはされたのは1982年であり、筆者が洋楽を聴き始めた中学1年生の時期と重なる。


このアルバムによりMichael Jacksonは筆者の親(戦中生れ)にまで名前が知られる世界的エンターテイナーの頂点に登り詰めた。


実際に筆者がこのアルバムを買ったのは1983年なってからだと記憶している。


実のところ、当時の筆者はMichael Jacksonに特別な興味を持っていたわけではないのだが、とにかくこのアルバムは、当時洋楽を聴いていた人間が避けて通ることの出来ない存在だったのである。


もし、筆者と同世代で、当時洋楽を聴いていた人の中でこのアルバムを無視できた人がいるのであれば、その人は余程の変わり者か、或いは、音楽に対する何らかの強い拘りを持っている人くらいだろう。


「当時の筆者はMichael Jacksonに特別な興味を持っていたわけではない」と書いたが、実は今もMichael Jacksonには特別な興味を持っていない。


そんな、筆者のような人間でも、とにかく、このアルバムは避けて通れない存在だったのである。


Michael Jacksonのファンの方からの反感を買うことを承知で書くが、やはり、筆者のようなロックを中心に聴いている人間の耳には、Michael Jacksonの音楽はあまり面白くないのである。


同じ1980年代のブラック・ミュージックのアーティストならPrince〔プリンス〕の音楽の方が圧倒的に面白いと感じる。


しかし、そんな筆者でも、シンガーとしてのMichael Jacksonは天才的に凄いと思っている。


不世出のシンガーであり、こんな歌い方の出来るシンガーは、もう二度と現れないだろう。


Michael Jackson は、あの有名な"Thriller"のミュージック・ヴィデオを制作したことにより、その後も世界に向けて視覚的インパクトを与え続けなければならない宿命を背負ってしまったような気がする。


このアルバム収録の"Human Nature"で聴けるMichael Jacksonの歌は特に素晴らしく、この曲を聴いていると、エンターテイナーとしてのMichael Jacksonではなく、シンガーとしてのMichael Jacksonを、もっと聴いてみたかったと思えてならない。

 

#0342) ALPHA / ASIA 【1983年リリース】

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今回取り上げているASIA〔エイジア〕の2ndアルバム「ALPHA」は、収録曲の"The Heat Goes On"が、かつて新日本プロセスに所属していた伝説の覆面レスラー、ザ・コブラの入場曲として使われており、ザ・コブラのファンだった筆者にとっては非常に思い入れの深いアルバムだ。


そして、更にこのアルバムは1983年のリリースであり、筆者がロックを聴き始めた中学生の頃、早々に出会ったアルバムなので、アルバム・カヴァーを見るだけで気持ちを当時にタイムスリップさせてくれる一枚でもある。


ASIAというバンドは所謂スーパーグループだ。


KING CRIMSONキング・クリムゾン〕~ROXY MUSICロキシー・ミュージック〕~U.K.〔ユー・ケー〕のJohn Wetton〔ジョン・ウェットン〕(vocals & bass)、元YES〔イエス〕のSteve Howe〔スティーヴ・ハウ〕(guitars)、元ATOMIC ROOSTER〔アトミック・ルースター〕~Emerson, Lake & Palmerエマーソン・レイク&パーマー〕のCarl Palmer〔カール・パーマー〕(drums)、元THE BUGGLES〔ザ・バグルス〕のGeoff Downes〔ジェフ・ダウンズ〕(keyboards)という錚々たる顔ぶれだ。


ただし、当時の筆者は、まだロックを聴き始めたばかりの青二才だったので、ASIAのメンバーのキャリアがどれくらい凄いのかということは殆ど分かっておらず、何となく「1970年代に活動していたバンドのメンバーが集まっているので平均年齢が高そうだ」くらいの認識しかなかった。


今回取り上げている「ALPHA」は、前年にリリースされ、驚異的な売り上げを記録して世界的な大ヒット・アルバムとなった1stアルバム「ASIA(邦題:詠時感〜時へのロマン)」の次のアルバムなので、当時の洋楽雑誌で大きく取り上げられていたことを鮮明に記憶している。


とにかく注目のアルバムだったので、筆者は同級生の洋楽好きの友達数人でお金を出し合ってこのアルバムをレンタルし、しばらくの間は毎日のようにこのアルバムを録音したカセットテープを聴いていた。


後に分かったことなのだが、このアルバムはヒット作とはなったものの、1stほどの大ヒットには至らなかったらしい。


ただし、このアルバムは、薄っすらとプログレの要素を残している1stよりもキャッチーであり、完全なポップ・ロックになっているので大衆性においてはこのアルバムの方が上だ。


こういうキャッチーな曲を作るにはそれなりの音楽理論があるとは思うのだが、それにしてもこの時期のASIAの曲の完成度の高さは神がかっているとしか言いようがないのである。

 

#0341) BEAUTIFUL DISASTER / CHEAP AND NASTY 【1991年リリース】

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今回取り上げているCHEAP AND NASTY〔チープ・アンド・ナスティ〕の1stアルバム「BEAUTIFUL DISASTER」は1990年代におけるロックン・ロールの名盤だ。


と、言ってみたものの、このアルバムがリリースされた1991年は、米国ではグランジ/オルタナティヴ・ムーヴメントが盛り上がり始めた時期で、英国ではムーヴメントがマッドチェスターやシューゲイザーからブリットポップに移り行く時期だった。


はっきり言ってしまえば、ロックン・ロールなんて時代遅れであり、絶滅し行く恐竜のような存在だったのである。


ロックのトレンドが上記の状況だったので「ロックン・ロールの名盤だ!」と息を巻いてみたところで、当時このアルバムに注目したのはHANOI ROCKSハノイ・ロックス〕のコアなファンくらいだったと思う。


CHEAP AND NASTYとは、元HANOI ROCKSのギタリストNasty Suicide〔ナスティ・スーサイド〕を中心に結成されたバンドなのである。


他のメンバーは、元U.K. SUBS〔U.K.サブス〕~元URBAN DOGS〔アーバン・ドッグス〕のAlvin Gibbs〔アルヴィン・ギブス〕(bass)、HANOI ROCKSのローディーで、Andy McCoy〔アンディ・マッコイ〕とNastyがHANOI ROCKS解散後に立ち上げたTHE CHERRY BOMBZ〔ザ・チェリー・ボムズ〕にも参加していたTimo Caltio〔ティモ・カルティオ〕(guitar)、そして、素性のよく分からないLes Riggs〔レス・リッグス〕(drums)というラインナップだ。


このメンバーの中ではNastyの知名度か最も高いのだか、CHEAP AND NASTYはNastyのワンマン・バンドではなく、他のメンバーが書いた曲もかなり収録されており、民主的なバンドだ。


捨て曲無しの名盤なのだが、中でもTimo CaltioとAlvin Gibbsの共作曲で、Nastyが歌うアルバム表題曲の"Beautiful Disaster"は胸にグッとくる名曲だ。


実はこの時期、1990年には英国でTHE QUIREBOYS〔ザ・クワイアボーイズ〕が1stアルバムをリリースしたり、1989年にはデンマークのD-A-D〔ディー・エー・ディー〕が3rdアルバムでワールドワイドデビューしたりという具合に、こういう古いスタイルのロックン・ロールの需要が全く無かったわけではない。


しかし、いずれのバンドも順調に活動を続けられなかったということは(D-A-Dは現在でも祖国では国民的バンドだが)、1990年代初期がロックン・ロールの晩年だったのかもしれない。


ロックン・ロールはこの時期にそれまで担ってきた役割を終え、終焉の時を迎えたようない気がしてならないのである。