#0355) NOLA / DOWN 【1995年リリース】

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米国南部は保守的な土地柄だと聞くことがあるが、実際のところはどうなのだろうか?


筆者は米国には行ったことがないのだが(正確には米国領の島には行ったことがある)、米国南部発祥のサザン・ロックが大好きなので上記の件にはけっこう興味があったりする。


筆者自身も実はかなり保守的な人間だ。


政治については無関心なので保守でもリベラルでもないが、食やファッションの好み、生活様式等に関しては完全に保守だと思う。


アイスクリームはお店側が推す季節モノの新作よりも必ずバニラを選ぶタイプなのである。


今回取り上げている「NOLA」は、まさに米国南部、ルイジアナ州ニューオーリンズ出身のバンド、DOWN〔ダウン〕の1stアルバムである。


DOWNとはPANTERA〔パンテラ〕のPhil Anselmo〔フィル・アンセルモ〕(vocals)、CORROSION OF CONFORMITY〔コロージョン・オブ・コンフォーミティ〕のPepper Keenan〔ペッパー・キーナン〕(guitars)、CROWBAR〔クロウバー〕のKirk Windstein〔カーク・ウィンドスタイン〕(guitars)とTodd Strange〔トッド・ストレンジ〕(bass)、EYEHATEGOD〔アイヘイトゴッド〕のJimmy Bower〔ジミー・バウアー〕(drums)により結成されたスーパーグループであり、PhilとKirkとJimmyはニューオーリンズ出身だ。


PhilはこのDOWNや彼のもう一つのバンドSUPERJOINT RITUAL〔スーパージョイント・リチュアル〕での活動に注力し過ぎてPANTERAのメンバーとの関係を悪化させてしまい、PANTERAの解散を招いた。


これは筆者の予測だが、PANTERAはテキサス州のバンドであり、同じ南部で隣接する州ではあるものの、ニューオーリンズ出身のPhilとPANTERAの他のメンバーとでは腹の底の部分で実は馬が合わなかったのではないだろうか?


Philのようなスーパースターと筆者を比べるのは僭越なのだが、京都生まれ京都育ちの筆者は昔から大阪の人と馬が合わない。


これは「良い」「悪い」の問題ではなく「馬が合わない」としか言いようがないのである。


今回取り上げているDOWNの「NOLA」は所謂スラッジ・メタルと呼ばれる遅くて重くて引き摺るような音なのだが、やはり南部出身だけにアーシーなサザン・メタル・テイストが濃く感じられ、このテイストは7年後にリリースされる2nd「DOWN II」で更に強まることになる。


このアルバムを聴いていると、Philにとっては、PANTERAよりもDOWNの方が居心地の良い場所だったように思えてならないのである。

 

#0354) ANTICHRIST SUPERSTAR / MARILYN MANSON 【1996年リリース】

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今回取り上げているMARILYN MANSONマリリン・マンソン〕の2ndアルバムのリリース情報が日本の洋楽雑誌に出始めた頃、そのタイトルが「ANTICHRIST SUPERSTAR」だという記事を見てドキッとした記憶がある。


その理由は、国家元首であり行政府の長である大統領が、その就任式において神への誓いを述べるほどのキリスト教社会である米国の中で、「ANTICHRIST SUPERSTAR」というタイトルをアルバムに付けるということは、かなり危険な行為であるように思えたからだ。


日本で「反仏陀スーパースター」と言ったところでそれほどのバッシングを受けるとは思えないが、米国や欧州で「ANTICHRIST SUPERSTAR」と言ってしまえば凄まじいバッシングがあることは想像に難くない。


少なくとも筆者は、とてもじゃないがそんな危険な言葉を口にする勇気はない。


それ故、MARILYN MANSONの2ndアルバムのタイトルが「ANTICHRIST SUPERSTAR」になるという記事を見た時にドキッとしたのである。


筆者は、神や宗教や信仰に関しては無関心であるが、無神論者なのかと問われれば、そういうわけでもない。


個人的な見解では無神論という思想も、ある意味それはそれで「無神論」という一種の信仰のように思えるからだ。


筆者の場合は、神や宗教や信仰に関しては無関心であり、全く興味がないだけなのである。


従って、MARILYN MANSONの「ANTICHRIST SUPERSTAR」も極めてクオリティの高いインダストリアル・メタルとして、その音楽のみを楽しんで聴いている。


そもそも筆者は音楽を聴く時に歌詞に関しては殆ど無関心だ。


筆者はヴォーカルを楽器の一種として聴いているので、特別に好きなアーティストの場合は歌詞を翻訳して意味を知りたいと思うこともあるのだが、それ以外の場合は歌詞を意識することがない。


10代の頃に聴いた大好きな曲の歌詞の翻訳を何十年も経ってから知ることもあり、「けっこー、しょーもない歌詞やってんなぁ」と思うこともあるのだが、だからと言って、それでその曲が嫌いになることはない。


MARILYN MANSONの「ANTICHRIST SUPERSTAR」も、筆者が英語に達者な人間だったらドキドキして聴けなかったかもしれないが、幸か不幸か英語に達者でないが故に高性能なインダストリアル・メタルとして楽しむことが出来ているのである。

 

#0353) PURPLE RAIN / Prince & THE REVOLUTION 【1984年リリース】

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人類の歴史において、17世紀から19世紀は偉大な音楽家を輩出した時代だ。


17世紀のヴィヴァルディ、バッハ、18世紀のハイドンモーツァルトベートーヴェン、19世紀のシューマンショパン等、何となく思いつくままにざっと書いてみたが、この時代の音楽家の名前を書き始めると、かなりの人数になるはずだ。


では、上述した17世紀から19世紀の偉大な音楽家に匹敵する20世紀の音楽家の筆頭は?と問われた場合、筆者は迷うことなくPrince〔プリンス〕の名を挙げる(ちなみに、Princeの次に来るのはRichard D. James〔リチャード・D・ジェーム〕だ)。


特に、「AROUND THE WORLD IN A DAY」(1985年)、「PARADE」(1986年)、「SIGN O' THE TIMES」(1987)という、3年の間にリリースされた3枚のアルバムは20世紀におけるポピュラー音楽の最高到達点だと筆者は思っている。


ただし、最も聴いた回数の多いPrinceのアルバムは今回取り上げている「PURPLE RAIN」であり、これは筆者が初めて聴いたPrinceのアルバムでもある。


筆者にとっての「PURPLE RAIN」は最も好きなPrinceのアルバムではないが、最も思い入れの深いPrinceのアルバムなのだ。


このアルバムからのリード・シングル、"When Doves Cry"(邦題は"ビートに抱かれて")を初めて聴いた時の印象は悪かった。


「なんちゅう気色の悪い曲や」というのが第一印象、それが、ある日突然「物凄い名曲やん」に変わったのだ。


それが切っ掛けとなり、「PURPLE RAIN」の全ての収録曲が名曲に聴こえるようになり、それから1年くらいの間、毎日聴き続けた。


よく言われているように、「PURPLE RAIN」はPrinceのポップな面が最も濃く現れたアルバムだ。


ポップなものは飽きやすいという面も合わせ持っているが、このアルバムは初めて聴いた時から今日まで筆者は飽きたと感じたことが一度もない。


Princeの音楽家としての凄さは挙げだすとキリがないのだが、最も凄いところを一つ上げるなら曲を作り続け、短いサイクルでリリースし続け、第一線に居続けたことだ。


Princeはアルコールやドラッグといった、くだらない快楽とは無縁であり続け、生涯を通じて自分がやるべき仕事をやり続けたのだ。


膨大な年月を費やして傑作と言われるアルバムを4~5枚作ったくらいの音楽家ではPrinceの足元にも及ばないのである。

 

#0352) AGENT PROVOCATEUR / FOREIGNER 【1984年リリース】

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今回取り上げているFOREIGNER〔フォリナー〕は、#0302で取り上げたSTYX〔スティクス〕、#0312で取り上げたJOURNEY〔ジャーニー〕、#0342で取り上げたASIA〔エイジア〕等と並び、日本では産業ロックと呼ばれることがあり、インディー・ロックやオルタナティヴ・ロックのファンからは「売れるための音楽」と揶揄され、しばしば「あんものはロックではない」と否定されたり馬鹿にされたりすることがある。


しかし、そんな物言いは全くのお門違いだ。


筆者は産業ロックも聴くし、インディー・ロックやオルタナティヴ・ロックも聴くし、ジャンルなんて全く気にせずに40年近くロックを聴いてきた。


そして、常に感じてきたのは、ロックとは「お金を払ってその音源を購入した消費者に聴いてもらえることによって成立している」ということである。


これはロック以外のエンターテイメントでも同じことだろう。


簡単に言うなら、ロック・ミュージシャンとは「売れるための音楽」を制作するのであって、「売れないための音楽」を制作するなどありえないのである。


従って、全てのロック・ミュージシャンは「売れるための音楽」を制作し、流通させ、消費者に購入してもらい、それによって報酬を得ている以上、全てのロック・ミュージシャンは巨大な音楽産業に組み込まれた存在であり、全てのロックは産業ロックなのである。


これは、レーベルがメジャーであってもインディペンデントであっても同じことだ。


今回取り上げているFOREIGNERの5thアルバム「AGENT PROVOCATEUR」は、空前の大ヒットとなった前作「4」に続く作品であり、ファンや音楽業界から並々ならぬ注目を集めていた作品だ。


筆者もこのアルバムはリリースとほぼ同時に聴いており、秀逸なメロディと洗練されたアレンジが素晴らしく、前作「4」以上にお気に入りの1枚となったのだが、結果として売上枚数は前作を超えられなかった。


筆者は売上枚数というのは、そのアルバムの評価の基準には殆どならないと思っているので、FOREIGNERのアルバムで1枚お薦めを選ぶ時はいつもこのアルバムを選ぶことにしている。


FOREIGNERと言えば、一般的にはバラードのイメージが強いのかもしれないが、実はそれだけではなく、アルバムを聴くと、けっこう激しくロックしている曲も多いのである。

 

#0351) SUNDOWN YELLOW MOON / Jo Dog & Paul Black's SONIC BOOM 【2000年リリース】

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最も好きなロック・バンドは?


こう訊かれた時に「THE DOGS D'AMOUR〔ザ・ドッグス・ダムール〕です」と答える筆者にとって、とても興味深い記事が音楽雑誌BURRN!の2019年9月号に掲載されていた。


その興味深い記事とは「LAメタルの真実」という連載における元GUNS N' ROSES〔ガンズ・アンド・ローゼズ〕のギタリスト、Gilby Clarke〔ギルビー・クラーク〕のインタビューのことだ。


言うまでもないかもしれないが、Gilby Clarkeとは、リズム・ギターを担当していたGUNS N' ROSESのオリジナル・メンバーであるIzzy Stradlin〔イジー・ストラドリン〕が脱退した後、その後任としてGUNS N' ROSESに加入した人物だ。


Gilby Clarkeの加入はIzzy Stradlinの脱退が決定した後、それほど間を空けずに発表されている(Izzy Stradlinの脱退が1991年、Gilby Clarkeの加入も1991年)。


Gilby ClarkeはGUNS N' ROSESに加入する前からCANDY〔キャンディー〕やKILL FOR THRILLS〔キル・フォー・スリルズ〕の中心メンバーとして活動しており、GUNS N' ROSESよりも先にメジャー・レーベルと契約してプロのミュージシャンとしてのキャリアをスタートさせている。


そのため、Gilby ClarkeのGUNS N' ROSESへの加入はオーディション無しで決定したのだろうなと思っていたのだが、前述のBURRN!のインタビューではSlash〔スラッシュ〕から電話があり、しっかりとしたオーディションを2回受けた上での加入であったことが語られており、これには少々驚かされた。


そして、それ以上に驚いたのは、Slashが電話した相手が他にもいたことが語られており、それがTHE DOGS D'AMOURのJo Dog〔ジョー・ドッグ〕だと言うのである。


Jo Dogはスライド・ギターの名手なので、彼が新しいインプットを与えたGUNS N' ROSESでJo Dogの演奏する姿を見てみたかったような気もするが、結果としては米国のバンドであるGUNS N' ROSESには英国人のJo Dogよりも米国人のGilby Clarkeの方が合っていたように思える。


今回取り上げているのは、そんなJo DogがL.A. GUNS〔エルエー・ガンズ〕の初期のシンガー、Paul Black〔ポール・ブラック〕と組んだJo Dog & Paul Black's SONIC BOOM〔ソニック・ブーム〕のアルバム「SUNDOWN YELLOW MOON」だ。


このアルバムで聴けるのは、基本的にはロックン・ロールなのだが、けっこうカントリー要素の強い曲もあり、曲によってはオルタナ・カントリーっぽかったりもする。


Jo Dogの古巣であるTHE DOGS D'AMOURもアコースティック・ギターが際立つ「A GRAVEYARD OF EMPTY BOTTLES」というEPがあるのだが、THE DOGS D'AMOURのメイン・ソングライターはTyla〔タイラ〕であり、Jo Dogは作曲にはあまり関与していなかったので、THE DOGS D'AMOURにおけるカントリー・テイストはTylaからのインプットだと思っていたのだが、Jo Dog & Paul Black's SONIC BOOMの「SUNDOWN YELLOW MOON」を聴いていると、Jo Dogからのインプットもかなりあったのではないかと思えてくる。


Paul Blackのハスキーとまではいかない少しかすれ気味な声質もオルタナ・カントリーっぽい曲にあっているし、こういう声質で歌われる大地の匂いがするバラードは胸に染みる。


今回は筆者のお気に入りのギタリストであるJo Dogに関するアルバムだったので、調子に乗り過ぎて、いつもよりも300字ほど多めに書いてしまった。