Rock'n'Roll Prisoner's Melancholy

好きな音楽についての四方山話

#0413) AHH... THE NAME IS BOOTSY, BABY! / BOOTSY'S RUBBER BAND 【1977年リリース】

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Bootsy Collinsブーツィー・コリンズ]と言えば、御大James Brownジェームス・ブラウン]のバック・バンドや、George Clintonジョージ・クリントン]率いるPファンクでの活動で有名な凄腕ベーシストだ。


今回は、そのBootsy CollinsBOOTSY'S RUBBER BAND[ブーツィーズ・ラバー・バンド]としてリリースした2ndアルバムの「AHH... THE NAME IS BOOTSY, BABY!」を取り上げている。


いきなり話は逸れるが、筆者の人間関係は広くて浅い。


若い頃は、その傾向が殊の外、顕著だった。


それ故、自分と同じように音楽を好む人達とも、広くて浅い付き合いをするため、様々な音楽に精通している人との交流が、知らず知らずのうちに広がっていく。


Bootsy Collinsに関しては、筆者が若い時にブラック・ミュージックの先生として師事していたバンドマンのお兄さんから教えてもらった。


そのバンドマンのお兄さんが「これを聴け」と言って貸してくれた1枚が、今回取り上げている「AHH... THE NAME IS BOOTSY, BABY!」なのである。


このアルバムがリリースされたのは1977年なので、1969年生れで1982年頃から洋楽を聴き始めた筆者にとっては、完全に後追いの作品である。


当時の筆者にとって、1970年代とは名盤の宝庫という印象があり、1970年代の名盤と言われるアルバムを聴き漁っていたのだが、Bootsy Collinsというミュージシャン、そして、このアルバムのことは全く知らない状態だった。


未知の状態で出会ったアルバムなので、恐る恐る聴いてみたのだが、スピーカーから飛び出してきたクールなカッコ良さに筆者は一発でノックアウトされたのである。


ファンクに対し、筆者は濃厚で熱いというイメージを持っていたのだが、このアルバムによって、そのイメージを覆されたのだ。


確かに、このアルバムにも「濃厚で熱い」部分はあるのだが、それよりもクールなカッコ良さがの方が際立っているのである。


収録されている全てが名曲・名演なのだが、中でも6曲目(B面2曲目)の"Munchies for Your Love"は鼻血が吹き出すほどのカッコ良さだ。


この曲は9分を超える長尺の曲なのだが、この曲を聴いている時間があまりにも幸せ過ぎるので、恍惚としている間に、一瞬にして時間が過ぎてしまうのである。

 

#0412) AGENTS OF FORTUNE / BLUE OYSTER CULT 【1976年リリース】

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ニューヨークっぽいバンドと訊かれて思い浮かぶのはどんなバンドだろう?


THE VELVET UNDERGROUND[ザ・ヴェルヴェット・アンダーグラウンド]?RAMONESラモーンズ]?TELEVISION[テレヴィジョン]?TALKING HEADSトーキング・ヘッズ]?その名もズバリのNEW YORK DOLLSニューヨーク・ドールズ]か?


筆者の場合、リアルタイムで出会って大好きになったTWISTED SISTER[トゥイステッド・シスター]と、今回取り上げている「元祖ヘヴィ・メタル」のBLUE ÖYSTER CULTブルー・オイスター・カルト]が真っ先に思い浮かぶバンドだ。


初めて筆者が聴いたBLUE ÖYSTER CULTのアルバムは8thアルバムの「FIRE OF UNKNOWN ORIGIN」(1981年リリース)なのだが、曲が良いのでアルバム自体は好きになったものの、「元祖ヘヴィ・メタル」に関しては全くピンとこなかった。


その後、BLUE ÖYSTER CULTのアルバムはCD時代になってからジワジワと買い始めたのだが、やはり、「元祖ヘヴィ・メタル」というのがピンとくることはなく、かろうじてライブ・アルバムの「ON YOUR FEET OR ON YOUR KNEES」(1975年リリース)で聴けるハードな演奏にその片鱗が垣間見れるくらいである。


今回取り上げているのはBLUE ÖYSTER CULTの代表作であり、名盤として誉れ高い4thアルバムの「AGENTS OF FORTUNE」(邦題「タロットの呪い」)なのだが、確かにこのアルバムは評判通り、看板に偽りなしの名盤である。


「元祖ヘヴィ・メタル」というのはマネジメントかレコード会社によって付けられと予想されるが、BLUE ÖYSTER CULTの音楽性はハード・ロックプログレッシヴ・ロック、ロックン・ロール、サイケデリック・ロック等、曲によってテイストがかなり変わるので一つのジャンル名でこのバンドの音楽性を説明するのは困難だ。


今回取り上げている名盤「AGENTS OF FORTUNE」も、上記したそれぞれのジャンルのテイストを持つ曲が次から次へと繰り出されるのだが、不思議とアルバムとしての統一感があり、「ごった煮」的な感じはない。


どの曲にも共通して言えるのは「ニューヨークっぽい」ということであり、非常に洗練されていて、田舎臭い部分が全く無いのである。


BLUE ÖYSTER CULTはニューヨークのバンドで且つオリジナル・メンバー全員がニューヨーク出身だ。


AGENTS OF FORTUNE」もオリジナル・メンバーで制作されており、ニューヨークが放つ冷めた炎のような演奏が、このアルバムのリスナーを惹き付けて止まない魅力なのである。

 

#0411) ELECTRIC GYPSIES / Bernie Torme 【1983年リリース】

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今回取り上げているアルバムは、アイルランド出身のギタリスト、Bernie Tormé[バーニー・トーメ]の「ELECTRIC GYPSIES」というアルバムなのだが、実質的にはELECTRIC GYPSIES[エレクトリック・ジプシーズ]というバンドのアルバムだ。


Bernie Torméと言えば、DEEP PURPLEのシンガーだったIan Gillan[イアン・ギラン]のバンド、GILLAN[ギラン]の2ndアルバム「MR. UNIVERSE」(1979年リリース)でギタリストとしてロック・シーンに登場し、その後は急逝したRandy Rhoadsランディ・ローズ]の代役としてOzzy Osbourneオジー・オズボーン]のツアーをサポートして名を馳せたというイメージが強い。


当時は若手ギタリストというイメージがあったのだが、調べてみたところ、この人は1952年生れであり、「MR. UNIVERSE」に参加した時は既に27歳なので若手と言えるほど若くはない。


同じ1952年生れの弦楽器系のミュージシャンとしては、KISS[キッス]のPaul Stanley[ポール・スタンレー]、AEROSMITHエアロスミス]のBrad Whitford[ブラッド・ウィットフォード]、Gary Moore[ゲイリー・ムーア]、THE ONLY ONES[ジ・オンリー・ワンズ]のPeter Perrett[ピーター・ペレット]、FREE[フリー]のAndy Fraser[アンディ・フレイザー]、NEW YORK DOLLSニューヨーク・ドールズ]のJohnny Thundersジョニー・サンダース]、RAMONESラモーンズ]のDee Dee Ramone[ディー・ディー・ラモーン]等がいるのだが、何故かBernie Torméはこの人達よりも一世代くらい若いイメージがあった。


さて、今回取り上げている「ELECTRIC GYPSIES」だが、Bernie Torméで1枚選ぶなら、筆者は迷わずこのアルバムを挙げる。


この人特有の「弦、切れるでぇ」と思わせるほどの荒っぽいギターが見事に生かされているという点において、スタジオ盤ではこのアルバムが一番なのである。


ELECTRIC GYPSIESというバンド名は、たぶんJimi Hendrixジミ・ヘンドリックス]の「ELECTRIC LADYLAND」と「BAND OF GYPSYS」から取っていると思うのだが、ストラトキャスター&マーシャルアンプでギャンギャンに弾きまくるというスタイルからしてもBernie Torméがジミヘン・フリークであることは間違いないだろう。


この人は、Ozzy Osbourneのバンドに残っていたら(実際に残って欲しいと言われていた)、たぶんもっと有名になれたはずだし、経済的にも安定したと思うのだが、それを蹴って自分のソロとしてのキャリアを優先させた。


筆者なら絶対にOzzyのバンドを選ぶのだが、アーティスト(芸術家)の生き方というのは、なかなか凡人には理解できないものである。

 

#0410) PRIVATE DANCER / Tina Turner 【1984年リリース】

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今回取り上げているTina Turnerティナ・ターナー]の5thアルバム「PRIVATE DANCER」は筆者にとっての「想い出のアルバム」だ。


1984年にリリースされたアルバムであり、筆者が15歳(中3)の時に出会ったアルバムなのだが、とにかく、このアルバムは大ヒットしていたという印象が強い。


50歳を超えた今では、それほどでもなくなったが、若い頃の筆者は流行りものには直ぐに飛びつくタイプだったので、当然のようにこのアルバムにも飛びついたわけである。


"What's Love Got to Do with It"(邦題「愛の魔力」)のミュージック・ヴィデオを見た時は「アメリカにはワイルドな女性シンガーがいたはるわぁ~」くらいに思っていたのだが、このアルバムをレンタルレコード店で借りてきて初めて聴いた時は、収録されている曲の良さとTina Turnerの歌の上手さに度肝を抜かれたものである。


この記事を書くにために久しぶりに聴いてみたのだが、今聴いてもこのアルバムは充分に凄いアルバムであることに改めて気付いた。


確かに、いかにも1980年代といった響きのシンセサイザーの音には古臭さを感じるのだが、テクノロジーなんて日進月歩、否、秒進分歩で進化するものなので、そんなことを言い始めたら音楽を純粋に楽しめなくなる。


とにかく、このアルバムは曲が良く、そして、Tina Turnerの歌が上手いのだ。


カヴァー曲も多く収録されているのだが、中でもTHE BEATLESザ・ビートルズ]の"Help!"と、David Bowieデヴィッド・ボウイ]の"1984"のインパクトは大きい。


あの高速シャッフルのような"Help!"を、しっとりとしたバラードに仕上げており、ちょっと聴いただけではこの曲があの"Help!"ということに気付かないのではないだろうか。


筆者も暫くの間、この曲があの"Help!"だということには気づかずに聴いていた。


"1984"はDavid Bowieの原曲よりも先にTina Turnerのカヴァーを聴いたので、"1984"と言えばTina Turnerが歌うソウルフルなこの曲のイメージが強い。


David Bowieも大好きなアーティストなのだが、今でも"1984"に関してはBowieの(良い意味で)ソウルフルではない声で聴くと違和感がある。


1980年代は、日本が最も洋楽を受け入れた時代だと思うのだが、筆者にとってこの「PRIVATE DANCER」というアルバムは古き良き時代の記憶を蘇らせてくれる1枚なのである。

 

#0409) TNT / TORTOISE 【1998年リリース】

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平日に筆者が音楽を聴ける時間は通勤中(door to doorで約60分)に限られる。


当然ながら、会社にいる間は仕事をしており、帰宅してからはシャワーをした後、寝る直前まで仕事を続けている(夕食は食べない)。


こんな生活なので、音楽を聴ける通勤中は、筆者にとって貴重な時間であり、聴きたい音楽を集中して聴くことにしている。


今週は月曜から金曜までの間、ずっとインストゥルメンタルばかり聴いていた。


今回取り上げているTORTOISE[トータス]もインスト主体のポストロック・バンドだ。


筆者が音楽を聴く時、ヴォーカルというパートは、それほど重要ではない(ただし、上手な歌を聴くのは嫌いではない)。


筆者がロック等の洋楽を聴き始めたのは1982年であり、13歳(中1)の頃だ。


洋楽を聴く前に最も聴く機会の多かった音楽は日本の歌謡曲なのだが、洋楽を聴き始めてからは、歌謡曲と洋楽を聴く時に、自分が全く違う聴き方をしていることに気が付いた。


謡曲の殆どは日本語で歌われているため歌詞の意味が分かるのでヴォーカルを歌として聴いているのだが、洋楽は外国語(主に英語)で歌われているため歌詞の意味が分からないのでヴォーカルを楽器として聴いているのだ。


実は、この聴き方は今も変わっていない。


それ故、筆者にとっては、ヴォーカル入りの曲も、インストゥルメンタルの曲も全く違いがないのである。


今回取り上げているTORTOISEの3rdアルバム「TNT」もインストゥルメンタル・ロックの名盤だ。


このアルバムは当時の新技術であったハードディスク・レコーディングにより制作されているので、そこに焦点があたることが多いのだが、そういった制作手法以前に、メンバー全員が凄腕のミュージシャンであることの方が筆者は重要だと思っている。


TORTOISEは前衛的と言われることも多いのだが、筆者の耳で聴く限り充分にポップだ。


ここまで演奏技術を研ぎ澄ませたミュージシャンの奏でる卓越した演奏は、下手なヴォーカルよりも、よほど多くを語ってくれる。


もし、インストを敬遠している人がいるなら、ぜひ、このアルバムを聴いて頂きたいと思う。