Rock'n'Roll Prisoner's Melancholy

好きな音楽についての四方山話

#0426) SCARECROW / John Cougar Mellencamp 【1985年リリース】

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今回取り上げているJohn Cougar Mellencampジョン・クーガー・メレンキャンプ]の8thアルバム「SCARECROW」は1985年のリリースであり、当時の筆者は16歳(高1)だった。


このアルバムは、物凄く売れていたという印象があり、筆者はこのアルバムでJohn Cougar Mellencampというアーティストに出会った。


現在はJohn Mellencampという本名で活動している彼だが、Johnny Cougar(1st~2nd)→John Cougar(3rd~6th)→John Cougar Mellencamp(7th~10th)→John Mellencamp(11th~)という具合に、徐々にアーティスト名を本名に変えていった経緯がある。


たぶん、レコード会社かマネジメントあたりに付けられたCougarという芸名が、かなり嫌だったのではないだろうか。


ちなみに、Cougarとは、日本では一般的にピューマと呼ばれている動物であり、食肉目ネコ科に分類される肉食動物のことである。


ネコ科は、ネコ亜科(イエネコ、ヤマネコ等)とヒョウ亜科(ヒョウ、トラ、ライオン等)に分かれるのだが、ピューマは、見た目や大きさはヒョウのようなのだが、ヒョウ亜科ではなく、ネコ亜科に分類される変わった動物であり、筆者にとってはユキヒョウと並ぶ好きな動物の一つだ。


だいぶ話が横道に逸れたが、筆者はこの「SCARECROW」あたりからハートランド・ロックというジャンルを熱心に聴くようになった。


この「SCARECROW」、そして、同じく1985年にリリースされているTom Petty & THE HEARTBREAKERS[トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズ]の「SOUTHERN ACCENTS」の2枚は、当時、かなり聴き込んでいた。


筆者が洋楽を聴き始めた切っ掛けは、DURAN DURANデュラン・デュラン]、CULTURE CLUBカルチャー・クラブ]、KAJAGOOGOO[カジャグーグー]、WHAM!ワム!]といった英国の煌びやかなアーティストだったのだが、1984年にリリースされたBruce Springsteenブルース・スプリングスティーン]の「BORN IN THE U.S.A.」が切っ掛けとなり、米国の煌びやかではないロックにも興味を持つようになった。


その後は、Huey Lewis & THE NEWS[ヒューイ・ルイス&ザ・ニュース]の「SPORTS」に嵌り、そして、この手の米国産ロックを好きになる決定打となったのが今回取り上げているJohn Cougar Mellencampの「SCARECROW」だった。


今、この手の米国産ロックのことをHeartland Rock[ハートランド・ロック](中西部地域のロックという意味か?)と言うらしいが、1980年代当時、Heartland Rockというジャンル名は、少なくとも日本では使われていなかったと思う。


「この手の米国産ロック」と書くと、何のことか分からなくなりそうなので、この記事でもHeartland Rockと書くが、Heartland Rockのアーティストというのは、日本ではけっこうイメージを誤解されているようように思えてならない。


多くの日本人は、Heartland Rockのアーティストに対し、「勇ましい」とか「男らしい」というイメージを持っているのではないだろうか?


筆者も、最初はそのイメージでHeartland Rockのアーティストのことを理解しようとしていたのだが、実際に聴き込んでみると、彼らは意外なほど繊細...というか女々しいのである。


John Cougar Mellencampの「SCARECROW」も自身の弱さを曝け出したようなアルバムであり、そこが男の胸にグッと刺さるのである。

 

#0425) SINFUL / ANGEL 【1979年リリース】

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今回取り上げている米国・ワシントンD.C.出身のバンドANGEL[エンジェル]は、1975年に1stアルバムの「ANGEL」をリリースしている。


筆者は1969年生れなので、当然のことながらリアルタイムで聴いたバンドではない。


ANGELのキーボディストだったGregg Giuffria[グレッグ・ジェフリア]は、1980年代にGIUFFRIA[ジェフリア]というバンドを率いて活動しており、筆者は、このGIUFFRIAが好きだったので、そこから遡ってANGELに辿り着いたのである。


今回取り上げているのは5thアルバムの「SINFUL」なのだが、そのアルバム・カヴァーのとおり、レコード会社やマネジメントからアイドルとして売り出されていたバンドだ。


ただし、1stアルバムの「ANGEL」、2ndアルバムの「HELLUVA BAND」では、プログレッシヴ・ロックの要素が強い重厚なハード・ロックを演奏しており、アイドル・バンドらしい分かり易い音楽性ではない。


デビュー当時、本国の米国では鳴かず飛ばずの状況だったが、日本ではデビューから女性ファンを中心に大人気となった。


確かに、キーボディストのGregg Giuffriaと、ギタリストのPunky Meadows[パンキー・メドウス]のヴィジュアルはかなりのものであり、とりわけ、Punky Meadowsは、筆者も初めて彼の写真を見た瞬間、自分の中のカッコ良いギタリスト・ランキングの上位に飛び込んできた。


何しろ、ステージに上がっていない時の姿がこの麗しさであり、

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ステージに上がっている時の姿がこのカッコ良さなのである。

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日本の女性ファンが飛びつくのも当然だろう。


ただし、先ほども書いたとおり、デビュー当時のANGELは、アイドル・バンドらしい、分かり易い音楽性を持っていたわけではない。


ANGELがポップな面を押し出してきたのは3rdアルバムの「ON EARTH AS IT IS IN HEAVEN」からであり、その方向性が功を奏し、4thアルバムの「WHITE HOT」では売り上げも伸び、全米55位のという結果を残すことができた。


そして、今回取り上げている5thアルバムの「SINFUL」は、彼らのキャッチーでポップな面が最も強く打ち出されており、アルバム・カヴァーどおり、アイドル・バンドとして分かり易いアルバムとなったのだが、売り上げは前作を超えることができず、このアルバムを最後に解散という道を選ぶことになった。

 

#0424) SEXPLOSION! / MY LIFE WITH THE THRILL KILL KULT 【1991年リリース】

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MY LIFE WITH THE THRILL KILL KULT[マイ・ライフ・ウィズ・ザ・スリル・キル・カルト]は、彼らが登場した時期(1987年)にリアルタイムで知ったバンドではない。


かつて、毎月買っていた洋楽系音楽雑誌(MUSIC LIFE、rockin'on、CROSSBEAT等)の新譜レビューで見たことがあるような、ないような...


MINISTRY[ミニストリー]、NINE INCH NAILSナイン・インチ・ネイルズ]、KMFDM[ケーエムエフディーエム]、PIG[ピッグ]等の、所謂インダストリアル・ロック/インダストリアル・メタルが聴きたくて、あれやこれやと探している時に見つけたのがMY LIFE WITH THE THRILL KILL KULTなのである。


MY LIFE WITH THE THRILL KILL KULTは、インダストリアル・ロック/インダストリアル・メタルはではなく、インダストリアル・ダンスというジャンルに分類されているらしい。


上記した、MINISTRY、NINE INCH NAILS、KMFDM、PIG等のような、まるで拷問を受けているかのような激烈な音を求めていたので、MY LIFE WITH THE THRILL KILL KULTを初めて聴いた時は、かなりポップな音に拍子抜けした感もあったのだが、何故かまた聴きたくなる音でもあり、いつの間にか嵌ってしまったのがこのバンドなのである。


このバンドのどこが好きなのかと言えば、激烈ではないところである。


激烈な音を求めていて「激烈ではないところ」が好きになった理由というのは、おかしな話だが、大抵のロック・リスナーはハードな音もソフトな音も、両方楽しんでいるのではないだろうか?


筆者は、MINISTRYがインダストリアル・メタルに移行する前の1st「WITH SYMPATHY」や2nd「TWITCH」、或いは、UNDERWORLDアンダーワールド]がテクノに移行する前の1st「UNDERNEATH THE RADAR」や2nd「CHANGE THE WEATHER」といったシンセポップが大好きなのだが、MY LIFE WITH THE THRILL KILL KULTの音は、そういった初期のMINISTRYやUNDERWORLDの音に近い。


MINISTRYやUNDERWORLDは「あれは無かったことにする」という空気を出しているが、いやいや「あれは名盤ですよ」と言って、本人が嫌がるところをあえてイジる楽しさがあると思うのだが、MY LIFE WITH THE THRILL KILL KULTは、そんな感じの音をずっと続けているバンドなのである。


MY LIFE WITH THE THRILL KILL KULTは、どのアルバムを聴いても似たような感じなのだが、その中で1枚選ぶなら、筆者は今回取り上げている3rdアルバムの「SEXPLOSION!」を上げたい。


曲も良いが、タイトルやカヴァーの、ちょっとアホっぽい感じも絶妙に良いのである。

 

#0423) DOGGYSTYLE / Snoop Doggy Dogg 【1993年リリース】

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今回取り上げている「DOGGYSTYLE」は、Snoop Doggスヌープ・ドッグ]の1stアルバムであり、当時の彼はSnoop Doggy Doggスヌープ・ドギー・ドッグ]と名乗っていた。


Snoop Doggは、この1stアルバム「DOGGYSTYLE」が日本でリリースされる前から、洋楽系音楽雑誌での前評判が高かったと記憶している。


筆者は無節操に色々なジャンルの音楽を聴くが、元来はロック・リスナーなので、ヒップ・ホップが特別な音楽という訳ではない。


ロック・リスナーである筆者がヒップ・ホップに出会ったのは、RUN-DMC[ラン・ディーエムシー]が、1986年に、AEROSMITHエアロスミス]のSteven Tylerスティーヴン・タイラー]、Joe Perryジョー・ペリー]とコラボした"Walk This Way"だ。


これは筆者に限らず、筆者と同世代(2021年現在でアラフィフ)のロック・リスナーが、ヒップ・ホップに遭遇する切っ掛けとして、最も標準的な形なのではないだろうか。


RUN-DMC の"Walk This Way"が、あまりにもカッコ良くて、その後、ロックと平行しながらヒップ・ホップ系のアーティストを聴き始めるのだが、その中で、Snoop Doggの「DOGGYSTYLE」は十指に入るくらい嵌ったアルバムだ。


このアルバムは「Gファンクの最高傑作」と言われているらしいが、ヒップ・ホップに詳しくない筆者には、正直なところ、その辺りその歴史的な価値は分かっていない。


筆者にとっての、このアルバムは、聴いていて、ただただ心地よく、このアルバムから聴こえてくるビートに身を委ねたくなるのだ。


ヒップ・ホップは英語が分からなければ本当の良さは理解できないという人もいて、それも一理あると思うのだが、筆者のように英語が分からなくても、ヒップ・ホップをサウンドとして楽しむことはできるはないかと思う。


逆に、ロック・バンドのTHE SMITHSザ・スミス]などは、メロディはあるが、Morrisseyモリッシー]の書く歌詞の意味を知らなければ、その良さや凄さを解るのは難しいのではないかと思う(英語の解らない人で、曲だけ聴いてTHE SMITHSが良いという人がいたら、興味があるのでその理由を訊いてみたいと思っている)。


それに比べると、ヒップ・ホップは、歌詞の意味が解らなくても、充分に楽しむことができる音楽なのではないかと思う。


この「DOGGYSTYLE」というアルバムも、筆者にとって、ヒップ・ホップをサンドとして楽しめる1枚なのである。

 

#0422) MIRAGE / CAMEL 【1974年リリース】

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英国のプログレッシヴ・ロック・バンド、CAMEL[キャメル]と言えば、この2ndアルバム「MIRAGE」を反射的に思い浮かべる人が多いのではないだろうか?


バンド名がCAMELで、アルバムジャケットがラクダの絵であり、その絵がよく見かける煙草の銘柄『CAMEL』のコラージュなのだから、このアルバム「MIRAGE」が思い浮かんでしまうのは仕方のないことだろう。


煙草を吸わない筆者ですら、CAMELとうバンドのことをよく分かっていない時から、CAMELと言えば「煙草のキャメルと同じアルバム・カヴァー」という印象が強かった。


ただし、筆者が初めて聴いたCAMELのアルバムは、「MIRAGE」ではなく、1981年にリリースされた8thアルバムの「NUDE」だった。


その切っ掛けは、プロレスラーの前田日明CAMEL の"Captured"という曲を入場テーマ曲として使用しており、その"Captured"が「NUDE」に収録されていたからである。


筆者のブログでプログレを取り上げる時に度々登場する、筆者が学生時代にバイト先で知り合ったU君という人がおり、彼のお兄さんは熱狂的なプログレ・マニアなのだが、プロレスも好きな人であり、彼とプロレスの話をしている時に、筆者が「前田日明の入場テーマ曲」が好きだと言ったところ、「その曲、CAMELの曲やで」と言って、彼の膨大なコレクションの中から取り出してくれたのが「NUDE」だったのである。


今でこそ「NUDE」は、コンセプト・アルバムとして、丸々一枚を楽しめるのだが、当時は"Captured"が強烈に好きすぎて、他の曲がどうしても入ってこなかったのだ。


それをU君のお兄さんに言ったところ、彼が「ほんなら、これはどうや?」と言って、またまた膨大なコレクションの中から取り出してくれたのが今回取り上げている「MIRAGE」であり、U君のお兄さんの思惑通り、筆者は「MIRAGE」にド嵌りしたのである。


Andrew Latimer[アンドリュー・ラティマー]のギターを中心に据えた各パートのテクニカルな演奏はスリリングで、聴いた瞬間、一気にこのアルバムの世界に引き込まれるのである。


フルート好きの筆者には、時おり聴けるAndrew Latimerのフルートの音色も聴きどころである。


なお、Andrew Latimerはヴォーカルも担当しており、こちらは弱々しくて全く耳に残らないのだが、「MIRAGE」はヴォーカルを聴くアルバムではないので、それで良いのである。