Rock'n'Roll Prisoner's Melancholy

好きな音楽についての四方山話

#0439) TURN IT UPSIDE DOWN / SPIN DOCTORS 【1994年リリース】

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今回はSPIN DOCTORS[スピン・ドクターズ]の2ndアルバム「TURN IT UPSIDE DOWN」を取り上げている。


1994年にリリースされたアルバムである。


このアルバムをWikipedia(英語版)で調べると、Genreの欄にFunk Rock、Alternative Rockと書かれている。


SPIN DOCTORSがFunk Rockなのかどうかは不明だが、少なくともAlternative Rockではないような気がする。


#0429でCOUNTING CROWS[カウンティング・クロウズ]を取り上げたときにも書いたのだが、Alternative Rockというジャンルはよく分からない。


Alternative という単語の意味をそのまま捉えるなら「メインストリーム・ロックの代替えとなるロック」という意味なのだろう。


筆者の場合、Alternative Rockというジャンル名から直ぐにイメージできるのは、例えば、THE JESUS LIZARD[ザ・ジーザス・リザード]とかMUDHONEY[マッドハニー]あたりの、ハードコア・パンクをルーツに持つアーティストだ。


SPIN DOCTORSの楽曲は、筆者がイメージするAlternative Rockとは全く繋がらない。


むしろ、メインストリーム・ロックだ。


SPIN DOCTORSのアルバムは、今回取り上げている2ndアルバムの「TURN IT UPSIDE DOWN」と1stアルバムの「POCKET FULL OF KRYPTONITE」しか聴いたことがないので、全く詳しくはないのだが、この2枚で聴けるSPIN DOCTORSの曲はライヴハウスよりもアリーナでの演奏が似合う、昔ながらのアメリカン・ロックなのである。


それも、かなり上質のアメリカン・ロックだ。


この時期(1990年代)のロック系メディアには、「メタルじゃなければオルタナでえぇやん」みたいな雑な感じああった。


SPIN DOCTORSはけっこう売れたはずなので、本人たちがどう思っていたのかは分からないのだが、Alternative Rockという言葉は、たぶん彼らにとってプラスに作用したのだろう。

 

#0438) HUNTING HIGH AND LOW / a-ha 【1985年リリース】

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a-ha[アーハ]がデビューした時のインパクトは大きかった。


今回取り上げている「HUNTING HIGH AND LOW」は、1985年にリリースされたa-haのデビューアルバムだ。


1980年代初期の筆者は、のべつ幕無し、手当たり次第に色々な洋楽を聴き漁っていたのだが、時代は第2次ブリティッシュ・インヴェイジョンだったので、やはり、英国のアーティストを聴くことが多かった。


中でも、DURAN DURANデュラン・デュラン]、CULTURE CLUBカルチャー・クラブ]、KAJAGOOGOO[カジャグーグー]、WHAM![ワム!]あたりを好んで聴いていたのだが、1980年代中期になると、上記のアーティスト達に陰りが見え始めた。


DURAN DURANAndy Taylorアンディ・テイラー](guitar)とRoger Taylorロジャー・テイラー](drums)が脱退、CULTURE CLUBは看板シンガーのBoy George[ボーイ・ジョージ]がドラッグ事件で逮捕、KAJAGOOGOOも看板シンガーのLimahl[リマール]を金銭トラブルでクビにしてからの活動が上手く行かず、WHAM!は変わらず人気があっのだが何故か解散への道を選ぶことになる。


言うなれば「沈みゆく大英帝国」とう状況だったのだが、そんな時にノルウェーから登場した新星がa-haだったのである。


当時の筆者は文系の授業が嫌いで、中でも地理はまともに授業を聴いていなかったせいか、ノルウェーと言われても、その国が何処にあるのかすら分かっていなかった。


a-haの音楽性を一言で言えばシンセポップということになるのだが、a-haの曲が持つ透明感やキラキラ感は、英国産のシンセポップとは一味も二味も違う新鮮味があった。


デビュー曲"Take On Me"の完成度の高さやミュージックビデオの面白さもあり、彼らのデビュー・アルバム「HUNTING HIGH AND LOW」は即決で購入したのだが、「"Take On Me"は前振りだったのですか?」と思えるほど全ての曲の完成度が高く、この時期に購入した洋楽アルバムの中では最も満足度の高い1枚だったのである。

 

#0437) BLUE MURDER / BLUE MURDER 【1989年リリース】

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ロックの歴史において、1989年は興味深い年だ。


何故なら、1989年には、3つのスーパーグループが1stアルバムをリリースしているらだ。


その3つのスーパーグルーとは、BADLANDS[バッドランズ]、MR. BIG[ミスター・ビッグ]、そして、今回取り上げているBLUE MURDER[ブルー・マーダー]のことだ。


それぞれの1stアルバムは、BADLANDSが3月、BLUE MURDERが4月、MR. BIGが6月、という具合に、かなり近い時期にリリースしているので、アーティストやレコード会社どうしで、何らかの申し合わせがあったのかもしれない。


ちなみに、ベテランでは、BAD ENGLISH[バッド・イングリッシュ]の1stアルバムも1989年であり、翌年の1990年にはDAMN YANKEES[ダム・ヤンキース]が1stアルバムをリリースしている。


上記した、BADLANDS、BLUE MURDER、MR. BIGの中で、筆者が最も期待していなかったのが、実はBLUE MURDERなのである。


何故なら、BADLANDSにはRay Gillen[レイ・ギラン]、MR. BIGにはEric Martin[エリック・マーティン]という歌の上手い専任のシンガーがいたのだが、BLUE MURDERはシンガー探しに難航し、ギタリストのJohn Sykesジョン・サイクス]がシンガーを兼任することになったからだ。


ところが、1stアルバムを聴いてみらた、John Sykesはメチャメチャ歌が上手かったのである。


John Sykesのギタリストとしての腕前やソングライターとしての能力は、既にTHIN LIZZYシン・リジィ]やWHITESNAKEホワイトスネイク]で証明済みではあったものの、ここまで歌が上手いというのは新鮮な驚きだった。


まぁ、冷静に考えてみたら、John Sykesは、あの美しい名曲"Please Don't Leave Me"の作曲者なのだから、歌が上手いのは当然なのかもしれない。


BLUE MURDERの1stアルバムを聴いていると、「どうしてシンガーを探そうとしたの?」と、訊きたくたくなってしまうのである。

 

#0436) SOUTHERN ACCENTS / Tom Petty & THE HEARTBREAKERS 【1985年リリース】

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ハートランド・ロックといジャンルにおける最大の大物は、間違えなくBruce Springsteenブルース・スプリングスティーン]ということになるだろう。


ちなみに、筆者が1番好きなハートランド・ロックのアーティストは、Bob Seger[ボブ・シーガー]だ。


そして、絶対に忘れてはならないハートランド・ロックのアーティストが、今回取り上げているTom Petty & THE HEARTBREAKERSトム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズ]である。


THE HEARTBREAKERSと言えば、Johnny Thundersジョニー・サンダース]を思い浮かべる人もいるだろう。


筆者は、 Johnny Thundersよりも先にTom Petty & THE HEARTBREAKERSの方を知ったので、Johnny Thunders & THE HEARTBREAKERSの「L.A.M.F. 」を見たときに、「えっ、HEARTBREAKERSって、Tom Pettyだけやのうて、Johnny Thundersのバックもしてはんの?」と混乱した記憶がある。


今では2つが違うバンドであることを理解しているし、ハートランド・ロック(Tom Petty)とニューヨーク・パンク(Johnny Thunders)では、だいぶ違うのだが、2とも大好きだ。


さて、多くの人がハートランド・ロックに持っているイメージとは、どのようなものだろう?


「地方都市の労働者に向けて歌われる男のロック」というのが、多くの人がハートランド・ロックに持っているイメージの最大公約数ではないだろうか?


そして、男のロックでありながらも、同時に、とても女々しいのである。


今回取り上げているTom Petty & THE HEARTBREAKERSの6thアルバム「SOUTHERN ACCENTS」は、筆者がロックを聴き始めた頃に出会ったアルバムだ。


これもまた、女々しさを全開にした男が、切なさを撒き散らす、ハートランド・ロックの名盤中の名盤なのである。

 

#0435) VIOLATION / STARZ 【1977年リリース】

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今回はSTARZ[スターズ]が1977年にリリースした2ndアルバムの「VIOLATION」を取り上げている。


STARZについての記事を書いている今回も、そして、#0425でANGEL[エンジェル]を取り上げたときも、実は同じ疑問を持って書いている。


その疑問とは、「果たしてパンクとは、それほどまでに、ハード・ロックを滅ぼしたのだろうか?」ということである。


もちろん、この記事を書いている2021年現在でもハード・ロックは存在するし、筆者がロックを聴き始めた1980年代はヘア・メタルというハード・ロックの一種が全盛を極めた時代なので、ハード・ロックが滅んでいないことは、ロック・ファンなら誰しも知っていることだ。


筆者が1980年代に読んでいた雑誌に、1977年以降のパンク・ムーヴメントを特集した記事が掲載されると、必ず「パンクが古いロックを一掃した」と書かれており、当時はそれを鵜呑みにしていたのだが、自分で1970年代後半のロックを掘り起こして聴き始めてからは「本当かな?」という疑問を持つようになった。


その疑問を持つ切っ掛けが、今回取り上げているSTARZの「VIOLATION」なのである。


とにかく、このアルバム、凄まじく完成度が高いのである。


1970年代の米国におけるハード・ロックの王者と言えば、AEROSMITHエアロスミス]とKISS[キッス]なわけだが(王者と言いつつ、2つ挙げるのは矛盾しているが)、STARZは王者に匹敵するくらい楽曲の完成度が高いと思っている。


特に、1stアルバムの「STARZ」と、今回取り上げている2ndアルバムの「VIOLATION」は、AEROSMITHやKISSの全盛期のアルバムと比較しても、何の遜色の無い、ハードで、ワイルドで、タフで、セクシーで、そして、キッチュな要素も合わせ持つ、王道のアメリカン・ハード・ロックが聴ける名盤中の名盤だと言い切れる。


そして、これら初期2枚のアルバムからは"Detroit Girls"、"Cherry Baby"、"Sing It, Shout It"といったヒット曲も生まれているし、その後のアルバムからも全米チャートの100位以内に入るヒット曲が生まれている。


ますます、「パンクが古いロックを一掃した」というのが疑問に思えてくる。


ちなみに、AEROSMITHとKISSの跡を受けて、後にアメリカン・ハード・ロックの王者となるVAN HALENヴァン・ヘイレン]の1stアルバムは1978年のリリースなので、ますます疑問に思えて仕方がない。