普段、自分が聴いている音楽は、基本的に自分の音楽の好みの範囲内であり、なかなかその範囲を越えて音楽を聴く機会は少ない。
他人から教えてもらうことにより幸運にもめぐり逢えた音楽がある。
筆者が学生時代にバイトしていた店に、筆者より二つ年上のU君がいた。
U君はTHIN LIZZY〔シン・リジィ〕命の学生で、Joe Satriani〔ジョー・サトリアーニ〕やOzzy Osbourne〔オジー・オズボーン〕等のハード・ロックやヘヴィ・メタルを中心に聴きつつ、YES〔イエス〕やGENESIS〔ジェネシス〕等のプログレッシヴ・ロックも守備範囲に持つ人物だった。
そのU君が「超名盤」と言って、筆者に貸してくれたCDが今回取り上げたQUEENSRYCHE〔クイーンズライク〕の3rdアルバム「OPERATION: MINDCRIME」だ。
ちなみに、QUEENSRYCHEの正式なバンド名表記はYの上にウムラウト(横並びの・が二つ)が付く。
QUEENSRYCHEのことは音楽雑誌「MUSIC LIFE」でその存在は知っていたのだが、特に興味を持つこともなく、彼らの演奏しているプログレッシヴ・メタルというジャンルも知らなかった。
U君が貸してくれた「OPERATION: MINDCRIME」も、正直なところ、それほど期待せずに聴き始めたのだが、曲を聴き進むにつれ、「これは、ただ事ではない」ということに気付き、歌詞カードを凝視しながら真剣に聴き入っていた。
とにかく、収録曲の完成度が異常に高い。
さらに、犯罪組織の首謀者であるドクターXと彼に操られるヘロイン中毒の殺し屋ニッキー、犯罪組織に弄ばれるシスター・メアリー等が複雑に絡むハードな物語はコンセプト・アルバムの域を超えて、まるで一本の映画を見ているかのような錯覚に陥る。
「OPERATION: MINDCRIME」がリリースされた当時(1980年代)、コンセプト・アルバムという物は、何となく1970年代の遺物というイメージが筆者の中にはあったのだが、そんなイメージを払拭してくれたのが、このアルバムだった。
このアルバムはU君に出会わなければ、おそらく聴いていないだろう。
今ではもう会えなくなってしまったU君に「ありがとう」と言いたい。