1990年代の後半以降にデビューしたアーティストやリリースされたアルバムに関しては、何がきっかけでそのアーティストやアルバムを知ったのか、殆ど記憶にない。
これが1990年代の前半以前なら、はっきりと記憶しており、90%以上が音楽雑誌だったと言い切れる。
それも、明確に「MUSIC LIFE」か「音楽専科」か「rockin'on」か「BURRN!」か「CROSSBEAT」のいずれかだ。
今回取り上げるFiona Apple〔フィオナ・アップル〕の1stアルバム「TIDAL」は1996年のリリースだが、どのような形で知ることになったのか全く記憶にない。
だだし、CDショップに立ち寄った時に、Fiona Appleというアーティストを既に何処かで知った上で購入したことは記憶している。
ジャケット写真の物憂げな瞳が気になり、その声を聴いてみたくて購入したアルバムだった。
所謂、「ジャケ買い」というやつだ。
その可憐なルックスからくる勝手な思い込みで、AOR的なソフトな音を想像していたのだが、実際にスピーカーから流れてきた音は低音の効いたヘヴィなロック・サウンドで、良い意味で裏切られた。
その後、収録曲"Criminal"のミュージック・ビデオを見て、全然可憐じゃない動く彼女の姿を見て愕然とした。
Fiona Appleの声を聴いた時、筆者はKurt Cobain〔カート・コバーン〕やJeff Buckley〔ジェフ・バックリィ〕に通ずるものを感じた。
聴く者の心を否が応にも揺さぶるその深い歌声は彼女の最大の魅力ではあるが、一歩間違うと彼岸に行ってしまいそうな危うさがある。
正直なところ、彼女はKurt CobainやJeff Buckleyと同じ運命を辿ってしまうのではないかという不安があったのだが、それは杞憂に終わったようだ。
今のところ1stアルバムの「TIDAL」がピークだったような気がするが、常に質の高いアルバムを届けてくれる。
なかなか寡作なアーティストだが、彼女の新しいアルバムのリリースを待つことを今後の人生の楽しみの一つにしたい。