英国で1970年代後半に興ったパンク・ロック・ムーヴメントと、米国で1990年代前半に興ったグランジ・ロック・ムーヴメントが似ていると言われているのは、ロック・ファンの共通の認識だ。
パンク・バンドがパンク以前に人気のあったハード・ロックやプログレッシヴ・ロックを否定する姿勢と、グランジ・バンドがグランジ以前に人気のあったヘヴィ・メタルやグラム・メタル(ヘア・メタル)を否定する姿勢は確かによく似ていた。
しかし、パンクとグランジには大きな違いもある。
パンク・バンドの多くがパンクと呼ばれることを肯定し、パンクという言葉に好感を示していたのに対し、グランジ・バンドの多くはグランジと呼ばれることを否定し、グランジという言葉に嫌悪感を示していた。
たぶん、グランジ・バンドの多くは自分たちのことをパンクと呼んで欲しかったのではないだろうか?
今回取り上げたSCREAMING TREES〔スクリーミング・トゥリーズ〕もグランジと呼ばれることに嫌悪感を示していたように記憶している。
確かに、彼らの最高傑作と言われている6thアルバム「SWEET OBLIVION」を聴いても、グランジという言葉から連想されるようなノイジーな印象は無い。
所謂、古典的なハード・ロックのような「キメのギター・ソロ」は無いが、Mark Lanegan〔マーク・ラネガン〕のエモーショナルな低音で歌いあげられる上質な楽曲は、グランジ・ファンよりも、むしろハード・ロック・ファンに受け入れられるのではないかと思える(とにかくギター・ソロが聴きたいという人には無理かもしれないが)。
NIRVANA〔ニルヴァーナ〕、PEARL JAM〔パール・ジャム〕、SOUNDGARDEN〔サウンドガーデン〕、ALICE IN CHAINS〔アリス・イン・チェインズ〕といったグランジの大御所たちに比べ、SCREAMING TREESの人気は悲しいくらいに低い。
グランジに限った話ではないが、ムーヴメントが終焉すると多くのバンドは忘れ去られる。
SCREAMING TREESも忘れ去られつつあるバンドだ。
今回取り上げた「SWEET OBLIVION」や次作「DUST」はグランジという一過性のブームに埋もれさせてしまっては惜しい作品なので、筆者は今後もずっと聴き続けていくだろう。