μ-ZIQ〔ミュージック〕とは、英国のテクノ・アーティストであるMike Paradinas〔マイク・パラディナス〕が用いるアーティスト名の一つである。
他にもJAKE SLAZENGERやKID SPATULA等(いずれも読み方が不明)、色々なアーティスト名を用いているが、テクノ/エレクトロニック系のアーティストとうのは、リリースする作品の音楽性に合わせてアーティスト名を変える人が多い。
こういうことはロックの分野には無くはないがあまり馴染みがないので、テクノ/エレクトロニックの門外漢である筆者には新鮮に感じられる。
ただし、門外漢なので、そこにどれ程の音楽性の違いがあるのか解っていない。
その辺は、ロック門外漢からすればハードコア・パンクとスラッシュ・メタルの違いなんて解らない方が多いと思うのでご容赦頂きたい。
今回取り上げたμ-ZIQの「LUNATIC HARNESS」は1997年の作品であるが、筆者は1990年代中旬頃からロックへの興味を失いつつあり、テクノやドラムン・ベース、トリップ・ホップ等、ロック以外のアーティストを好んで聴くようになっていた。
中でも、この「LUNATIC HARNESS」は、APHEX TWIN〔エイフェックス・ツイン〕の「RICHARD D. JAMES ALBUM」、PLUG〔プラグ〕の「DRUM 'N' BASS FOR PAPA」、SQUAREPUSHER〔スクエアプッシャー〕の「HARD NORMAL DADDY」と共によく聴いたアルバムである。
いずれも、ただでさえ高速で破壊的なブレイクビーツが特徴のドラムン・ベースを更に凶悪に発展させたドリルン・ベースにカテゴライズされる音楽だが、APHEX TWIN、PLUG、SQUAREPUSHERの曲が破壊的な要素が強いのに対し、μ-ZIQの曲は破壊的な要素も少なからずあるものの、どこかしなやかでメランコリックな印象を聴く者に与えてくれる。
出会い頭にいきなり張り手を喰らわせてくるような無作法なところはなく、アヴァンギャルドでありながら気品を感じさせてくれるのである。
筆者は、この時期(1990年代中旬~後半)以降、積極的にエレクトロニック系のアーティストを追わなくなったが、「LUNATIC HARNESS」は、きっと死ぬまで聴き続ける一枚になると感じている。