筆者がロックを聴き始めた1980年代前半に、当時、知っていたオーストラリアのアーティストと言えば、BEE GEES〔ビージーズ〕と、AC/DC〔エーシー・ディーシー〕と、そして今回取り上げるINXS〔インエクセス〕の3組だけだった。
アメリカやイギリスと同様に英語を母国語とする国でありながら、当時の日本にはオーストラリアのアーティストはあまり紹介されていなっかったと記憶している。
BEE GEESもAC/DCもINXSも、グループ内に兄弟がいるので、オーストラリアでは兄弟で音楽をやる習慣があるのかと勘違いしたりもしていた。
一番好きなオーストラリアのアーティストというのは考えたことがなかったが、初めて聴いたオーストラリアのアーティストがINXSだったので、何となくINXSが一番好きなような気がする。
そもそも筆者はオーストラリアのアーティストを積極的に聴いてこなかったので、思いつく選択肢がBEE GEESとAC/DCとINXSくらいしか無い。
今回、筆者は一番好きなINXS のアルバムとして、5thアルバムの「LISTEN LIKE THIEVES」を取り上げたのだが、INXSのアルバムとしては、たぶん次の6thアルバム「KICK」の方が売れているはずだ。
ただし、売れているとか売れていないとかを基準にして音楽を聴いたことがないので、正確な記録は気にしていないし知らない。
「KICK」も良いアルバムで、よく聴いたのだが洗練されすぎているような気がする。
「LISTEN LIKE THIEVES」には、これから本領を発揮する直前のロック・バンドとしてのダイナミズムが感じられる。
音楽的には、キーボードやホーンを効果的に使ったダンサブルな曲に、Michael Hutchence〔マイケル・ハッチェンス〕のセクシーでしなやかなヴォーカルがのる王道の80年代サウンドである。
これが売れなかったら一体何が売れるんだというくらい、クオリティの高いアリーナ・ロックであり、同時期に活動していた英米のアーティストと比べても全く遜色が無い。
遜色がないというのは彼らに失礼な話で、それどころか、ヴォーカルのMichael Hutchenceは、こういうバンドのフロントマンとしては、歌もステージでのパフォーマンスも際立ってセクシーで存在感があり、むしろ、当時この人に勝てる人がいなかったような気がする。
イギリスでライヴをやると、当時のイギリスの人気バンドのメンバーが観に来るほど注目されていた。
彼が37歳という若さで亡くなってしまったのは実に残念である。
もっと年を重ねて枯れてからのMichael Hutchenceも見てみたかった。