聴いた回数の多さでは今回取り上げるKING CRIMSON〔キング・クリムゾン〕の1stアルバム「IN THE COURT OF THE CRIMSON KING」もかなり上位に入る。
このアルバムは筆者が洋楽を聴き始めた1980年代の初期、洋楽雑誌「MUSIC LIFE」で「過去の名盤」的な特集記事が組まれると、必ず取り上げられる一枚だった。
2018年現在の今でもその輝きが失われることはなく、ロック史上に燦然と輝く名盤である。
当時の筆者はまだ聴いたことのないプログレッシヴ・ロックに強烈に魅かれていた時期で、Progressive(進歩的な)なロックというものがどんなものなのか、聴きたくて聴きたくて仕方がなかった。
そして、なけなしのお小遣いをはたいてようやく購入できたのが、この「IN THE COURT OF THE CRIMSON KING」とPINK FLOYDの「THE DARK SIDE OF THE MOON」だった。
余談だが筆者はあるジャンルの音楽を聴いてみたい場合、そのジャンルの代表的なアーティストを二組選んでそれぞれの名盤と呼ばれているアルバムを一枚ずつ買うようにしていた。
そうしていた理由は二つ有り、一つは、一組だけを聴いてもそのジャンルの特徴を掴み切れないと思っていたから、そしてもう一つは、二組聴けば一方が×でも、もう一方は○ということもあるだろうと思っていたからだ。
ただし、二組とも×の場合は大損をすることにもなるのだが。
「IN THE COURT OF THE CRIMSON KING」と「THE DARK SIDE OF THE MOON」の場合、最初に聴いたときは「IN THE COURT OF THE CRIMSON KING」は○で、「THE DARK SIDE OF THE MOON」は×だった(ただし、一年後くらいには「THE DARK SIDE OF THE MOON」も○になり、こちらも頻繁に聴きまくるようになった)。
「IN THE COURT OF THE CRIMSON KING」を聴くまで、ロックとはノリノリで聴くものだという先入観があったのだが、「IN THE COURT OF~」を聴いて、初めて「じっくり聴くロック」というものが有ることを知った。
Robert Fripp〔ロバート・フリップ〕(guitars)、Greg Lake〔グレッグ・レイク〕(vocals & bass)、Ian McDonald〔イアン・マクドナルド〕(keyboards, 木管楽器)、Michael Giles〔マイケル・ジャイルズ〕(drums)の4人が繰り出すクラシックやジャズからの影響を受けた超絶的なプレイヤビリティにも圧倒されたが、作詞のみを担当するPeter Sinfield〔ピート・シンフィールド〕がバンド・メンバーとして名を連ねていることに相当な衝撃を受けた。
1曲目の"21st Century Schizoid Man"こそハードな展開を見せるものの、2曲目以降はラストまで幽玄の美を感じさせる深遠な世界が続く。
十代の頃、筆者はこのアルバムを聴くことで、今、自分が存在する現実世界から逃避していた。
あれからもう30年以上の時間が経過した。
50歳を迎えつつある今でもこのアルバムを聴くと、ちょっと普通の精神状態ではいられなくなることがある。