今回取り上げるTHE PRIMITIVES〔ザ・プリミティヴズ〕は1980年代の後半にちょっとだけ盛り上がったブロンド・ムーヴメントを代表するバンドだ。
ブロンド・ムーヴメントとは、当時、金髪でルックスの良い女子をフロントに立てたBLONDIE〔ブロンディ〕っぽいバンドがいくつか出てきたのでそれらを一纏めにしてそう呼んでいたのだが、それほど盛り上がってはいなかったように記憶している。
ちなみに、少し前に取り上げたTRANSVISION VAMP〔トランスヴィジョン・ヴァンプ〕とはライバル関係にあった。
ただし、今思うとバンドどうしのライバル関係というよりも、THE PRIMITIVES のTracy Tracy〔トレイシー・トレイシー〕とTRANSVISION VAMPのWendy James〔ウェンディー・ジェームス〕の女子二人だけがメディアに煽られ、ファン・サービスの一つとして予定調和的にやりあっていただけのような気がする。
当時の筆者はTRANSVISION VAMPの方を好んで聴いており、THE PRIMITIVESをまともに聴いたのは彼女ら(彼ら)が解散してからである。
THE PRIMITIVESを代表するアルバムとなると、ヒット・シングルの"Crash"が収録されている 1stアルバムの「LOVELY」になるのだろうが、筆者はあえて1stほど売れなかった2ndアルバムの「PURE」を取り上げたい。
「LOVELY」よりも「PURE」の方が圧倒的に良いというわけではない。
むしろ、「LOVELY」の方が解り易いポップ・ソングが多く入っていると思う。
正直なところ、「LOVELY」も「PURE」もそれほど変わらない。
ただし、少しだけ「PURE」の方が翳りを感じさせてくれる曲が多い。
初めて聴いた時は、「THE VELVET UNDERGROUND〔ザ・ヴェルヴェット・アンダーグラウンド〕のカヴァーをやりそうなバンドだな」と思っていたところ、アルバムの後半でTHE VELVET UNDERGROUND の"I'll Be Your Mirror"のカヴァーが鳴りだしたので面食らった記憶がある。
そう、この「PURE」というアルバム、「可愛らしいTHE VELVET UNDERGROUND」という感じなのである。
少し気になるのは、ギターのPaul Court〔ポール・コート〕がちょいちょい歌っていることだ。
需要があるのだろうか?
それとも、THE VELVET UNDERGROUNDの1stアルバム「THE VELVET UNDERGROUND & NICO」のような男女のヴォーカルが入っている路線を狙ったのだろうか?
願わくは、全ての曲をTracy Tracyの声で聴きたい。