1980年代後半、BAD BRAINS〔バッド・ブレインズ〕、FISHBONE〔フィッシュボーン〕、LIVING COLOUR〔リヴィング・カラー〕等、黒人メンバーで構成されるロック・バンドはブラック・ロックと呼ばれていた。
LIVING COLOURのリーダーでギタリストのVernon Reid〔ヴァーノン・リード〕が運営する組織も自らブラック・ロック・コーリューションと名乗っていた。
この「ブラック・ロック」という言葉、筆者にとってはどうにも違和感を覚えて仕方のない言葉である。
そもそも、ロックとは、ロックン・ロールとは、Chuck Berry〔チャック・ベリー〕、Little Richard〔リトル・リチャード〕、Bo Diddley〔ボ・ディドリー〕、Fats Domino〔ファッツ・ドミノ〕等、黒人が生み出した音楽である。
それであるにも関わらず、あえてブラック・ロックと言わなければならないほど、1980年代はロックが黒人から離れて白人のものになっていたのだろう。
筆者は白人の演奏するロックも当然好きだ。
しかし、ロックとは「こうでなければならない」という縛りを否定するものだと思っているので多様性があってしかるべきだと思っている。
故に、ロックを黒人の手に取り戻したBAD BRAINSやFISHBONEやLIVING COLOURの奏でるロックが面白くて仕方がなかった。
その中でも、今回はFISHBONEの2ndアルバム「TRUTH AND SOUL」を取り上げてみる。
とにかく、このアルバムのカッコ良さは1曲目、Curtis Mayfield〔カーティス・メイフィールド〕のカヴァー"Freddie's Dead"を聴いた瞬間に保証される。
「何なんだ、この色っぽさは?」って感じだ。
そして、その後はファンク、スカ、パンク、ハード・ロック等、カテゴライズ不要のご機嫌なサウンドが続き、ちょっとセンチメンタルなバラードでアルバムが締め括られる。
このバンドを魅力的にしている要素は色々あるのだが、その中でも特にこのバンドを特徴づけているのはAngelo Moore〔アンジェロ・ムーア〕の歌心溢れるヴォーカルだろう。
結局、筆者はいつもAngeloのヴォーカルが聴きたくてこのアルバムを再生している。
FISHBONEは彼らと仲の良いRED HOT CHILI PEPPERS〔レッド・ホット・チリ・ペッパーズ〕やJANE'S ADDICTION〔ジェーンズ・アディクション〕ほど売れなかった。
しかし、FISHBONEの音楽性はRED HOT CHILI PEPPERSやJANE'S ADDICTIONに全く劣っていないし、実は筆者の中ではFISHBONEの方が上である(あくまでも個人の好みです)。
黒人は音楽業界でスターになるにはヒップ・ホップをやらなければ駄目なのだろうか?
ヒップ・ホップをやって成功する白人もそれほど多くないが、ロックをやって成功する黒人はもっと少ないような気がする。
これはちょっとバランスが悪い。