SIGUE SIGUE SPUTNIK〔ジグ・ジグ・スパトニック〕。
このバンドが1986年にシングル"Love Missile F1-11"をリリースした時の英国のロック・シーンは一種異様な盛り上がりがあった。
ド派手なヴィジュアル、EMIと15億円で契約という前評判、一体どんな凄い音楽を聴かせてくれるのだろうかという期待の下、テレビで初めて彼らのデビュー・シングル"Love Missile F1-11"聴いた時の「凄さ」を今も忘れていない。
たぶん、100人中、99人くらいの人が"Love Missile F1-11"を聴いた時に、「これが契約金15億円のバンドですか?」という感想を持ったのではないだろうか?
そう、それが彼らの「凄さ」なのである。
チープな打ち込みをバックにまぁまぁカッコ良いエレクトリック・ギターと加工されまくりの下手くそなヴォーカルが乗る、ある意味、今までに聴いたことのない音楽。
それが、"Love Missile F1-11"である。
普通、大抵の人は"Love Missile F1-11"を聴いた時に、それ以上、彼らを深追いするのは止めるのだろう。
しかし、世の中には、「アルバムには色々な曲が入っているはずだから」という前向きな考えで、今回取り上げた1stアルバムの「FLAUNT IT」を買ってしまう筆者のような前向きな人も僅かながら存在する。
そして、こう思うのである。
「全部、"Love Missile F1-11"だな...」
そして、こうも思うのである。
「これに2,800円払ったのか...」
確かに最初から胡散臭さはあった。
リーダーのTony James〔トニー・ジェイムス〕の担当楽器が「スペース・ギター」である。
これには、「何なん?それ?」というツッコミが必要だ。
ドラムス担当メンバーが二人いるというのもツッコミどころだ。
確かに世の中にはバンド・アンサンブルを考えた上でドラムス担当が二人いるバンドもあるが、SIGUE SIGUE SPUTNIKの場合は、「ルックスの良いメンバーを二人見つけたけど二人ともドラマーだった」という理由にしか思えない。
何となくこのバンドは、リーダーで元GENERATION X〔ジェネレーションX〕のTony Jamesが、元バンド・メイトであるBilly Idol〔ビリー・アイドル〕のバカ売れぶりを目の当たりにして、「ワシも売れたい~」という思いで急ごしらえしたバンドに思えてならない。
このバンドの「凄い」ところはまだある。
色々と酷いことを書いてきたが、実は筆者はこのアルバムを数年に一度、聴きたくなるのである。
好きなのだろうか?
否、やはり、好きとは言えない。
でも、嫌いではないのだろう。
どこか憎めないところもある。
言うなれば、たまには体に悪いものを食べたくなる感じに似ている。
SIGUE SIGUE SPUTNIKが撃沈した後、1990年代初頭の英国では、JESUS JONES〔ジーザス・ジョーンズ〕、CARTER THE UNSTOPPABLE SEX MACHINE〔カーター・ジ・アンストッパブル・セックス・マシーン〕、EMF〔イーエムエフ〕等、打ち込みをバックにエレクトリック・ギターを鳴らすバンドが相次いでデビューして人気者になった。
それを思うとSIGUE SIGUE SPUTNIKは先駆者だったのかもしれない。