先週、#0071でTHE SEERSの「PSYCH OUT」を取り上げたときに、「永年に渡り聴いている大好きなバンドであるにも関わらずTHE SEERSというバンドの素性が殆ど判らない」という旨の文を書いたが、今回取り上げる24-7 SPYZ〔トゥエンティ・フォー・セヴン・スパイズ〕もTHE SEERS同様に素性が判らないバンドである。
24-7 SPYZを知ったのは洋楽雑誌CROSSBEATのディスクレビューだった。
ロックとは、或いは、ロックン・ロールとは、そのルーツを辿るとChuck Berry〔チャック・ベリー〕やLittle Richard〔リトル・リチャード〕等、黒人がブルースやR&Bをアップデートして創り出した音楽でる。
それがいつの間にか白人中心の音楽になってしまい、時代が1980年代にもなると黒人とロックが結び付きにくくなっていた。
そんなシーンに風穴を開けたバンドがLIVING COLOUR〔リヴィング・カラー〕であり、彼らのような黒人による新しいロックをもっと聴きたいと思っていた矢先に見つけたのが24-7 SPYZだった。
CROSSBEATのディスクレビューで24-7 SPYZの2ndアルバム「GUMBO MILLENNIUM」を見つけて早速購入したところ、これが大当たり(もしかすると、1stアルバムの「HARDER THAN YOU」たっだかもしれないが、古すぎる記憶なのでうろ覚えだ)。
ただし、その後、このバンドに関する情報がほぼゼロのまま3年近い時間が経過し、忘れた頃に突然これもまた音楽雑誌(この時もCROSSBEATだったように記憶している)のディスクレビューで見つけたのが今回取り上げた3rdアルバムの「STRENGTH IN NUMBERS」だった。
ファンクもメタルもパンクもレゲエも、その全てをゴッタ煮にしたような時にクールで時にファニーなそのサウンドは健在だったが、シンガーが変わった影響なのか、前作よりも本格的なロックに近づけた音になっていて、それが筆者のようなガチガチのロック・リスナーにとっては更に受け入れやすい内容になっていた。
LIVING COLOURと比較ばかりするのは良くないのかもしれないが、曲によってはLIVING COLOURよりもキャッチーでポップな面もあり、大衆性は24-7 SPYZの方が上のような気もする。
ただし、このバンド、けっこう頻繁にメンバー・チェンジを繰り返すので、リスナーにとってはバンドとしての魅力を見出しにくいのかもしれない。
更に、このバンド、どういう訳かメディアに殆ど取り上げられてこなかった。
米国での状況は判らないが、少なくとも日本ではこのバンドの名前を見たのは洋楽雑誌のディスクレビューくらいだ。
LIVING COLOURの1stアルバム「VIVID」のリリースが1988年、24-7 SPYZの1stアルバム「HARDER THAN YOU」のリリースが1989年なので、ほぼ同期と言える二組である。
それにも関わらず、LIVING COLOURの大きな取り上げられ方に比べ、24-7 SPYZの扱いはあまりにも小さい。
これは、Mick Jagger〔ミック・ジャガー〕にプッシュされたバンド(LIVING COLOUR)と、そうではないバンド(24-7 SPYZ)の違いなのだろうか?