インダストリアル・ロックと言えば、一番有名なのがNINE INCH NAILS〔ナイン・インチ・ネイルズ〕で、次に有名なのがその先輩格とも言えるMINISTRY〔ミニストリー〕ということになるのだろうか?
いずれも米国のアーティストである。
では、英国におけるインダストリアル・ロックの代表と言うと、どのアーティストになるのだろうか?
筆者の場合、PIG〔ピッグ〕ことRaymond Watts〔レイモンド・ワッツ 〕が思い浮かぶのだが、NINE INCH NAILSやMINISTRYと比べると、かなりマイナーなアーティストであると言わざるを得ない。
PIGという名前については、それがRaymond Wattsという男の芸名なのか、或いは、ユニット名なのか、その辺りのプロフィール的なことがよく解らないのだが、いずれにしてもメチャメチャ男前のくせに自らをPIG(豚)と名乗るのだから、何となく嫌味な奴だなと思えてしまう。
PIGもNINE INCH NAILSもMINISTRYも、同じインダストリアル・ロックと呼ばれるジャンルに属しているわけだが、米国産のMINISTRYやNINE INCH NAILSと、英国産のPIGでは、当然と言えば当然なのだが、ずいぶんとその音のテイストが異なる。
スラッシーなギターとデジタル・ビートの融合というスタイルはどのアーティストにも共通しているのだが、PIG の音からはNINE INCH NAILSやMINISTRYが持っているような逞しさはあまり感じ取ることが出来ず、欧州らしい耽美的な美しさを感じ取ることが出来る。
今回取り上げた5thアルバムの「WRECKED」はPIGのアルバムの中でも特にそれを感じさせてくれる一枚である。
David Bowie〔デヴィッド・ボウイ〕のベルリン三部作(「LOW」、「"HEROES"」、「LODGER」)に通ずる欧州型アート・ロックを過激に発展させた音と言えば、その音楽性をイメージして頂けるだろうか。
このブログの記事を書くにあたって、今週は主にインダストリアル・ロック系アーティストのアルバムを聴いていたのだが、「WRECKED」の音の質感がドイツのKMFDM〔ケー・エム・エフ・ディー・エム〕のアルバム「NIHIL」に似ていることに気付いた。
この時期のKMFDMにはPIG(Raymond Watts)がメンバーとして参加していたので、この時期の両者の音が似ているのは自然なことなのだが、ブログの記事を書いていると忘れていたことを思い出すことが出来て面白いものである。