筆者が初めて買ったCDは、THE MISSION〔ザ・ミッション〕の2ndアルバム「CHILDREN」と、今回取り上げたTHE GODFATHERS〔ザ・ゴッドファーザーズ〕の2ndアルバム「BIRTH, SCHOOL, WORK, DEATH」だった。
いずれも1988年にリリースされたアルバムだが、この頃の日本では、ミュージシャンが音源をリリースするためのメディア形式が、アナログ・レコードからコンパクト・ディスク(CD)に移行し始めた。
当時の筆者は、けっこう頑なにアナログ・レコードに拘っていた。
しかし、日本のレコード会社はこの頃から、「このアーティストのニュー・アルバムはCDのみのリリースで、アナログ・レコードのリリースはありません」というアナウンスをし始めた。
実は、上記の二枚が日本ではCDのみでリリースされるアルバムだったのである。
THE GODFATHERSのことは当時の音楽雑誌MUSIC LIFEで知って、「これは絶対に聴きたい」と目を付けていたアーティストのアルバムだったので、この不測の事態に当時の筆者はかなり焦ったわけだ。
その後、輸入レコード店でこのアルバムのアナログ・レコードを見つけることが出来なかったので、かなり無理をしてCDプレーヤーを購入し、日本盤のCDも購入した。
それにより、晴れてお目当てのアルバムを無事に聴くことが出来たのだが、これが期待を大きく上回る内容だったので救われた気分になったことを今でもよく憶えている。
もしこれが期待を大きく下回っていたなら正気を保っていられなかった可能性が高い。
THE GODFATHERSは英国出身のバンドで、その音楽性を簡単に言ってしまうとロックン・ロールということになるのだが、メンバー全員がスーツにネクタイというスマート且つフォーマルな服装でやっているわりには音の方は全然スマートではない。
切れ味の鋭さはあるのだが、ナイフでスパッと切り裂かれる感じではなく、鉈(なた)でズバッと叩き切られる感じだ。
「BIRTH, SCHOOL, WORK, DEATH(生まれて、学校に行って、働いて、死ぬ)」という身も蓋もないタイトルにも英国人らしいセンスが感じられた。
このアルバムがリリースされた1988年と言えば、筆者の大好きなHANOI ROCKS〔ハノイ・ロックス〕が既に解散しており、ヘヴィ・メタル的ではない純粋なロックン・ロール・バンドの数が少なかった。
前年の1987年にはGUNS N' ROSES〔ガンズ・アンド・ローゼズ〕が「APPETITE FOR DESTRUCTION」(これはアナログ・レコードを買った)でデビューしていて、かなり気に入って聴いていたのだが、HANOI ROCKSのようなヘヴィ・メタル的ではない純粋なロックン・ロール・バンドはもう出てこないのかなと思っていたところに登場してくれたのがTHE GODFATHERSだった。
この当時、米国からはヘヴィ・メタルの影響が感じられるロックン・ロール・バンド(グラム・メタル)が数多く登場していて、筆者も喜んで聴いていたのだが、やはりそれだけでは飽きてしまう。
そんな時に欧州(英国)から登場したTHE GODFATHERSは新鮮だった。
この直後にTHE DOGS D'AMOUR〔ザ・ドッグス・ダムール〕が登場するのだが、THE DOGS D'AMOURに出会うまでの短い期間ではあったが、THE GODFATHERSは筆者の最もお気に入りのロックン・ロール・バンドになってくれたのである。