今回取り上げるHayden〔ヘイデン〕の1stアルバム「EVERYTHING I LONG FOR」は彼の出身国であるカナダでは1995年にリリースされてるのだが、日本でリリースされたのは翌年の1996年だった。
日本ではBeck〔ベック〕の2ndアルバム「ODELAY」とリリースのタイミングが重なっており、洋楽雑誌にはこの2枚を同じ大きさで1ページに横並びにした広告が掲載されていた。
つまり、あのBeckと同じプライオリティで扱われていたわけだ。
筆者はBeckの1stアルバム「MELLOW GOLD」を気に入っていたので「ODELAY」を買うことは決めていたのだが、Beckと横並びにされていたHaydenというシンガー・ソングライターのことも気になってしまい、同時にこの2枚を買った。
家に帰って、先ずはBeckの「ODELAY」を聴いて「期待どおり」という感想を持ちつつ、次にHaydenの「EVERYTHING I LONG FOR」を聴いて予想外の衝撃を受けた。
Beckの「ODELAY」は当然のように良かったのだが、Haydenの「EVERYTHING I LONG FOR」が凄すぎたせいで「ODELAY」が霞んでしまい、これ以降Beckをあまり聴かなくなってしまった。
「EVERYTHING I LONG FOR」というアルバム、或いは、Haydenというシンガー・ソングライターの書く曲は万人向けとは言い難い。
短い咳払いから始まるオープニング曲"Bad As They Seem"の沈み込むような鬱々としたHaydenの歌い方を聴いて、「ダメだ、こりゃ」と敬遠したくなる人の方が多いのではないかと思う。
アルバム・タイトルの「EVERYTHING I LONG FOR」とは「私が待っているもの全て」とでも訳せばいいのだろうか?
いずれにしろ、あまりポジティヴな印象が感じられないタイトルだ。
悲しげな曲を延々と聴かされるアルバムなのだが、筆者はこういう世界に浸りたくなる時がけっこうな頻度である。
同じ時期に聴いていた同じくカナダ出身のシンガー・ソングライターRon Sexsmith〔ロン・セクスミス〕の1stアルバム「RON SEXSMITH」が「切なさ」や「温かさ」を感じさせてくれる作品であることに対し、Haydenの「EVERYTHING I LONG FOR」は「悲しさ」や「冷たさ」を感じさせてくれる作品であり実に対照的だ。
これ以前の筆者はカナダと米国の音楽は同じで違いは無いと思っていたのだが、HaydenやRon Sexsmithのおかげでカナダとい国の音楽からカナダ独自の個性を見出せるようになった。