1980年代初頭に英国で興ったニュー・ロマンティック・ムーヴメントから登場したアーティストの中で最も大きな成功を収めたアーティストはたぶんDURAN DURAN〔デュラン・デュラン〕だろう。
そして、そのDURAN DURANの最大のライヴァルと言えば英国ではSPANDAU BALLET〔スパンダー・バレエ〕ということになっているらしい。
今日はそのSPANDAU BALLETの4thアルバム「PARADE」を取り上げてみる。
英国におけるDURAN DURANの最大のライヴァルがSPANDAU BALLETであると書いたが、当時を知る者の感覚から言わせてもらうと、日本では「DURAN DURAN vs SPANDAU BALLET」という構図は無かった。
当時の日本でDURAN DURANの最大のライヴァルと言えばCULTURE CLUB〔カルチャー・クラブ〕だったのである。
では、当時の日本でSPANDAU BALLETがどのような存在だったのかを思い出そうとすると、どう言う訳か殆ど記憶に残っていない。
少なくても人気バンドではなく、音楽雑誌のMUSIC LIFEも毎月DURAN DURANとCULTURE CLUBのことは取り上げていたが、SPANDAU BALLETは殆ど取り上げていなかったような気がする。
当時の日本でSPANDAU BALLETの人気が英国ほど高くなかった理由の一つは、たぶん彼らの音楽性がアダルト過ぎて、日本の10代の女子が好むような類の音楽性ではなかったからだろう。
そして、メンバーのルックスも「可愛い」、「美しい」という感じではなく、「ダンディ」、「男前」という感じであり、この辺りも日本の10代の女子の好みとずれていた。
今回取り上げた「PARADE」に関してはニュー・ロマンティック・ムーヴメントが沈静化した1984年にリリースされたアルバムであり、大人のリスナーをターゲットにしたアダルト・コンテンポラリー・ミュージックの名盤である。
SPANDAU BALLETと言えば、米国のビルボードで4位(アダルト・コンテンポラリー部門では1位)となった大ヒット曲"True"が収録されている前作の3rdアルバム「TRUE」の方が有名かもしれないが、筆者の個人的な感想では本作「PARADE」の方がより高い完成度を備えていると感じている。
"True"のような即効性の高い大ヒット曲は収録されていないが、「PARADE」の方がアルバム全体を俯瞰して楽しめる大人向けの一枚に仕上がっていると言えるだろう。
実は本音を言うと、筆者は"True"のことを凡庸で面白みのないバラードだと感じており、本作収録の"Round And Round"の方が起伏に富んだ秀逸なバラードだと感じている。
このアルバムを最初に聴いたのは中学生の頃だが、当時の筆者は何となく大人になったような気分に浸りながら収録曲の全てに酔いしれていた。
本当の大人になった今、改めてこのアルバムを聴いても、それぞれ曲の良さは全く色あせていない。
ちなみに、この「PARADE」までのSPANDAU BALLETのアルバムは全8曲収録だった。
全8曲というのは現在の感覚ではミニ・アルバムかEPだが、当時はこのヴォリュームのアルバムがけっこう多かった。
しかし、クオリティの低い捨て曲を詰め込んで無駄にヴォリュームを膨らますより、そのアーティストが全てを注ぎ込んで書き上げた曲だけが詰まったコンパクトなアルバムの方が聴いた後の満足感が大きいと筆者は感じている。