FOGHAT〔フォガット〕というバンドを知った切っ掛けは漫画だった。
同級生のS君が、「おまえ、ロック好きやし、これ貸したるわ」と言って持ってきたのが永野護という作家の書いた「フール・フォー・ザ・シティ (FOOL for THE CITY)」という漫画だった。
今となってはこの漫画のストーリーを殆ど憶えていないのだが(SFだったことは憶えている)、漫画のタイトルである"Fool For The City"がロックの名曲であり、FOGHATというバンドの曲であることをこの漫画を介して知ることになった。
当時の筆者は既に深くロックにのめり込んでいて、毎月、洋楽雑誌の「MUSIC LIFE」と「音楽専科」を読み漁っていたのだが、FOGHATというバンドは知らなかった。
洋楽雑誌で時々企画される「過去の名盤」的な特集でも見かけた記憶が無かったので、当時の日本でのFOGHATの人気はそれほど高くなかったのだろう。
とにかく、この頃の筆者は少しでも気になったアーティストは聴いてみたくなる時期だったので、"Fool For The City"という曲が聴きたくてレンタルレコード店に行ったのだがFOGHATのレコードは無く、輸入レコード店でようやく見つけて購入したのが今回取り上げた「FOOL FOR THE CITY」なのである。
「FOOL FOR THE CITY」はFOGHATの5thアルバムなのだが、このアルバムを探すのはけっこう大変だった。
何しろFOGHATというバンド自体の情報が無い上に、家庭でインターネットを利用できる時代ではないので、"Fool For The City"という曲がどのアルバムに収録されているのかも解らないのである。
とにかく、輸入レコード店で地道にFのコーナーに置かれているアルバムを1枚ずつ見ていたところ、幸いにもお目当ての曲をアルバム・タイトルに掲げた「FOOL FOR THE CITY」を発見できた。
漫画の「フール・フォー・ザ・シティ (FOOL for THE CITY)」がSFだったので、勝手にプログレッシヴ・ロックやスペース・ロック的な音を予想していたのだが、FOGHATの「FOOL FOR THE CITY」はジャケットからしてそれを感じさせる要素は無く、一聴しただけでは英国のバンドとは思えないような米国南部を感じさせるブギー・ロックに意表を突かれた。
だいぶ後から気付いたのだが、このアルバムにはあの伝説のブルース・マンRobert Johnson〔ロバート・ジョンソン〕のカヴァー曲"Terraplane Blues"が収録されており、ブルースへの憧憬を感じさせる演奏と歌がこのバンドの持ち味なのだろう。
そもそもこのバンドは1960年代の英国における3大ブルース・バンドの一つ、SAVOY BROWN〔サヴォイ・ブラウン〕を脱退したメンバーが中心となって結成されたバンドであり、FOGHATの音楽性はSAVOY BROWNからブルースの要素を引き継ぎながら、それをキャッチーにアップデートしたものと言えるだろう(ちなみに、他の二つのブルース・バンドはFLEETWOOD MAC〔フリートウッド・マック〕とCHICKEN SHACK〔チキン・シャック〕だ)。
このアルバムは米国でプラチナ・ディスクとして認定されてるので、FOGHATは米国でかなり大きな成功を修めた英国のバンドである。
しかし、どう言う訳か、この手のバンドは、なかなか日本では人気者になれないのである。