DEAD OR ALIVE〔デッド・オア・アライヴ〕とCULTURE CLUB〔カルチャー・クラブ〕の間にはライバルという構図がある。
しかし、この二つのバンドの全盛期をリアルタイムで体験した者の感触としては、それは違うような気がしている。
CULTURE CLUBの全盛期をアルバムで示すなら、1st「KISSING TO BE CLEVER」(1982年リリース,全英第5位)、2nd「COLOUR BY NUMBERS」(1983年リリース,全英第1位)となる。
DEAD OR ALIVEの全盛期をアルバムで示すなら、2nd 「YOUTHQUAKE」(1985年リリース,全英第9位)となる。
上記のとおり、両者の全盛期は全く重なっていない。
また、全英チャートで1桁台に入ったシングルの数なら、CULTURE CLUBは9曲、DEAD OR ALIVEは1曲である。
単純に数字の面だけで比較するならCULTURE CLUBはDEAD OR ALIVEを大きく引き離していると言っても差し支えないだろう。
当時をリアルタイムで体験した筆者の印象としては、CULTURE CLUBのライバルは全盛期が重なり多くのヒット曲を量産したDURAN DURAN〔デュラン・デュラン〕なのである。
そして、DEAD OR ALIVEのライバルは同じプロデューサー・チームSTOCK AITKEN WATERMANのプロデュースによりディスコでの人気を博したBANANARAMA〔バナナラマ〕なのではないだろうか。
DEAD OR ALIVEとCULTURE CLUBのライバル関係というのは音楽的なものではなく、それぞれのバンドのフロントマンであるPete Burns〔ピート・バーンズ〕とBoy George〔ボーイ・ジョージ〕という、稀代の女装スター二人のキャラクターによるものなのだろう。
先ほど、DEAD OR ALIVEには全英チャートで1桁台に入ったシングルが1曲あると書いたが、そのシングルが今回取り上げた彼らの2ndアルバム「YOUTHQUAKE」に収録されている全英1位となった"You Spin Me Round (Like A Record)"である。
「YOUTHQUAKE」はSTOCK AITKEN WATERMAN(以下、SAW)のプロデュースによるアルバムであり、音楽雑誌では、このアルバム辺りからSAWというプロデューサー・チームの名前をよく目にするようになった。
これ以降、BANANARAMA 〔バナナラマ〕、Rick Astley〔リック・アストリー〕、Kylie Minogue〔カイリー・ミノーグ〕等、多くのアーティストがSAWのプロデュースにより大きな成功を修めることになる。
さて、「YOUTHQUAKE」だが、実に良く出来たシンセポップ・アルバムである。
聴いた瞬間のインパクトの大きさという点では"You Spin Me Round (Like A Record)"の存在感が群を抜いているのだが、他の収録曲のクオリティもなかなかのものだ。
1stアルバム「SOPHISTICATED BOOM BOOM」の垢抜けない感じと比べると、「YOUTHQUAKE」で聴ける洗練されたハイエナジー全開の音はまるで違うバンドなのではないかと思えるほどである。
そして、このアルバムの面白さは、SAWのプロデュースでありながら、DEAD OR ALIVEがかなり頑張っているところだ。
SAWというプロデューサー・チームは一聴して彼らのプロデュースだと分かる音作りをする人たちなので、彼らにプロデュースされたアーティストの曲は似てしまう傾向にあるのだが、「YOUTHQUAKE」には元々ロック・バンドとしてスタートしたDEAD OR ALIVEのロック感がまだ薄っすらと残っている。
しかし、筆者にとってDEAD OR ALIVEを楽しめるアルバムは「YOUTHQUAKE」までだった。
次作以降はとても優等生的な明るい普通のシンセポップになったので、彼らを追いかけるのを止めてしまったのである。