今回取り上げるPOP WILL EAT ITSELF〔ポップ・ウィル・イート・イットセルフ〕は英国におけるデジタル・ロック(英国ではグレボと言うらしい)の先駆者であり、後に登場するJESUS JONES〔ジーザス・ジョーンズ〕やEMF〔イーエムエフ〕に大きな影響を与えたバンドなのだが、ここ日本での人気の低さは酷いものであった。
その原因は色々あると思うのだが、筆者としてはバンド名が良くなかったのではないかと思っている。
「音楽性じゃなくて、バンド名かよ」と突っ込まれる方も沢山おられるかと思うのだが、バンド名とは思いのほか大切な要素なのである。
POP WILL EAT ITSELFというバンド名は、英語が苦手な日本人にとって、かなり言い難いのではないだろうか?
特に、POP WILLという並びと、EAT ITSELFという並びがやたらと言い難い。
そして、長い上に、声に出して言ってみた時の音がカッコ悪い。
長いバンド名でも人気があり、言いやすくて、音としてもカッコ良いバンド名もある。
例えば、BULLET FOR MY VALENTINE〔ブレット・フォー・マイ・ヴァレンタイン〕というバンドがあるが、このバンド名なんて長いのに言いやすく、しかも、音としてもカッコ良い。
事程左様に、バンド名とはそのバンドの人気を左右する大切な要素なのである。
さて、POP WILL EAT ITSELFというバンドだが、バンド名がカッコ悪いからと言って、音の方もカッコ悪いかと言うと、全くその逆で、音の方はやたらとカッコ良いので、その辺りもまた面倒くさいバンドなのである。
今回取り上げたのは、彼らの4thアルバム「THE LOOKS OR THE LIFESTYLE?」なのだが、筆者にとって、このアルバムは、彼らの後続である人気者だったJESUS JONESやEMFのどのアルバムよりもよく聴いた一枚である。
パンクのアティチュードと打ち込みのリズムを融合させた音楽性は、所謂デジタル・ロックと呼ばれるそれなのだが、このバンドの音からはロックのダイナミズムが感じられ、聴いていて実に気持ちが良いのである。
特に前半の飛ばしぶりは聴いているとアドレナリン出まくりの状態になり、ライヴで観客が大暴れする光景が目に浮かぶ。
後半に入ると少しだれる部分もあるのだが、何回も聴いているうちに、そこもこのアルバムの聴きどころであり、面白いアレンジの曲であることに気付く。
このアルバムを聴いていると、日本で彼らの人気が低かったのは、音楽性ではなくそれ以外のところにあったことは確かだろうと思えてくる。
もっと憶えやすいバンド名で、JESUS JONES のMike Edwards〔マイク・エドワーズ〕のような端正な顔立ちの男前がいたら、きっと日本でも一定期間は人気者になっていたのではないだろうか。
そう言えば、このバンド、どのアルバムも致命的なくらいアルバム・ジャケットがダサいので、それもこのバンドを聴きたいと思わせない要因の一つなのかもしれない。