1968年にデビューしたSTATUS QUO〔ステイタス・クォー〕は英国では国民的人気バンドだが、日本での人気は低いと言わざるを得ない。
筆者が洋楽を聴き始めたのは1980年代初頭なのだが、STATUS QUOは1980年代にもコンスタントにアルバムをリリースしていたにも関わらず、当時の洋楽雑誌で彼らが大々的に取り上げられることは殆どなかったと記憶している。
どうも日本では視覚的なインパクトが薄いアーティストは受け入れられ難い傾向があるようだ。
こう書いている筆者も実はSTATUS QUOの良さに気付いたのは1980年代も終わりに差し掛かった頃なのだが。
STATUS QUOというバンドは大物なので、何となくバンド名だけは知っていたのだが、洋楽雑誌の名盤紹介のような特集でも取り上げられることが無かったので、何から聴き始めていいのか分らなかったのである。
STATUS QUOを聴く切っ掛けを作ってくれたのは当時の筆者のバイト先の店長だった。
当時の筆者が主に聴いていたのは米国のグラム・メタルや英国のニュー・ウェーヴだったのだが、バイト先の店長のIさんが「お前、こんな子供っぽいもんばっかり聴いとったらあかんで」と言って、彼が「これ貸したるさかい、聴いてみぃ」と言って、次から次へと貸してくれるアルバムの中の一枚が今回取り上げるSTATUS QUOの8thアルバム「ON THE LEVEL」だった。
当時の筆者はIさんのことを、「余計なお世話やなぁ」とか「うっとしやっちゃなぁ」とか「自分の趣味を押し付けてくんなボケ」とか「レコード持って帰んの重たいやないか」と感じていた。
しかし、あの頃、Iさんに出会っていなければSTATUS QUOはおろか、ZZ TOP〔ジー・ジー・トップ〕やLYNYRD SKYNYRD〔レーナード・スキナード〕に出会えるのはもっと遅れていたか、或いは、出会えていなかった可能性もあるので今となっては彼に感謝している。
筆者の地元は古くからバンド活動も含めて様々な芸術活動が盛んな地域であり、周りにロックやジャズやブルース等にめっぽう詳しい年上の人たちが多かったので、情報の収集という面では恵まれていたのだと思う。
さて、STATUS QUOの「ON THE LEVEL」だが、これは所謂ブギー・ロックである。
しかし、ブギー・ロックの一言では片付けられない一面もあるように感じる。
例えば、同じブギー・ロックでもZZ TOPやAC/DC〔エーシー・ディーシー〕と比べると、だいぶ感触が異なり、ZZ TOPやAC/DCに顕著な大陸的でカラッと乾いた感じが無い。
ヴォーカルを取っているFrancis Rossi〔フランシス・ロッシ〕の滑らかな声質のせいもあると思うのだが、どこか湿り気を帯びていて英国的なのである。
曲によっては、リード・ギター(こちらもFrancis Rossiが担当している)が紡ぎだすメロディが英国のトラディショナルなフォークのようで、ちょっとブギー・ロックとは思えない展開になったりすることもある。
これこそが彼らの魅力なのだが、このブギーとトラディショナルが融合したロックを日本人が理解するには時間がかかりそうである。