ロック・リスナーである筆者がジャズを聴くようになった切っ掛けは、#0043でThelonious Monk〔セロニアス・モンク〕を取り上げた時に書いた通り、とある地方都市(関東地方)に長期出張していた頃に、ふらりと入ったジャズ喫茶に通うようになってからだ。
そこのジャズ喫茶のマスターから色々なジャズのレコードを聴かせてもらい、その頃は一時的にロックを聴く回数が激減し、ジャズばかり聴くようになった。
長期出張が終わり、地元(関西地方)に帰ってからは、今度はジャズを聴く回数が激減し、元のロック・リスナーに戻った。
つまり、筆者が今でも聴いているジャズのアーティストは、全て上記のマスターから教えてもらったアーティストなのである。
マスターが最初に教えてくれたジャズのアーティストは、確かJohn Coltrane〔ジョン・コルトレーン〕だったと思う。
そのJohn Coltraneのアルバムで最初に好きになったのが、今回取り上げる「BALLADS」だった。
John Coltraneに関しては、マスターから教えてもらう前から、その名前くらいは知っていた。
Sonny Rollins〔ソニー・ロリンズ〕と並ぶサクソフォン奏者のレジェンドであり、この二人はロック・ミュージシャンのインタビューでも度々名前が挙がることが多かったからだ。
ジャズと聞いて最初に思い浮かぶ楽器は筆者の場合、サクソフォンであり、サクソフォンとはジャズの花形楽器だと思っている。
ロックで言う所のギターに相当する楽器だ。
そんなジャズの花形楽器であるサクソフォンを、ジャズの素人が何の心配もなく楽しめる一枚が「BALLADS」なのではないだろうか?
John Coltraneの神髄は、従来のハード・バップから飛び出した複雑で且つスリリングな「GIANT STEPS」や、革新的なリズムで組曲を作り上げた「A LOVE SUPREME」なのだろう。
しかし、ジャズ初心者には、甘く魅惑的な楽曲が楽しめる「BALLADS」がちょうど良い。
"Say It (Over And Over Again)"なんて、殆どの人が「あっ、この曲、聴いたことがある」と言うであろう名曲だし、"You Don't Know What Love Is"はもう一人のサクソフォンのレジェンドSonny Rollinsも名盤「SAXOPHONE COLOSSUS」で演奏しているので(同じ曲とは思えないほどアプローチが異なる)、二人の演奏を聴き比べられるのも楽しい。