筆者はロック・リスナーなので、ヒップ・ホップに関しては、それほど積極的に聴いてきた訳ではない。
しかし、筆者のように1980年代初頭からロックを聴き始めたロック・リスナーにとって、ヒップ・ホップというのは、どうにも避けて通ることの出来ない刺激的な音楽なのである。
1986年に、RUN-DMC〔ラン・ディーエムシー〕がAEROSMITH〔エアロスミス〕と共演した"Walk This Way"のカッコ良さにガツンとやられ、「これはちょっと無視できない新しい音楽が出てきたな」と思ったものである。
AEROSMITHはRUN-DMCと共演する前年の1985年に黄金期(1973年~1977年くらい迄)のメンバーが再集結して「DONE WITH MIRRORS」をリリースしたものの、かつての勢いを取り戻せなかったのだが、RUN-DMCと共演した翌年の1987年にリリースした「PERMANENT VACATION」が大ヒットを記録し、以降は第2期黄金期を築き上げた。
筆者にとってのRUN-DMCとは、大好きなAEROSMITHを復活させてくれた大切なグループなのである。
その後、色々なヒップ・ホップを摘まみ食いのように聴いていたのだが、今回取り上げたCYPRESS HILL〔サイプレス・ヒル〕の2ndアルバム「BLACK SUNDAY」は、#0174で取り上げたHOUSE OF PAIN〔ハウス・オブ・ペイン〕の1stアルバム「HOUSE OF PAIN (FINE MALT LYRICS)」と共にかなり聴き込んだヒップ・ホップのアルバムである。
CYPRESS HILLの歌詞の主なテーマはマリファナであり、多くの曲は「マリファナ賛歌」である。
筆者は極めて健康志向の強い人間なのでマリファナには何の興味も無く、タバコも吸わなければ、アルコールも付き合いで必要な時に少し飲むくらいだ。
はっきり言って、マリファナをやってる人間とは、とてもじゃないが友達にはなれない。
しかし、そんな筆者でもCYPRESS HILLがこのアルバムで鳴らしている不穏で且つダークな音にはやられてしまったのである。
このアルバムには、悪そうな匂いが立ち込めている。
それもそのはずであり、CYPRESS HILLのメンバーは元ギャングだ。
それこそ、とてもじゃないが友達にはなれそうにない奴らなのだが、このアルバムは、自分は安全が保障されている場所に居つつ、ダークなギャングの世界を見せてもらえるような、そんなスリルを楽しめる作品なのである。