Rock'n'Roll Prisoner's Melancholy

好きな音楽についての四方山話

#0197) THE GREAT SOUTHERN TRENDKILL / PANTERA 【1996年リリース】

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今回は、PANTERA〔パンテラ〕の8thアルバム「THE GREAT SOUTHERN TRENDKILL」を取り上げるが、PANTERAで「この一枚」という時にこれを選ぶ人は少ないのではないだろうか。


ちなみに、PANTERAのオフィシャル・サイトではインディー・レーベルからリリースされた1stから4thまでのアルバムは無かったことにされていて、メジャー・レーベルのAtcoからリリースされた通算では5thアルバムにあたる「COWBOYS FROM HELL」が1stアルバムという扱いになっている。


上記のようなバンド側の意向に従うなら、「THE GREAT SOUTHERN TRENDKILL」は4thアルバムということになる。


細かい話はこれくらいにするとして、PANTERAで「この一枚」と言えば、6thアルバム(バンド側の意向に従うなら2ndアルバム)の「VULGAR DISPLAY OF POWER」を選ぶのが普通だろう。


はっきり言って、ベスト盤を聴くより「VULGAR DISPLAY OF POWER」を聴いた方がPANTERAというバンドの本質が分かると思う。


筆者も初めて「VULGAR DISPLAY OF POWER」を聴いた時は衝撃を受けた。


スラッシュ・メタルと言われれば確かにその要素もあるのだが、ずるずると深みに引きずり込まれるような重いグルーヴは、それまでに聴いたことのない音であり、同じ年(1992年)にリリースされてHELMET〔ヘルメット〕の「MEANTIME」と共に愛聴した作品だった。


ただし、今回、そんな「VULGAR DISPLAY OF POWER」ではなく、あえて、「THE GREAT SOUTHERN TRENDKILL」を取り上げたのは、やはり、筆者のこのアルバムに対する思い入れが深いからだ。


「THE GREAT SOUTHERN TRENDKILL」を初めてCDプレイヤーで再生した時、けたたましいドラムの連打と、雄叫びと言った方がいいであろうヴォーカルに驚き、焦ってヴォリュームを落とした。


そして、「メタルは、まだ大丈夫だ」と思ったのである。


1991年にリリースされたNIRVANAニルヴァーナ〕の「NEVERMIND」により、グランジ/オルタナティヴ・ロックの人気が爆発し、1990年年代のメタル・シーンは焼け野原になっていた。


正直なところ、筆者自身もグランジ/オルタナに嵌っていたので、こんなこと言うのは気が引けるのだが、とにかくヘヴィ・メタルにとって苦難の時代に、「THE GREAT SOUTHERN TRENDKILL」の出だしのドラムと雄叫びを聴いた瞬間、「メタルは、まだ大丈夫だ」と思えたのである。