筆者の生まれ育った京都という場所は、日本の都市の中でもバンド活動が盛んな地域なのではないかと思う。
磔磔(たくたく)や拾得(じっとく)といった他府県のバンドマンにも名が知れている老舗のライヴハウスが在り、中堅どころのライヴハウスもひしめき合っているし、新規参戦してくるライヴハウスもある。
街を歩けばライヴハウスを簡単に見つけられるし、筆者も若かりし頃はライヴハウスにはよく出入りしていた。
同級生のお兄さんや近所の大学生にもバンドをやっている人が何人かいて、筆者が洋楽を聴き始めた頃(1980年代初期)は、バンドマンのお兄さん達から色々なアーティストやアルバムを教えてもらったものである。
そして、どう言う訳か、筆者の近くに居たそのバンドマンのお兄さん達はハード・ロックとサザン・ロックを好む人が多かった。
中でも、ハード・ロックではDEEP PURPLE〔ディープ・パープル〕、サザン・ロックではLYNYRD SKYNYRD〔レーナード・スキナード〕の人気が圧倒的に高かった。
逆に、バンドマンのお兄さん達はパンクやニュー・ウェイヴには否定的で、パンク以前のロックでもガレージ・ロックやグラム・ロックにも否定的だった。
筆者が当時人気のあったNEW ORDER〔ニュー・オーダー〕やECHO & THE BUNNYMEN〔エコー&ザ・バニーメン〕を聴いていると、仲の良かったバンドマンのお兄さんが「そんな下手糞なん聴くのやめとけ、俺がレコード貸したるわ」と言って持ってきてくれた膨大なレコードの中に入っていた一枚が今回取り上げたATLANTA RHYTHM SECTION〔アトランタ・リズム・セクション〕(以下、ARS)の7thアルバム「CHAMPAGNE JAM」だったのである。
「余計なお世話やなぁ~」と思いながらも、「CHAMPAGNE JAM」を聴いてみたところ、まぁ、今までに聴いたことのないくらい達者な演奏に打ちのめされたのである。
後からバンドマンのお兄さんに「ARSはスタジオ・ミュージシャンが集まって作ったバンドやねん」という話を聞いて、成る程と合点がいった。
ARSは一応サザン・ロックに分類されるバンドだが、それほど豪快な感触はなく、この「CHAMPAGNE JAM」はバンドとして最も脂の乗っていた頃のアルバムなので、その演奏は実にしなやかで神々しさすら感じられるのである。