MERCURY REV〔マーキュリー・レヴ〕の最高傑作は大げさなほど華美な5thアルバム「ALL IS DREAM」だと思っているし、1970年代風のレトロなシンセサイザーの音色が心地良い6thアルバム「THE SECRET MIGRATION」も捨て難い。
しかし、自分の中でMERCURY REVのアルバムを1枚選ぶとすると、今回取り上げた4thアルバム「DESERTER'S SONGS」になってしまう。
MERCURY REVにはそのような意識は無いと思うのだが、筆者の中では上記4h~6thまでの3枚は3部作のように捉えている。
初期のMERCURY REV、つまり、1stアルバム「YERSELF IS STEAM」、2ndアルバム「BOCES」、3rdアルバム「SEE YOU ON THE OTHER SIDE」はノイズ・ロックの要素が強く、4thアルバム「DESERTER'S SONGS」から続く3部作のようなシンフォニック・ロックではない。
シンガーがDavid Baker〔デヴィッド・ベイカー〕からJonathan Donahue〔ジョナサン・ドナヒュー〕に変わった3rdアルバム「SEE YOU ON THE OTHER SIDE」には、かろうじてシンフォニック・ロックに続く萌芽のようなものがあるのだが。
筆者の場合、最初に聴いたMERCURY REVのアルバムは2ndアルバム「BOCES」であり、その混沌としたノイズ・ロックの世界も気に入ってはいたのだが、4thアルバム「DESERTER'S SONGS」を聴いて以降、「BOCES」を聴く回数が激減した。
その後、1stアルバム「YERSELF IS STEAM」と3rdアルバム「SEE YOU ON THE OTHER SIDE」も聴いてみたのだが、やっぱり「DESERTER'S SONGS」ばかりを聴いてしまう。
事程左様に筆者にとって「DESERTER'S SONGS」のインパクトは大きかったのである。
「DESERTER'S SONGS」に収録されている曲はオーケストラで使用される弦楽器や管楽器を随所に取り入れたものが多いのだが、曲の構成やコード進行は意外なほど単純な曲が多い。
同じフレーズや似たようなフレーズが何度も繰り返される素朴な曲に、弦楽器や管楽器の荘厳なアレンジが重なり、一聴すると素朴なのか荘厳なのかよく分からないシンフォニック・ロックが鳴り響いているのだ。
このアルバム、不思議なことに、オリジナル盤では最終曲の一つ前に"Pick Up If You're There"が、後にリリースされたデラックス盤では最終曲の一つ前に"Night On Panther Mountain"が収録されており、いずれも、これこそがアルバム最終曲に相応しいという感じの美しい曲なのだが、何故かどちらの盤も、ちょっと素っ頓狂な感じのする"Delta Sun Bottleneck Stomp"で締め括られている。
筆者には、これは蛇足に思えて仕方がない。